第1章 少年サッカー指導の現状
1−1日本サッカー底辺の拡大


 1993年(平成5年)5月15日にJリーグが開幕してからとゆうもの、サッカーは日本において急速に人気を獲得しはじめた。いや、厳密に言うのならば、この開幕をきっかけにして少年時代に少なからずボールを蹴ったことのある潜在的サッカーファンが堂々とサッカー観戦できる場が提供されたと言ってもいいだろう。私も少年時代からサッカーをやっていた。市内各地にあるスポーツ少年団とのリーグ戦、そして全日本少年サッカー大会の県予選など様々な試合をしたものである。しかしその当時は少年サッカーは野球のリトルリーグと人気を二分するかあるいはリトルリーグの方が人気がある程であった。今はどうだろう。少年スポーツと言えばサッカーと言えるほどの人気である。前述の全日本少年サッカー大会の参加チーム数は1993年には7431チームにもなり、それにともなって第4種登録選手(少年、特に小学校6年生までを指す)もまたここ数年で急激に増加し少年野球のそれをはるかにしのぐ勢いとなっている。これに、ボールを蹴ったことのある潜在的なサッカー少年を加えると、相当な数となるはずである。また、それだけではない。小学校の生徒に聞いたある新聞社のアンケートでは、好きなスポーツの第1位にここ数年サッカーが選ばれているのである。
 このような状況のなか、日本サッカー界の一番上に位置している日本代表チーム、そしてそれに次ぐ、23歳以下オリンピック日本代表チームは、海外での国際試合で非常に苦しい戦いを強いられている。1995年に入って、日本代表はインターコンチネンタルカップに出場しているが、ナイジェリア代表に0−3、アルゼンチン代表に1−5と、記録的大敗を喫している。サッカー雑誌だけに限らず、新聞のスポーツ面などにおいても1対1の状況における弱さ、決定的パスミスの多さなど、いくつもの技術的レベルの低さについて批判されていた。また、オリンピック代表はオーストラリア国際トーナメントに出場しているが、韓国、デンマーク、オーストラリアに、それぞれ0−1、0−0、1−2という試合をしている。ここでは「決定力不足」という、日本サッカー界ではほとんど決まり文句のような課題が批判されていた。つまり子供の間では日本一人気のあるスポーツであるにもかかわらず、まだまだ世界的なレベルには追い付いていないのである。
 このように、今後より一層の日本サッカーの発展が必要となってくると言えるのだろうが、世界的レベルへの発展、すなわち日本代表のW杯出場や、オリンピック出場、そしてそうした大会での勝利のためには、もちろん日本サッカー協会のしっかりした組織づくりや強化体制が必要であるけれども、やはり底辺となる少年サッカー人口の拡大、組織の拡大と、それらの発展に伴う何人もの有望な若手選手の出現が長期的に考えた場合、かならず必要となってくることなのである。人気や一時的なブームで終わらせることのないように、徐々にではあるのだろうが、協会による強化の体制も整いつつある。それぞれの市や町単位の地区での選抜チームとその選手への指導、県単位での選手強化のためのトレーニングセンター制度(通称…トレセン)も設けられいる。特に、トレセンは強化の柱となるように、各地区のサッカー協会が制度の充実を図っている。


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少年サッカー指導コラム「日本サッカー底辺の拡大」
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