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WRITE IT LOUD!! ROLL OF ROCKS

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                        1996年10月11日開始

                                  火だるまG

第57回:1999年2月11日

WHEN I'M GONE/ERIC KAZ/72 IN IF YOU'RE LONELY


凍えきっている
風に吹かれている
いよいよ死神のお世話になる頃合だ
聞き慣れたあの声が聞こえる
「この世に救いなどない」
でも
俺は俺がくたばっても
君のことは忘れないよ

ひどい言い合いもしなかったし
誓いを破ることもなかった
やろうとしてもできなかったんだね
今この時を迎えてわかったよ
愛とは、捧げる心なのさ
俺は俺がくたばっても
君のことを忘れない

君を利用したりしない
君をなめたりしない
俺は俺がくたばっても
君のことを忘れない

最終電車に飛び乗り
スピードいっぱいでまっしぐら
それでも、太陽が昇るのを止めることはできない
そんなことは自明のことさ
俺は太陽を逃したことを惜しんだりしない
もっとかけがえのないものを知っている
俺は俺がくたばっても
君のことを忘れない


 これが俺の葬式の時に、もしその気になれば、掛けておくれと盟友に伝えてある曲だ。
 日本でこの歌い手のこのアルバムに、いまだ思いをかけているのは、俺と俺の盟友しかいないから、それはしょうがないことだ。
 ちなみに、俺の盟友は、葬式のBGMを指定するような男ではない。おそらく葬式さえ拒否するだろう。それはそれでいい。盟友に替わりはいない。
 ところで、この歌の歌詞の画期的なところは、普通、「たとえ君が死んでも、僕は君のことを忘れないよ」とか「もし僕が死んでも、僕のことを忘れないで」というのが一般的なところを、「俺が死んでも、俺は君のことを忘れないよ」と無茶なことを言うところである。
 俺は人に俺のことを覚えていて欲しいなどとは思わない。
 俺が覚えていたいことを覚えているままに、くたばっていきたいと思う。
 さて、ロックバー、コモンストックである。
 いよいよ最後は近いが、俺はお客様に申しあげたい。
 コモンストックは、このつまらねぇ時代のつまらねぇ国としては、なかなか気の利いた空間だった。
 そして、その空間を演出したのは、俺たち、店側の3人組でも、膨大なレコードでもなく、お客様あなた達だった。
 あなたがたには、とにかく、コモンストックに流れる音楽に耳を傾け、ゆらめく空気の振動と何らかの縁で袖触れ合った他人の温もりを味わうだけの、センスがあった。静かさがあった。知性があった。好奇心があった。寛容があった。親切心があった。
 とにかく、自分さえが楽しめばいいという人は、ほとんどいなかった。
 コモンストックには、そんな当たり前の人たちが醸し出す、ゆるやかな連帯感の匂いがあった。
 これは奇跡だ。
 これから先、どこか他の場所に行ってみれば、その奇跡の奇跡性はより明らかになるだろう。
 哀しいことに、世の中は、いまだ排除の論理がばっこしている。
 人間はまだまだ弱い。どこかが出っ張れば、どこかは引っ込む。いまだにゼロサムゲームをやっている。弱肉強食は疑いようのない現実だ。人生はいまだに勝ち負けのままなのである。
 しかし一部の人間は、他人の不幸は自分の幸福とは何の関係もないし、他人の幸福は自分の幸福と大いに関係することに気がついている。
 コモンストックで他人のリクエストに、誠実に耳を傾け、それを佳きものとした人たちにを讃える。ついでに俺の勝手な選曲を許してくれた人たちも。
 いろいろな都合があるとはいえ、そんな佳き人の集まる店を畳んでしまうのだから、俺の、言えることは、俺がくたばっても、あなたのことは忘れない、ということだけだ。
 いや、そういう気持ちですと、いうこと。絶対などというと、この無責任男と、もう1人の盟友に説教される。
 

僕のこの歌詞にスポットをあてる連載で、取り上げる曲の音楽面が最高に格好いいことは保証します。大音量で10回続けて聴いてみてください。きっと感じるものがあるでしょう。(この企画、文章、考え方などの著作権は一応存在するといっておきます)

 

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