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WRITE IT LOUD!! ROLL OF ROCKS

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                        1996年10月11日開始

                                  火だるまG

第54回:1998年12月25日

FAR AWAY/CAROL KING/71 IN TAPESTRY

遠くへ来てしまった
どうしてひとつの所に入れないのか?
会いに来てくれると嬉しいのだが
これじゃぁ
過ぎ去ったのは時だけなんだよって
教えてあげることもできない

遠い昔に君と一緒にいた
抱きしめあうことだけで喜びだった
心からもう一度と思う
でも遠くに来てしまった

この道を行く旅にもう一曲歌おう
大した歌ではないが
新曲なんだ
あぁこの生き方をやめられれば
君と一緒に入れるのにって思う

でも君は遠くに行ってしまった
どうしてひとつの所に入れないのか?
会いに来てくれると嬉しいのだが
これじゃぁ
過ぎ去ったのは時だけなんだよって
教えてあげることもできない

流転の連続の人生は
孤独でさみしい
心を閉じて生きるしかしょうがない
自分でもこの人生に
うち負かされたくないと思っている
だって
まだ見つからない夢がたくさんあるんだもの

でも君は遠くに行ってしまった
どうしてひとつの所に入れないのか?
会いに来てくれると嬉しいのだが
これじゃぁ
過ぎ去ったのは時だけなんだよって
教えてあげることもできない


 このキャロル・キングの『つづれ織り』を買ったのは、中学2年生の時。場所は当時横浜石川町の元町よりの出口をバス通りに出て、根岸方向へ向かうトンネルの脇にあった、エクスポレコードという輸入盤店。その店から崖を見上げて、あぁ、この上に憧れのフェリス女学園があるのだな、なんて純情な感慨にひたったものさ。横須賀の山猿小僧にはフェリスという言葉の響きだけで沈黙してしまう呪力があったんだ。
 今もそうだけど、ましてや、当時は金がないから、国鉄や地下鉄を避けて、京浜急行の日の出町の駅から歩いて買いに行った。小1時間程度の距離なのに、真夏だったから暑くてばてた。最後はほとんど千鳥足。値段は990円。小さな店の外にカットアウト(ジャケットに穴を開けて安売りに回されたレコード)用のワゴンがあり、今思えば、キングクリムゾンとかフーとかが並んでいたような気がする。その時点でそっちを掴んでいたらずいぶん人生は変わっていただろう。
 しかしそんな才能は僕にはない。
 それからこのLPは何度聴いたか分からないほど聴いたけど、やがて、二十歳を超える頃になり、ぱたっと聴くのをやめてしまった。それはおそらくフェリスという言葉の呪力が消えた頃だと思う。自分のラブライフが始まって、いい意味でも悪い意味でも、女性に対するロマンティックが秒速で薄れていった。空想から科学へというか、一時僕が、女性シンガーの歌を聴くことに興味を失ったのはそれだけ現実の女性のリアルに目覚め始めたということだと思います。
 そしてまたこのLPを聴き出すのが、明確に覚えているけど、1989年の2月26日なんだね。
 これは、僕とアキラが著し、料理人の工が編集した『ころがる石ころになりたくて』(清水公文堂)でも書いたことだけど、その時、サラリーマンライフに行き詰まった僕とアキラは、大喪の礼の嘘っぱちな東京にいることをよしとせず、広島・長崎のアトミックツアーに出かけた。そして、そこで僕らは、後にコモンストックにつながるアイディアを得ることになるのだけど、その旅の間も、音楽中毒アキラはウオークマンのヘッドフォンを耳から離さなかった。ちょっと貸してよっていって貸してもらったその瞬間にかかっていたのがこの「FAR AWAY」だったのさ。
 アキラはジャンキーだから、良質のネタでないと満足しない。だから別に『つづれ織り』を全曲録音して持ってきたわけではなく、他にもいろいろあったんだろうけど、それらについては覚えていない。
 覚えているのは、へぇこの曲かよと、驚愕した僕の感情。
 話がうまく繋がらないし、文脈的に勘違いされても困るのだけど、別にアキラが女性シンガーの曲を聴いていたから感動したわけじゃあないよ。はっきりいって「FAR AWAY」というのはA面の2曲目でもあり渋い曲なんだ。ほうこういうコラージュをするんだなアキラは、さすがに俺のダチだなと感動したわけだ。
 なかなかこの曲をセレクトする奴はいないと僕は断言する。
 それで説明不能の不思議な嫉妬の感情をメラッと燃やして、僕もあらためてキャロルの歌に耳を傾けるようになったってわけさ。
 それから
「Ooh, baby, when I see your face、Mellow as the month of May、Oh, darling, I can't stand itWhen you look at me that way」(I FEEL THE EARTH MOVE)
「Something inside has died and I can't hide And I just can't fake it」(IT'S TOO LATE)
「Cause you make me feel, you make me feel, you make me feel like A natural woman」(A MATURAL WOMAN)
 などという、女性の聖なる多面性を反映したフレーズが晴れて僕の生涯の道ずれとなったのだ。
 ようするに、目に映り袖ふれあう堕天使達のリアルとファンタジーの酷い相克をへらへらへらと受けとめる男となるために、大酒を飲んで紛らわす、先人の辿った道を千鳥足で歩み始めたったてことなんだけどさ。
 なぁんちゃって。
 しかし、コモンストックが始原した時の音楽が、これっだって、いうのには含蓄がある。
 だって僕らはまた旅に出ようとしているんだもの。
 俺はあいかわらずの千鳥足だけどね。


僕のこの歌詞にスポットをあてる連載で、取り上げる曲の音楽面が最高に格好いいことは保証します。大音量で10回続けて聴いてみてください。きっと感じるものがあるでしょう。(この企画、文章、考え方などの著作権は一応存在するといっておきます)

 

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