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１９９６年10月１１日開始
火だるまG
第４３回：１９９８年７月１１日
NO WORDS/ PAUL MCCARTNEY/ 73 IN BAND ON THE RUN
きみはもう愛をよしにしたいって
意味のないことはやめにしたいって
別に僕は驚かないよ
だって君は僕を見つめているもの
君にとっては愛がすべてだって
それが僕たちに足らないって
だからこそ
僕らの愛はほんものなんじゃないか
僕の愛には言葉なし
君の燃える愛
甘く燃える愛
それは深い
君の甘くて燃える愛を
隠しちゃいけない
君はもうたくさんだって
もっとましなヤツがいるって
僕しかいないって
わからないのかね
君を愛しているのは
僕の愛には言葉なし
７月12日（日曜日）午前３時、もうワールドカップの３位決定戦が始まってしまう。君の好きな、クロアチアのボバンが出るね。僕はなんとなく、君がボバンにひかれる理由がわかるよ。彼のまわりには、運命のような、己の意志をこえた空気が渦を巻いているように見えるからね。
今日で、君も40歳に。笑うよね。僕らが初めてダチになったのが20年前、ふたりで梁山泊みたいにして浅草のマンションに篭ったのが12年前、そして、ロックバーを始めてからも、すでに、８年の月日がたったね。そしてふたりとも40男。名実ともに中年だね。
僕と君との道のりをふりかえると、変わりばんこに、今こうして自由に生きていることの達成感と、いまだにろくなことができていないことへの焦燥感を、行き来してきたように思えないかい？ それが最近、クロスすることが多いように感じることは、いいことなのか？ 年取ってきたからなのかもしれないね。
昨日の昼も僕はトンカツを食べた。
糖尿のくせにトンカツばかり食べている、僕を、君がアホだと思っていることは知っているけど、まぁ、聞いて。
食ったのは、家の近くの店なんだ。昔食べたときにおいしかった記憶があって確かめに行ったってわけさ。結果的にダメだったけど。
それで、注文して、煙草をもっていないことに気がついた。君が煙草をやめてからもう５年はたったよね。それで店の人にことわって買いに出た。そこでついでに用事も済ましてしまおうと思ったのさ。実は、トンカツより、こっちがメインで、そのトンカツ屋の脇にうまい団子屋があるんだ。そこで、ズンダ餅を売っている。ズンダ餅がえんどう豆を原料にしたあんこだってことは知っているよね？
その店は間口の小さな店で、用のある人は、ひとりずつしか注文できないんだ。それで僕はちょっと長い列に並んだ。男子は僕だけだったね。ところで、糖尿のくせにあんころ餅を買いに行き、しかも、そのついでにトンカツを食おうという僕をアホだと思っているだろう？
小柄な中年女性が向こうから歩いてきたときに、直感したんだけど、彼女は見事に僕を無視して注文したね。おいなりさん三つ。マジで僕の番だったから、僕は、「並んでいるんだよ」と小声で注意した。
彼女がそれを無視して買い物を済ませるまで、何回「すいません急いでいるもので」といっただろうか？ どもったような、うめいたような声で、まぁ10回じゃぁきかないだろう。それだけ謝っても意志は通そうとするわけだ、彼女の場合。
その時、「あなたが急いでいることと、僕とはなんの関係もなく、僕の順番がとばされるいわれはない」と、君ならしっかり主張するだろうと思って、おあぁ、そうだ、明日は君の誕生日だったと思い出したんだ。Ｋさんの命日も、Ｙさんの命日もいつも忘れている僕のいいかげんさは君の熟知しているとおりです。
しかし僕は、君の誕生日を忘れている、自分に驚愕して、彼女にいうべきことをいわずに済ませてしまった。
それで、自分の買い物を済ませて、はっと、道の前方を見ると、彼女、箸を使って歩きながらおいなりさんを食べていたんだ。僕は箸を使いつつ歩き食いする女性を始めてみた。
そしてその瞬間に、ぼたっと、馬糞みたいに、おいなりさんが道に落ちたのさ。そこで僕はあらためて君の誕生日を思った。
こんな光景を一緒に見て、苦笑微笑するに、君にこした友人はいないからね。おっ、クロアチアvsオランダが始まる。悪いけど僕はオランダを応援させてもらうよ。僕がクライファートに惹かれる理由も、君にはわかるよね。
僕のこの歌詞にスポットをあてる連載で、取り上げる曲の音楽面が最高に格好いいことは保証します。大音量で10回続けて聴いてみてください。きっと感じるものがあるでしょう。（この企画、文章、考え方などの著作権は一応存在するといっておきます）
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 音楽中毒=A |
 酩
酊料理人 ・工 |
