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WRITE IT LOUD!! ROLL OF ROCKS

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                        1996年10月11日開始

                                  火だるまG

第41回:1998年6月11日

MOTHER AND CHILD REUNION/ PAUL SIMON/ 71 IN PAUL SIMON
SEARCHING FOR A HEART/ WARREN ZEVON/ 91 IN MR.BAD EXAMPLE


この奇妙な呻きに満ちた時代に
あなたを喜ばせようと
いいかげんなことをいう気はないんだ
でも母と子の再会は
すぐそこまで来ている

人生をふりかえって
哀しいことばかりっていうのでは
たまらない
LET IT BEって
彼らはいっていたけど
ものごとはそういう風には
進まなかった
そして人生は続く

僕にはそうとは思えないんだ
へんなことをいうやつと
思ってくれてもいい
でも僕には他人を幻惑させて
喜ぶような趣味もないんだよ
そして人生は続く

この奇妙な呻きに満ちた時代に
あなたを喜ばせようと
いいかげんなことをいう気はないんだ
でも母と子の再会は
すぐそこまで来ている


 前回の原稿にもかかわらず、事態は思いも寄らぬ方向へと転がり、お袋が乳ガンになりやがった。ビックリシタナモウ、で、死んでいったオジキの葬式の次の日、検査の結果が出てお袋の左の胸に発生した腫瘍が悪性であることが判明したのである。
 当然、お袋は入院、今この原稿を書いているのは6月の9日だが、明日が手術である。
この一週間で、3回、横須賀に帰省した。当然お袋の見舞いである。俺の目的はただひとつ。お袋の肩を抱き、手を握ること。
 しかし、ここにそれを阻害する者がある。おやじである。
 俺が見舞いに行けばおやじがいる。なかなかお袋とふたり切りになれない。
 自分でいうのも照れるが、俺のおやじはいい奴だ。乳ガンになったお袋など、人間の良さではおやじには比べものにならない。もちろん俺はお袋似である。
 病院の面会は午後3時からである。そしておやじは毎日3時に出向く。お袋の汚れものを受け取り。毎日洗濯して届ける。お袋が読みたい本を図書館に行き借りてくる。そしてそれを返却する。
 おやじは海軍、特攻隊あがりである。身の回りのこと百般、完璧にこなす。お袋がいようがいまいが生きていく力には事欠かない。
 そんなおやじが俺に話す。お袋がかわいそうだ。
 かわいそうだという言葉におやじの本質が噴出する。
 そしておやじはお袋がいないとつまらないとも話す。
 つまらないという言葉にもう一つのおやじの本質が噴出している。
 俺が現れると、3人で10階にある食堂に出向き、東京湾を展望しながらお茶を飲む。乳ガンで弱ったお袋と、気のいい退屈しているおやじが俺に説教する。当然である。俺は気が張っている。俺には金がないが、気持ちがある。だからこの事態で気をつけねばならないことはすべて気をつけようと気持ちが昂進している。病院は呉越同舟の大きな船。病院は黒パン俘虜記の満州からの引き揚げ船。徘徊する者。支配欲に駆られたサディスト。隙があればだれかにすがりつこうと虎視眈々と狙っているダメな人。にこにこ笑っているだけで、知性も愛情もない、有象無象。俺の目から見ると、病院には気をつけなければいけなそうなことがごろごろしているように見える。病院でいかに自分の身を守るかどうかこそが入院患者の本当の死活問題ではないか。
 だから、俺はキャッチャーインザライ、の心持ちに陥っているので、少々両親に対しての口のきき方が偉そうになっているのだ。そして、それではみんなに嫌われるぞと、我が両親は、俺のことを心配してくれる。
 冗談じゃない。俺の人生の目的は、人から嫌われないことではない、たとえそれと同量だけ人から憎まれるとしても、人から愛されることなんだ。それに人生でもうこれだけ人に嫌われまくったらもう手遅れだし。俺の両親の心配に対する解答はそういうことなのだが、当然、ただただ御説ごもっともと黙って聞いていた。
 それから、二日後にまたおやじと再会し、ふたりで飯を食った時、おやじが俺にいった。お袋と話した結果、俺の住む世界は、おやじたちの住む世界とは少々違うので、その世界では、俺のいっているようなことの方が、正しいということなのだろうという結論に至った。
 人間はこのようにして、赤面するのである。
 逆立ちしても背伸びしても親にはかなわない。
 さて、俺は、お袋がとりあえず退院するまではという時限立法で、断酒した。向こうの人たちからすれば、そんなこと公にすれば、御利益がなくなるのでないかというのだろうけど、そんなことで、なくなるような御利益なら初めからあるまいというのが俺の考え方。ようは気持ちの深さなのである。
 それで断酒してみると、ほぼ毎晩、真夜中に38度前後まで高熱が出るようになった。
「ふだんならその時間帯に入って来て、慰めてくれるはずのアルコールが現れないので、不審に思った神経たちが抗議のデモに来ているのよ」
 そういう解説を付けて、俺をうならせたのは某女性である。
 それともう一つの異変。チンチンが一度勃起するとなかなか沈静化しないのである。ずーっとアルコール漬けで比較のしようもなかったのだが、はぁ、酒を飲むとなんとか、というけれど、自分の身体で体験したのは初めてだ。もともと射精不全なので行かないのはもとのままだが、いくらでも続けられる感じ。お袋が乳ガンということが、理解不能の回路で、俺の性欲を刺激しているのだろうか?これでは俺みたいな奴を嫌わないでつき合ってくれている女性を殺してしまう。
 ほんとはこの原稿は明日、10日の晩遅くにでも書こうと思っていたけど、お袋の手術に立ち会って、俺がどんな精神状態になるかはわからないし、それに、明日の夜中には、ワールドカップが始まる、ブラジル対スコットランド、原稿を書いているひまなど、もともとないのである。
 とりとめのない原稿になったが、なんだかんだいって、人生なんてそんなもんなんだ。
LET'S LIVE AND LOVE A LIFE.



夜明け前の暗闇
大地は影に包まれている
だれもなにも考えていない時間

でも僕は心を探している
人間を捜している
愛はすべてを凌駕するそうだ
愛は車を発信するように始めることもできないし
銃でけりをつけることもできない

午後の家を出て
真夜中に旅をする
だれの目にも留まらない
僕は人の視界の外にいる

愛のためには行列に並ばなくてはいけないそうだ
僕はずいぶん長いこと並んでいる
床を踏み
ドアを見つめ
でも僕は心を探しているんだ

だれかに照準を合わせて
たかぶったり
落ち込んだり
そしてだれかがやってくる


僕のこの歌詞にスポットをあてる連載で、取り上げる曲の音楽面が最高に格好いいことは保証します。大音量で10回続けて聴いてみてください。きっと感じるものがあるでしょう。(この企画、文章、考え方などの著作権は一応存在するといっておきます)

 

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