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1996年10月11日開始
火だるまG
第39回:1998年5月11日
LOOKING FOR A HERO/ ELLIOTT MURPHY/ 76 IN NIGHT LIGHTS
昼過ぎに目覚める。空腹。昨日、バイトでコンピュータに向かっている間、くず野菜と一緒に2時間ほど煮ておいた、牛肉の角切りを醤油と味醂と飲み残しのビールで煮込み直し、大量に刻んだネギをトッピングに、牛角煮丼にしてはふはふと喰らう。
一つの感慨が浮かぶ。あぁ女の涙と胃袋には勝てない。
泣く女は少なくなったが胃袋はあいかわらず世間を圧倒している。
「不祥事を起こした者を含めて、官僚の多くは、この国を良くするために、国民の幸せを実現するために公務に従事したいとの高い理想を胸にして、一流企業に比べて必ずしも高いとはいえない給与水準を承知の上で、官の道を選んだと思う」
8日の朝日朝刊で、青島氏に負けた元内閣官房副長官が官僚のみなさんを激励するつもりでしゃべっていたコメント。官房副長官というのはすべての官僚のトップです。
民間は経済活動を行い、そこで稼いだ金を報酬として受け取っているのであり、空から金が降ってくるわけではない。会社が稼げなければ給与は増えないし、山一を見よ、拓銀を見よ、倒産失業もあるのである。ましてや天下りだ、ヤミ手当だの、組織ぐるみのあれこれがあからさまになった今、今さら役人の給料が安いなんて誰も思っていません。戦後50年間、一度も給料が下がらないできた業界はおそらく官界だけ、彼らは日本がつぶれない限り喰いぱぐれのないわけなのね。とにかく道ずれはごめんですからね。
なんかこのおっさん胃袋があからさますぎるような気がしません?
まっ誰でも勝てないんだけど。
いつ頃からか知らないけど、役人になる恥じらいみたいなものがこの社会から薄れてきたような気がしてならない。僕は大学卒業時、僕みたいに、中学校からストリップにせっせと通っていた好色漢で、その上、やたらと金金金とベニスの商人みたいなこすっからい野郎には、絶対、役人なんてつとまらないと考えたもの。自分には社会の公僕足るモラルが欠如していると考えましたよ。しかし僕が考えたモラルというのは、世間のいうところのモラルとは乖離していたようですね。今問われている公務員のモラルというのは、きれい事ばかり並び立てるのをいいかげんによしにして、とりあえず、己というものを正確に知れよということなんでしょう。己さえ知ればそれなりに律することもできるじゃないのと、そのあたりだと思うけど、まぁ、胃袋には勝てないわなぁ。
胃袋に勝てないといえば、あきれかえるのが(社)日本野球機構の日本プロ野球公式記録のページ。つい最近までは、ここで、過去のプレーヤーたちの記録が調べられた、まぁ、全員ではなかったけどね。ここの記録のページが、現役選手と、名球会入りした選手と、外国人選手と、アメリカでプレーしている日本人選手のデータだけになった。なんだいこれは時代に逆行しているじゃねぇの!と激怒したら、どうやら、自分らで発行した『日本プロ野球記録大全』とかいう記録集を売りたいかららしい。来る未来のデータ偏愛に違いないコンピュータキッズが野球場に足を向けるチャンスを減じてまでして、9900円の本を売りたいのだろうけど、野球場にはお気軽に3〜5万人の人が集められるけど、本なんて3万分も売れれば、もう大ベストセラーなんですね。球場で牛丼でも買ってもらったほうがよっぽどビジネスになります。あまり胃袋が下品だと頭に血が回らなくなって損得勘定もできなくなるのですな。
しかしたまには、胃袋の真摯な咆吼もいいものだなと思ったのが、5月7日の吉井が投げた、ニューヨーク・メッツ対セントルイス・カージナルス、シェイスタジアムでの試合。5回の裏。1アウト1、3塁で、吉井が打った大リーグ初安打、右中間の2塁打で、ホームへ戻ってきた、メッツのキャッチャー、アルベルト・カスティーヨのランニングは凄かった。彼、2塁を回ったところで、雄叫びをあげてたもんね。
なんせこの28歳のドミニカン、去年、59打数12安打7打点。打率2割3厘。30本塁打。2割7分6厘のトッド・ハンドリーが休んでいるうちに、これからの大リーガーとしての礎を築かなくてはいけない。故郷に待つ、父に母に家を建ててあげるのだ。一族郎党の子供たちに教育を受けさせてあげるのだ。だから、ぜひとも吉井に勝たせて、吉井とのコンビで日本人に覚えてもらって、できればピアッザみたいにCMにも出て、大リーグで駄目になったら、日本でプレーしてもいい。いいや、とにかくここでいいところ見せるのだと、アピールするのだと、もう、血管が切れそうな勢いだった。
圧倒された。
結局、胃袋も真剣に空腹ならそんなに悪いもんではないということ。たいしたことない欲望をたいしたことないものばかりで満たしているから、実に小汚い糞ばかり出るのだということです。
いけねぇ、俺も糞が漏れそうだ。
僕のこの歌詞にスポットをあてる連載で、取り上げる曲の音楽面が最高に格好いいことは保証します。大音量で10回続けて聴いてみてください。きっと感じるものがあるでしょう。(この企画、文章、考え方などの著作権は一応存在するといっておきます)
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