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WRITE IT LOUD!! ROLL OF ROCKS

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                        1996年10月11日開始

                                  火だるまG

第37回:1998年4月11日

I WISH I WAS YOUR MOTHER/ MOTT THE HOOPLE/( 74 IN MOTT )

僕が君をののしるのは分け合いたいから
僕が君を呪うのは愛しているから
僕は君の服装が嫌い
だって可愛すぎる
僕のことを見ないで
僕を感じないで
僕は君の人生を台無しにしてしまう
それじゃあまりに気の毒だ

僕は君の後光を拝んでいる
僕は君の後光が消えるのを見ている
知っているかい?
君は最高だから
駄目なんだよ
中傷する気はないんだけどね
しかし色々な事態が待ち受けている
僕に君の手助けをする
力があれば
そうするのに

僕が君のおふくろならば
僕が君のおやじであれば
僕は君のことを自分の子供のように
見ることができるのに
娘たちと一緒に遊び
息子たちとじゃれあって
僕はまるで家族みたいな
瞬間を味わえるのに

嘘吐きはやめよう
君が僕に与えてくれるものを
僕はいい気になって
食い物にしているだけだ
この先にハッピーエンドがあるとは
とても思えない
だってそれが可能だとしても
僕はもはやそれを理解するには
あまりに遠くに来てしまっている
君は努力して
僕の頭からどうにか
それをひねり出さなくてはいけない

僕が君のおふくろならば
僕が君のおやじであれば
僕は君のことを自分の子供のように
見ることができるのに
娘たちと一緒に遊び
息子たちとじゃれあって
僕はまるで家族みたいな
瞬間を味わえるのに


 人間は経験から学ぶというけど、僕の場合には、それが当てはまらない。
 図書館に入った瞬間の、鼻をつく異臭と、ママーママーという幼児の鳴き声で、僕は、そうか今日は雨降りなんだなと気づいた。自分でもしっかり傘をさして歩いてきたというのに間抜けな話である。
 雨の日の図書館には、通常なら、公園などの表に出ている人たちが移動して来るものだという、単純な事実を僕はすっかり忘れていて、あぁ、今日は図書館に来るべきではなかったと後悔した。
 もちろん後悔は先に立たない。
 別に浮浪者の方々の悪臭や、走り回る赤子たちの騒音が嫌だということではない。
 雨の日の図書館では、別に見たくもないような人間の有り様が目に入ってしまうのでめげてしまうということなのだ。
 例えばこういうこと。
 たとえ沢山の絵本に囲まれていても、自分で本当にそれらに興味がなければ子供は退屈する。だからしきりとママー、ママーと、母の名前を呼んでかまってもらおうとする。ようやく立って歩けるようになった程度の年頃の赤子ならなおさらである。絵本に興味を持つところまで彼は成長していない。
 しかし母親は子供の呼びかけに答えない。答えれば騒音がダブルになるからである。それは大人としての常識。呼びかけても母親に声をかけてもらえない赤子は不安になる。繰り返し母の名を呼び。最終的には泣き出す。泣いた赤子を抱えて母は外に出る。そんなことが何回も繰り返されるうちに母は疲れて子供をたたく。ますます子供は泣く。
 最悪なのは、そこに上の子がいる場合。上の子は少しは分別がある。だから泣いている弟とは僕は違うのだというプライドがある。母にその点で誉めてほしいと願う。泣いている子供を抱えて外に出た母を呼ぶ。ママ〜ちょっと来て。しかし実際は、それじゃぁ赤子と変わらない。赤子だけでも持て余している母が切れて、怒る。上の子も泣く。
 周りの者たちが迷惑そうな目つきで母子を見るので、いたたまれなくなって、母は子供たちを叱りつけながら家に帰っていく。
 これじゃぁ、まるで雨が悪いみたいだ。僕は雨も好きなのに。
 ついでにこういうことだ。
 図書館が終わる。みんながエレベータで一回に下りて帰る。
 浮浪者の彼はみんなと一緒にエレベータに乗ることが苦手だ。
 自分の体が放っている悪臭を気にしているのだ。
 それでいつまでたってもエレベータに乗れない。しかし、だんだん、ただエレベータホールの前で立ち尽くしている自分のことを人がどういう目で見ているかということが気にかかってくる。
 人生は放棄しても自意識は捨てられないのが人間だ。
 それでなんとなく参加しようと、エレベータの上に行くボタンを押してしまう。誰も上に行く人なんていやしない。残念なことに彼には空のエレベータにひとりで乗り込む根性がない。乗り込んだ時にエレベータホールの残る人たちと目が合うのが恐いのだ。それで何回もそれを見逃す。
 彼が上に行くボタンを押すものだから、下に下にという人間の流れに渋滞が起こる。そのうちに、彼と一緒に、空の上に向かうエレベータを見送ることに疲れた男が、切れて、彼を怒鳴りつける。
 いいかげんにしろ。乗るなら乗れ。
 くわ〜っ、おびえた彼が奇声を上げると、人の輪の輪郭が大きくぼやける。奇声を叫び続ける彼を残して、無言の集団がエレベータに乗り込む。
 エレベータが閉まる瞬間。彼らは見たくもない男の涙を見送ることになる。
 まるで雨が降ったのが悪いみたい。僕は雨が好きなのに。


僕のこの歌詞にスポットをあてる連載で、取り上げる曲の音楽面が最高に格好いいことは保証します。大音量で10回続けて聴いてみてください。きっと感じるものがあるでしょう。(この企画、文章、考え方などの著作権は一応存在するといっておきます)

 

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