since 97.5.03
1996年10月11日開始
火だるまG
第34回:1998年2月25日
THE FRENCH INHALER/WARREN ZEVON(76 IN WARREN ZEVON)
女の人は最終兵器としてあそこを売って金に換えられる。よっぽどの自立した女性でない限り援交も専業主婦も変わりがない。
一方男が売れるものといえば、あんまり買い手がつくとは思えないがやっぱりあそこか、戦争の犬にでもなって命を売るか、そうでもなければ頭を売るしかしょうがない。
いっておくがそれは一般的な意味でリーマンが行っている行為ではない。入社初期の刷り込みの時間をのぞけば、基本的に同じ思考法同じ知識で世渡りができる リーマンは実は時間を売っているにすぎない。
俺たちは頭を売っている。発明するとかなんらかのオリジナリティのある作品を発表してそれを金に換えるとか、そんな格好のいい話ではない。ただただ頭を売っているのだ。いや貸しているといった方がいいかも知れない。ニュアンスはけつを貸すという表現と同一である。
しかし頭を貸すのはけつや、女の人ならあそこを貸すのよりははるかにきつい労働である。なぜならけつやあそこを貸すのには痛みのようなものはあるかも知れないが、ほとんど苦労はない。時間が過ぎ去るのを待つだけで済む。注射みたいなものである。
しかし頭を売るのはたいへんだ。興味のないことを短期集中的に頭に詰め込み、それを消化し、なんらかの形で答えを出さなくてはいけない。入れる時には元々の自分のデータを日記やメモなどの形で余所に移して、頭に入れられる状態を準備しなくてはならないし、その気になるという精神的なコンディションを整えるのだけでもたいへんなので、元々頭にそんなデータのつまっていて、そういう世界でのおのれに生活の肯定感に満ち溢れているリーマンがやればいい仕事だと思うのだが、リーマンは時間は売っても頭は売らないことを旨にしているので、俺たちみたいな頭脳の日雇い人夫にいつでもおはちがまわってくるのである。
そしてなぜかしら知らないが俺たちが頭を売って考えた結果は時間でしか換算されないから、そのペイは大した金にはならない。せいぜいが超零細のロックバーを転がしていき、フロのある部屋に住み、餓死しない程度の食事と、充分それで身を滅ぼすことのできる程度の酒を飲める程度ある。
それができるなら、それにたえらえるなら、資本や権力に近いところでおとなしく時間だけを売っているのが一番経済効率が高い。世界中でだれもがそのようにして暮らしている。
しかし俺たちは、何のために生きているのだかわからなくなってしまうので、俺たち個人のものであるべき時間はなるべく売りたくない。だからまだ、頭を売る方がましかと思って暮らしているのである。あぁ今日は2月24日火曜日、今は午前6時33分、12時間もぶっつつけで頭を売ってしまった。今は頭を自分のものに修復している真っ最中。目覚めればロックバーのおやじである。しかも明日も明後日も頭を売らなくてはならないのでしばらく酒は飲めそうもない。地獄だ。
耳の奥の方でしゅ〜っしゅ〜っというなにかが蒸発する音がしている。蒸発しているのが俺の頭本体でないことを願う。さもないと頭さえ売れなくなり、それでは酒も飲めないではないか。
僕のこの歌詞にスポットをあてる連載で、取り上げる曲の音楽面が最高に格好いいことは保証します。大音量で10回続けて聴いてみてください。きっと感じるものがあるでしょう。(この企画、文章、考え方などの著作権は一応存在するといっておきます)
|
|
|