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WRITE IT LOUD!! ROLL OF ROCKS

since 97.5.01since 97.5.03

                        1996年10月11日開始

                                  火だるまG

第17回:1997年6月11日

CANDY SAYS/VELVET UNDERGROUND(69 IN THE VELVET UNDERGROUND)
LISA SAYS/LOU REED (72 IN LOU REED)
CAROLINE SAYS II/LOU REED(76 IN BERLIN)


キャンディ曰く
私は私の体が嫌い
そして体が要求するものが大嫌い
キャンディ曰く
私は他の人たちがばらばらに語るところを
しっかり理解したい

キャンディ曰く
私は静かな場所が嫌い
そして静かな場所が引き起こす
ちっぽけな趣が大嫌い
キャンディ曰く
私は大きな決断が嫌い
そして大きな決断が引き起こす
終わりのない後悔が大嫌い

私は青い鳥が私の肩先から飛び立つのを見るでしょう
私が歳をとると
青い鳥は行ってしまうの
いよいよ気が狂ったかって
思っているでしょ
わかるわ




リサ曰く
こんな夜には濃厚なキスをしてくれると嬉しいのだけど
リサ曰く
もうちょっと笑ってくれない
そしたらいつまででも祈ってあげるわよ

リサ曰く
あなたは私をカリフォルニアのバカ女だと思っているでしょ
あなたの接し方は
まるで道具を扱うようだわ
リサ曰く
もしあなたがあなたの舌を私の耳にねじ込めば
今ここで起きていることがどういうことなのか明快になるのだけど

リサはそういう
冗談じゃねぇぞ
リサはいう
ちょっとだけいいこにしていてくれない

おい、もしおまえが気のいい男をお望みなら
俺はそんな類の男じゃないぜ
気のいい男なんて
ひとりよがりに決まっているってわかっているんだろ
もしおまえがマジな愛をお望みなら
さっさとここで横になりな
いいことなんてすぐ終わっちまうことも承知なんだろ
俺だっていつかは死ななくちゃならないが如くにさ

なんで俺はこんなにぐずぐずしているんだ?
なにを照れているんだ?
彼女は楽しみたいだけなんだ
しかも続きはしないってことも承知の上だ
君を初めて見たときに
俺は心の中で呟いた
なんて可愛い眼なんだ
そして今、君にその気にさせられて
俺はかえって当惑している
その理由は
俺が愚図だから
なにを照れているんだ?
いいことなんてすぐに終わっちまうのに

リサ曰く
こんな夜には濃厚なキスをしてくれると嬉しいのだけど
リサ曰く
もうちょっと笑ってくれない
そしたらいつまででも祈ってあげるわよ





部屋を出たのが午後の4時。小路に飛び出した瞬間、俺と眼があった近所の猫がいきなりゲロを吐きやがった。猫の嘔吐を見たのは生まれて初めてだ。まるでうんこみたいな、胃袋の形そのままの個体が小さな口からにょろっと現出して、俺は猫が頭蓋骨をはずしたのかと思った。匂いはない。味もない。(俺は這い蹲って匂いを嗅ぎ、指先を触れたのだ)
とにかく不吉なスタートである。
ルー・リードの初期の女性独白3部作を並べてみることは、かなり前に考えたことだ。しかし最近全然女性のことを考えたりしなかったので、忘れていた。
先週俺は39歳の誕生日を迎えた。そしてその日をはさんで一週間ぐらいの間に、いっきょにかなり複数の女性の心に襞に触れる(肉体的な襞だったらよかったのに!!!)事態が続いた。それは愛とか恋とかではなく、もっと根源的なヒューマンな感触をともなう経験であった。
それらをどう消化し、俺の心に定着させるかは現在作業中なので、中間報告もする気はない。
どっちにせよ、フィクションにするしかない類のリアリティである。
それで、今回は、懸案のルー・リード3部作に取り組むべく、昼頃からネットの中で世界中、彼の歌詞を探してサーフィンしていたのだが、ヴェルヴェット時代の「キャディ曰く」しか見つけられなかった。去年の年末にはもう少しあったと思うのだが、例のオタワ条約で著作権の有効期間が25年から50年に延長されたのが影響しているのだろうか? ネット上からロックの歌詞が減少している気がする。いつもいっていることだが、語られるうちが花、ジョン・レノンでもディランでも、どんどん歌詞をのっけさせて、議論させて、興味を持たせるほうが商売が拡大成長すると俺は思うのだが・・・・・・。
最後の『ベルリン』の「キャロライン曰く・其の2」は店のアルバムに歌詞カードがついていることは知っていた。問題はファーストアルバムの「リサ曰く」で、店にあるのはペラペラの輸入盤である。
俺は金がない。まず考えたのがレンタル・レコード、それで20分歩いて、「紀ノ国屋」の近くの「TSUTAYA」に行ってみたが、なんとここは販売専門だった。たしかにファースト・アルバムはあった。1980円。しかし、このために店にアナログであるアルバムをCDで買う気には、この時点ではなれなかった。
それで、また20分歩いて、新大久保の「TSUTAYA」へ行った。そのアルバムはなかったが、ヴェルベットの再結成のライブのCDで「リサ曰く」をやっていた。入会金込み410円を払って、それを借り、店のコピーで歌詞カードだけコピーして30秒で返したら、店員が唖然としていた。
しかし精読してみたとたんに、嫌な予感が走る。俺の頭の中でなっている歌詞と全然違う。本当にこんな歌か?
写しておきます。

LISA SAYS THAT IT'S ALRIGHT.WHEN SHE MEETS ME AT MIDNIGHT.LISA SAYS THAT SHE HAS HER FUN.AND SHE'LL DO IT WITH JUST ABOUT ANYONE/LISA SAYS,LISA SAYS/LISA SAYS SHE'S ON THE RUN.LOOKING FOR A SPECIAL ONE.LISA SAYS THAT EVERY TIME SHE MAKES A STREAK.SHE KNOWS HER HEART WILL BREAK/LISA SAYS,LISA SAYS/LOOKING FOR A PARTY,SOME ACTION.GONE TO MAKE IT FEEL OKAY,BUT WATCHING IN MY EYES WHEN CANDLES COME ON ,LOOK AT IT ALL.

これはどういうことだ? ディランなどが昔の曲をメロディを変えて唄うことは慣れっこだが、「リサ曰く」以外は全部違うじゃないか? 主語が変わる男の独白の部分もないし、この主人公の女性には個性というものがない。
ここにこうあるからはこう唄っているのだろうし、それでは、これはルー・リードの心の中のなにを示しているのだろう? どうせ今の客にはわからない歌だということで、適当に流しているのかしらね・・・・・・
店で確認してみると、やはり全然違う、しかも改善でなく改悪である。最悪俺自身で聴き取りをしなくてならないぞとは思ったけど、この歌に関しては、いくつかの単語が聴き取り不能であることには自覚症状があるので、どうしても二の足を踏む。
それでまず、ロックリサーチャーのOに電話。彼はなかなかのルー・リードファンだけど不在。留守電に、どうでもいいことだから気にしないで忘れてくれと、メッセージを残す。続いて我が店きってのヴェルヴェットフリークIに電話。不在。留守を守るご母堂に、それでは結構ですと、ていねいにご挨拶。この人も女性だよね。そういえばOの留守伝のメッセージの声も奥さんによるものだった。
ちなみにこの時点で6時をこえていた。
それで下北沢のロックバー「ストーリーズ」に電話。頼みのOさん不在で、他の女性が店を守っている。たしか最近河出書房から詩集が出まして、それにはあるでしょう、と、教えてくれた。新宿なら、ディスクユニオン、それに新しくできたタイムズスクエアの「紀ノ国屋」くらいにはあるのではとの、使えるアドバイス。
もはや散財やむなしと、小走りで再び新宿の雑踏へ、ディスクユニオンタッチの差で閉店。「紀ノ国屋」本支店ともになし。足が疲労でぴくぴくしてきた。もうどのくらい歩いたのか? 10キロは下るまい。
よぉし、こうなりゃCD買うぞ。名盤には間違いがないのだから、だれかに半額で売りつければいいんだ。実際この時にある男の顔が浮かんだが、それがだれかは秘密、もう一度「TSUTAYA」へ。
買う前に、一応歌詞カードのレベルをチェックさせてくださいと申し出ると、女性の可愛い店員さんは快諾してCDを開いてくれたが(別のものを開いて欲しい!!!)、なんと、国内版だというのに歌詞カードがなかった。
それ店に戻る。いよいよ聴き取りだが、まだぐずぐずしている俺は、再度Iに電話。今度はいる。あることはあるけど、会社にあるのよ、明日じゃだめ?
だめなんだよ。こういうことはその気になったときにやるしかないの、いいことはすぐ終わっちまうし、俺だっていつかは死ぬんだから。
(実際には明日以降はみっちりバイトで11日のアップに間に合わなくなるのです)

それでいよいよ聴き取りした。だから今回の歌詞はますますもって意訳になっていますけど、そこんとこよろしく。
部屋に戻る。10時。はたと気がつく。
「キャロライン曰く・其の2」の歌詞カードをコピーしてくるのを忘れた。もう本当に年だ。ボケだ。四十だ。
店に戻る。なんとなく手書きで写したくなる。それで部屋に戻ったら、もう11時で、横町の角では、さっきの猫がうまそうに飯をはふはふ喰ってやんの。おう食え、食え。そして気に入らなければ吐け。それでいいんだ。そして死ぬまで長生きしろよ。
しかしこのアホらしい7時間、うち、歩いている時間4時間、の間中、僕がしっかり女性のことを考えていたといったら、信じてくれますか? みなさん。

実は僕は近近『新鮮組』という雑誌に「女性器訪問(仮題)」という連載をもたしていただく予定で、そのことも、最近女性のことばかり考えている、僕の心のありように影響しているのでした。僕は女性は好きです。いいものが書ければと祈っていますが、おそらく女性の方々は、コンビニで立ち読みというわけにもいかないと思います。そういう雑誌で、そういう連載です。しかし女性に読んで欲しいなぁ。

(追伸)上記を書き上げたのが、深夜2時。その後、僕が、録画して置いた木冬社公演『火のようにさびしい姉がいて』を見ていた、4時45分頃、ドアの外でみゃあみゃあ鳴き声が聞こえるのであけると、例の食べ吐きの猫がいて、うるせぇなぁ、入るなら入ってこいよといって手を伸ばしたら、ぷいと雨の中に走って消えていった。猫じゃなけりゃもっといいのにね!!! でもこいつはおすじゃなかったかしらん。




床からようやく立ち上がった
キャロライン曰く
どうして私を殴るの?
なにがおもしろい?
眼の下の痣を化粧で直しながらの
キャロライン曰く
私のことなんか気にするよりも
あなたはもっと自分自身について学んだ方がいいわ

しかし実際は
死ぬことなんて恐れていないのは彼女のほうで
彼女の友人たちはみんな
彼女をアラスカとよんでいる
彼女がヤクでれろれろになると
みんなで彼女を笑いものにして、そして尋ねる
いったいなにを考えているんだ?
その心の中にあるのはなんなんだ?

床からようやく立ち上がった
キャロライン曰く
好きなだけ殴ってもいいけど
もうあなたを愛していない
唇から滴り落ちる血を舐めながらの
キャロライン曰く
人生とはもう少しはましなはずよ(LIFE IS MEANT TO BE MORE THAN THIS)
これじゃたかりだわ

しかし実際は
死ぬことなんて恐れていないのは彼女のほうで
彼女の友人たちはみんな
彼女をアラスカとよんでいる
彼女がヤクでれろれろになると
みんなで彼女を笑いものにして、そして尋ねる
いったいなにを考えているんだ?
その心の中にあるのはなんなんだ?

彼女が拳を握ったまま真っ直ぐとガラス窓に
それを見ていたら、妙におかしかった




僕のこの歌詞にスポットをあてる連載で、取り上げる曲の音楽面が最高に格好いいことは保証します。大音量で10回続けて聴いてみてください。きっと感じるものがあるでしょう。(この企画、文章、考え方などの著作権は一応存在するといっておきます)


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