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SANS & STREIFFE Telephoto 10.5cm F2.8の味

柔らかい写りとぼけ方が魅力

 SANS & STREIFFE Telephoto 10.5cm F2.8は、かなり古いレンズです。よく知らないレンズでしたが、10.5cmという焦点距離表記(cm表記はかなり古いレンズの証)に惹かれ、価格も安いので試しに買ってみました。105mmは好きな焦点距離ですし。

 購入してから検索サイトで調べてみると、まったく情報がありませんでした。そのため、未だに詳細不明のレンズです。レンズ筐体に「JAPAN」と表記されてますから、日本製であることは間違いないでしょう。入手したのはエキザクタ・マウントですが、他のマウントのものが存在するかも不明です。

 実写してみると、かなり柔らかく写るレンズだと分かりました。とくに魅力的なのが、開放での、ピント位置から少し離れた箇所の後ぼけです。ソフトフォーカス効果のように、芯を持ちながら全体が柔らかくなる感じに写ります。私の好きな写りなので、一発で気に入ってしまいました。ただし、全部の後ぼけが同様になるわけではありません。ピント位置から近い、限られた領域だけのようです。でも、その領域は意外に多く使えるので、利用範囲は広いと思います。

 ぼけを細かく見ると、悪い特徴も見えてきます。一部だけですが、少し二線ぼけ風になる領域があります。通常の二線ぼけではなく、二線ぼけの片方がかなり薄い感じです。濃い方のぼけが柔らかいので、細かく見ないと気にならないでしょう。おそらく、ある特定の条件で写したときだけ、少し気になる結果になると予想してます。もっと使い込んでみなければ、正確なことは分かりませんけど。

後ぼけを積極的に生かす

 このレンズの味を生かすには、ピント位置に近い後ぼけを積極的に利用するのが一番です。どのように注意して使うかが、もっとも重要なことでしょう。ピント位置から近いところの後ぼけですから、ピント位置の後ろに何かを入れて、開放で写すことになります。

 後ぼけとして、どんなパターンだと魅力的に写るのか、いくつかの被写体を試してみました。いくつか撮影した限りでは、フレアーが多めに出る感じなので、ぼけた被写体と背景とに明暗差があるほど、フレアーが大きく出ます。また、ぼけた被写体の形がハッキリしているほど、フレアーの出ている感じが目立ちます。こうした点を考慮しながら、後ぼけの被写体と背景を選べば、このレンズの味を生かせるはずです。

 後ぼけになる領域がどの範囲なのか、どの程度の距離で一番美しくなるのかは、まだよく分かっていません。これから多く撮影する中で、少しずつ分かってくると思います。

 もっと一般的な使い方として、全体を柔らかく仕上げる用途にも適しています。開放近くで撮影すると、ほとんどの被写体で柔らかく仕上がりますから。ピント位置から少し後ろの距離に被写体がないと、普通の柔らかいレンズと似た結果に仕上がります。

 もちろん、古いレンズですから、白い部分を入れた箇所にはフレアーが発生し、古いレンズならではの独特な雰囲気に仕上がります。古いレンズに共通の味で、このレンズ独自の味ではありませんけど。

作例1:タイトルなし

 作品というより、このレンズの味が分かる例です。横幅512ピクセルの小さなサイズの写真でも、レンズの味の分かる作品が見付からなかったので、仕方なくこの写真を選びました。ヒマワリの手前にピントを合わせたので、花の奥側や葉っぱがぼけていて、レンズの味が分かりやすく現れています。代わりとなる作品が撮れたら、差し替える予定です。

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作例2:ヒマワリも暑がる夏

 古いレンズに共通する写りを生かした例です。明るい部分の周囲にフレアーが出て、暑さを表現するのに役立ってます。ハイキー気味に撮ることで、さらに強調できました。下側のヒマワリも、一部が飛んだ状態で少し下を向いてるので、疲れている雰囲気が出ました。古いレンズならではの仕上りです。

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(作成:2005年8月5日)
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