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ZENITAR-M 16mm F2.8をE-1で試す

左右方向の中心線上では、35mm版で28mm相当の画角

 ロシア製のM42マウントの対角魚眼レンズ、MC ZENITAR-M 16mm F2.8を購入しました(同じレンズでニコンFマウントもありますが、M42マウントの方がセールで圧倒的に安かったので、こちらを選びました)。フォーサーズ用のM42マウントアダプタを使うと、E-1に装着して使えます。

 本来なら、本格的にレビューしたいのですが、時間がないので簡易レビューの感じでまとめてみました。要点だけ、大まかに説明したいと思います。

 35mm版のレンズをE-1に付けると、35mm版換算で焦点距離を2倍にした感じに写ります。16mmのレンズなので、2倍の32mm相当の広角レンズとなるはずです。でも、魚眼レンズは特殊なので当てはまりません。

 そこで、写る範囲を簡単に調べてみました。左右の範囲は、水平方向の中心線上で測ったところ、標準ズームの14mmとほぼ同じでした。14mmは35mm版換算で28mmに相当します(より正確には29mm相当かも)。魚眼特有の外側の歪曲によって、16mmの2倍である32mm相当よりも画角が広くなったのでしょう。

 魚眼レンズですから、中心点から離れるほど歪曲が大きくなります。水平方向の中心線上では28mm相当ですが、四隅が含まれる対角線上では、もっと広い範囲が写っているでしょう。24mm相当とか、それ以上とか。簡易レビューなので、そこまでは調べませんでした。

魚眼らしさが周辺部に現れる

 ファインダーを覗いて気付くのは、魚眼らしい歪曲が残っていることです。周辺部に行くほど、歪曲が大きく感じられます。ズームのワイド端でよく見られる、樽型の歪曲収差が強く出た感じの画像となります。水平線や垂直線を入れると、それも中心から遠い箇所に入れるほど、歪曲がハッキリと出ます。

 樽型の強い歪曲ですから、高いビルなどを撮影すると、頭の方が中心側に引っ張られて曲がった感じに写ります。ズバリ、こんな感じですね。

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 歪曲が明確に現れるのは、水平線や垂直線が多い被写体です。広角なので下から写す形になりますが、ビルなどを目一杯に入れると、歪曲の様子がハッキリ確認できます。次のような感じで。これだと、歪曲の様子が一目で見れるでしょう。

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 E-1に付けると、面積としては中心部の1/4しか使ってません。それでも、これだけの歪曲が出ます。やっぱり魚眼レンズですね。

被写体の切り取り方によっては、歪曲があまり目立たない

 ここまでは、歪曲が目立つような写し方ばかり紹介しました。逆に、本当の対角魚眼レンズほどは歪曲していませんから、被写体の切り取り方を工夫すれば、歪曲があまり目立たない感じでも撮れます。もちろん、完全になくすことは無理ですけど。

 もっとも単純なのは、水平線や垂直線を入れないことです。空のように、歪曲しても分からない被写体が適しています。ビルを入れるにしても、含まれる直線が中心部へ向かう形だと、歪曲が感じにくくなります。次の例のように。

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 こうした方法では、直線を含んだメインの被写体を大きく写せません。メインの被写体をもっと大きく写したいときは、対角線に入れる方法が使えます。歪曲をなくすことは不可能ですが、歪んだ感じを弱めることはできます。完全に対角線に入れた例が見付からなかったので、それに近い例を用意しました。

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 この例では、下の道路標識の横線が歪曲しています。この部分だけは、歪曲が典型的に目立つ例ですね。

 歪曲を減らすような撮り方は、知識として知っておくだけで、あまり使わないと思います。歪曲が適しない写真なら、普通の広角レンズを使えばいいわけで、このレンズをわざわざ使う意味がないですから。歪曲を積極的に利用してこそ、このレンズを使う価値があります。

マット面でのピント合わせはまあまあ

 魚眼レンズなので、被写界深度はかなり広いです。レンズに付いている目盛りによると、開放のF2.8でも2mぐらいから無限遠までピントが合います。2段絞ったF5.6だと、1m弱から無限遠までピントが合います。多くの場合、パンフォーカスで撮影できるでしょう。

 ピント合わせは、ファインダーのマット面で行ないます。E-1のファインダーは見やすいので、ピントの山が何とか見付けられます。でも、もともとぼけが小さいので、ピント合わせする必要がないと、撮影してみて分かりました。F5.6に絞って、無限遠にピントを固定したまま撮影すれば済む被写体が、多いですから。

 マウントアダプターが入手できてから、レンズを購入したお店に行ってみました。その際にお店で、このレンズをEOS Kiss Digitalに装着した状態で使わせてもらいました。私の持っていたE-1にも装着し、両カメラでの見え方を比べてみたのです。結果は、圧倒的にE-1の方が合わせやすかったです。EOS Kiss Digitalは、一眼レフのカメラとは思えないほど、ファインダーが貧弱でした。私とお店の方2人、3人ともが同じ意見となりました。

 お店の方2人は、E-1を使ったことがない様子で、カメラを触ったり質問したりしてました。触ってすぐ、作りがよいボディだと感心し、ファインダーの視野率が約100%だと聞いて驚いていました。E-1の出す素晴らしい色を見せられなかったのが、一番残念ですけど。

ピクセル等倍だと色収差が少し見える

 気になるのは画質でしょう。超広角であることに加え、真ん中の面積で1/4しか使ってないので、ピントが合った箇所の解像感は十分です。ピントが合ってない箇所も、あまりぼけません。前述のように、被写界深度は相当に広いです。

 歪曲に関しては、用意した写真のとおりです。画質で気になるのは、色収差だけのようです。ピクセル等倍で見ると、周辺部で色収差が少し出ています。50%に縮小して表示すれば、あまり気にならないレベルになるので、実用上は問題ないと判断しています。

 色収差以外の欠点は、これといって見付けられませんでした。得られた画像のコントラストも十分だし、(セール中で特別に安かったのですが)税込み1万7850円で買ったレンズとしては、性能価格比が非常に高いレンズでしょう。まさに、買って得したレンズの1つとなりました。

歪曲をどんな表現に利用するか

 魚眼レンズの中央部分だけ使った歪曲の効果は、Photoshopのようなレタッチソフトを使えば、あとから作ることが可能です。ただし、元写真をかなり広めに写しておくなど、慣れないと思い通りには作れません。

 それ以前に、歪曲後の仕上りを予想しながら撮影するのは、かなり難しいと思います。最初から魚眼レンズを使えば、仕上がった状態のままフレーミングできるので、こちらの方が格段にやりやすいでしょう。被写体への角度や写す範囲を変えながら、余計な創造力を使わずに、自由に撮影できますから。

 では、歪曲の強いレンズは、どんな表現に使えるでしょうか。いつくか挙げてみました。次のような使い方はどうでしょうか。

・全体が丸く歪んで写るので、
  ・歪んだ(非現実的といった)世界という印象を与える
  ・被写体の形を崩すことで、面白さを作り出す
・中央が出っ張って見えるので、
  ・中央に配置した主役を、出っ張らせて強調する
  ・最初から出っ張っている箇所を中央に配置し、さらに強調する

 単写真でも面白く使えそうですが、全写真をこのレンズで写した組写真というのが、もっと面白そうです。

 このレビューを書いていて思い付いたのですが、画角と歪曲の大きさを変化させられる、魚眼ズームなんて実現できたら面白いかも。ズーム範囲としては「全周魚眼~対角魚眼~対角魚眼の中央部分」という具合に。35mm版なら、8-24mmぐらいの焦点距離でしょうか。魚眼レンズ好きには、かなり面白いレンズになりそうですね。

 ここまで書いて調べてみたら、既に存在してました。ペンタックスの一眼レフ用レンズとして(ただし、全周魚眼は含んでいませんでしたけど)。やっぱり作る技術者がいるんですね~。感心しました。

(作成:2004年6月4日)
(更新:2004年7月4日:レンズの写真を追加)
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