写真道>機材活用
<前 次>

プラナー50mm F1.4をE-1で試す

近代のアダプタによりコンタックスのMFレンズが使える

 近代インターナショナルから、フォーサーズシステム・ボディ用の各種レンズアダプタが発売になりました。コンタックスMFレンズ用のアダプタを、発売日に注文して入手したものの、とりあえず接続できるか確かめただけでした。最近になって試写し、特徴が分かったので紹介します。

 コンタックスのプラナーは、50mm F1.4と85mm F1.4の2つを持っていますが、今回は50mmだけ試しました。このレンズの正式名称は「プラナーT* 50mm F1.4 (MM)」となってるみたいです(以下「プラナー50mm」と略)。当然ながら、ピント合わせがマニュアルで、レンズにはフォーカスリングが付いてます。絞りリングも付いていて、開放のF1.4からF16まで変えられます。

 フォーサーズシステムのボディに付けると、35mm版換算で100mm F1.4に相当します。中望遠の明るいレンズになります。開放から使えるなら、かなり魅力的なレンズですね。

 フォーサーズシステムのボディでは、レンズの中央部分だけ使うことになります。面積としては、イメージサークルの中央の1/4で、描写が一番良い部分です。しかし逆に、解像度も2倍求められますから、良い面だけではありません。

 コンタックスのプラナーは、50mmも85mmも、ぼけが美しいことで超有名です。そのぼけ味が、E-1でも味わえるようになるなんて。E-1が作り出す素晴らしい発色と、プラナーの美しいぼけ味の組み合わせ。考えるだけでぞくぞくしますね。

絞り込み測光で使う

 プラナー50mmをE-1に付けた場合、絞り込み測光しか使えません。撮影モードは、絞り優先の自動露出かマニュアルです。今回は、絞り優先の自動露出を使いました。レンズの絞りリングを回すと、レンズが絞り込まれ、ファインダーの像がだんだんと暗くなります。シャッターボタンを押しても絞りは動かず、そのまま撮影されます(これこそ、絞り込み測光の特徴です)。

 絞ると困るのが、ピント合わせです。絞ることにより、スクリーンが暗くなるだけなく、被写界深度が広がってピントの山をつかみにくくなりますから。そのため通常は、開放でピントを合わせ、シャッターを押す直前に、使いたい絞り値まで絞りリングで絞り込みます。今では当たり前となった開放測光に慣れた体には、かなり面倒な操作です。

ピントが正確に合わせられない

 ピント合わせもマニュアルです。ファインダーの像を見ながら、レンズのフォーカスリングを回して、ピントが合ったと思われる位置で止めます。マニュアルフォーカスの一眼レフなら、フォーカシングスクリーンの中央にスプリットやマイクロプリズムが付いていて、その部分を見ながらピントを合わせます。しかし、E-1はオートフォーカスのカメラなので、そんな便利なものは付いていません。仕方がないので、スクリーン上の像を見ながらピントを合わせます。

 実際に試してみると、ピントの山を簡単には見付けられません。ピントが合っているように見えるのが、頂点として存在するのではなく、少し広い範囲になっています。そのため、どこがピントの山なのか分かりません。その少し広い範囲の真ん中に合わせようとしても、うまくできませんでした。

 ピントの合わせやすさは、被写体の特徴にも依存します。ある程度まで細かくてコントラストがあり、その境目が明確だと、少しは合わせやすくなります。それでも、ピントの山をつかむのは難しいです。どの程度細かいかも、大きく関係します。ある距離でピントが合わせられた被写体を、もう少しだけ離れて写そうとしたら、ピントの山が上手につかめませんでした。被写体までの距離が変わったことで、目印となる箇所の細かさが変わり、ピント合わせに適さなくなったからです。このように、同じ目印でも、撮影時の距離によって、ピントが合わせやすかったり難しかったりします。

 開放のF1.4で撮影したところ、多くの写真でピントが合ってませんでした。とくに、ピント合わせに適した目印のない被写体では、ピンぼけの方が圧倒的に多かったです。適した目印があったときも、ピントが満足できるのは半分以下でした。このように、開放で写す前提では、ピント合わせができない結果となりました

 しかし、少し絞り込めばピントが合います。開放でピントを合わせてから、絞りをF2.8まで絞って撮影すると、ほぼ間違いなくピントが合っています。絞ることで被写界深度が広がり、ピンぼけを防いだためです。

 以上のことから、ピンぼけを防ぐためにはF2.8まで絞ることが条件となります。つまり、開放では使えないと言うことです。ただし、ファインダー像を拡大して見れるマグニファイアがあれば、大丈夫かも知れませ。でも、E-1のシステムには、現時点でマグニファイアが用意されてないんです(さらにアングルファインダーも)。もしあったとしても、それを付けると使い勝手が低下します。それより、スプリットが中央に付いたフォーカシングスクリーンを用意すれば、問題は一気に解決します。オリンパスさん以外からでも、出してほしいですね。

F2.8まで絞れば、シャープな画質に

 一番気になるのは、撮影された画質でしょう。画質を適切に評価するためには、開放でピントが合っていなければなりません。開放でピントが合わせられる被写体を探し、絞りを変えながら撮影してみました。絞りを絞った側の画質には興味がないので、開放のF1.4から中間絞りのF5.6までしか調べていません。縮小した画像ですが、F1.4とF2.8でのサンプルを用意しました。

F1.4   F2.8 ←クリックで拡大
(このページへ戻るには、ブラウザのボタンで)

 実際の画像を見た結果は、次のとおりです。開放F1.4では、全体的に柔らかい描写です。中央部も含めて、ほんわかした感じに写ります。しかし、ピントの合っている箇所には芯があります。ピクセル等倍で見ると、柔らかな感じと芯がよく分かります。F2に絞ると、柔らかさが弱まって、シャープさが向上します。雰囲気としては、開放と似たような傾向です。

 F2.8まで絞ると、かなりシャープな画質に変わります。ピクセル等倍で見ても、満足できる画質です。ただし、四隅は少しだけ甘さが残ってます。これもF4まで絞ると解消します。F5.6もF4と似た画質で、被写界深度がより増します。

 以上のことを整理すると、次のようになります。四隅も含めてシャープな画質を求めるなら、F4以上に絞ることが必須でしょう。しかし、F2.8も捨てたものではありません。四隅だけがほんの少し不満なので、通常の被写体では十分な画質が得られます。というわけで、F2.8まで絞ればシャープな画質と判断しました。

 F1.4とF2の画質も、使えないというわけではありません。この柔らかい描写は、ズイコーデジタルにはない味です。柔らかい雰囲気が表現意図に適しているなら、積極的に使えます。柔らかさは、美しさや優しさに通じますから、この手の表現には最適です。

 こうした結果は、プラナーの特徴そのものです。柔らかい描画とシャープな描画の両方が、1本のレンズで楽しめるという。しかも、プラナーの最大の魅力である美しいぼけ味(後述)付きで。一番柔らかい描写を狙うなら開放を、少し柔らかい描写ならF2を、シャープな描写を求めるならF2.8以上に絞るという具合に、描写の特徴を絞りで切り替えられます。

 最大の問題は、ピント合わせですね。開放とF2では、ピントが正確に合わない心配があります。これさえ解決できたら、非常に魅力的なレンズとして広く活用できるのですが……。とても残念です。

ぼけ味は、期待したとおり美しい

 もっとも期待しているのは、ぼけ味の美しさでしょう。これに関しては、良いテスト方法をまだ見付けていません。仕方がないので、何種類かの被写体を写した印象だけを紹介します。

 前景や背景となる普通のぼけは、プラナーらしい美しいものでした。一般的にぼけが美しくないズームレンズと比較すれば、うらやましいぐらいの美しさです。ズイコーデジタルの50mmマクロとは比べるべきでしょうが、あまり使っていないので印象がないのです。そのうち機会があれば、比べてみたいと思います。

 点光源のぼけ味は、まあまあでした。イメージサークルの中央部分しか使っていませんが、開放の周辺部では、月が欠けた形が四隅に出ます。この辺は、どのレンズでも仕方がない部分ですね。絞ったときは、絞りリングの形が出ます。絞り羽根は6枚ですが、F2からF4の範囲では円形に近くてまあまあ美しいです。F5.6からは六角形になるので、六角形のぼけが出ます。点光源のぼけを少しでも美しく見せたいなら、開放からF4の範囲で使った方がよいでしょう。

E-1でも、柔らかい描写を利用したい

 他に気付いたのは、開放でさえ周辺減光が気にならないことです。イメージサークルの中央部分1/4だけ使っているためでしょう。代わりとして、イメージサークルが広いことによる逆光時の画質低下が予想されます。ただし、フォーサーズの画角に合わせた狭いフード(そんな用途のフードは存在しませんが、中望遠用で代用できるかも)を付ければ、解消できるでしょう。

 以上のように、大まかな傾向は分かりました。ズイコーデジタルにはない、プラナーならではの描写が確認できました。ピント合わせの問題は残りますが、何とか使いたいレンズの1本です。あまり良い例ではありませんが、開放ではこんな感じの写真が撮れます(残念なことに、ピントが少し外れてます)。

←クリックで拡大
(このページへ戻るには、ブラウザのボタンで)

 ズイコーデジタル50mmマクロの300gより軽い275gですから、ときどき持って歩きたいと思います。プラナー側はアダプタ付だから、ほとんど同じ重さになるかも。それでも、気楽に持ち歩ける重さですね。

(作成:2004年4月20日)
(更新:2004年7月4日:レンズの写真を追加)
<前 次>