物部道足 もののべのみちたり 生没年未詳

常陸国信太(しだ)郡の人。天平勝宝七歳(755)二月、防人として筑紫に派遣される。

 

おしてるや難波の津ゆり船装(ふなよそ)(あれ)は榜ぎぬと妹に告ぎこそ(万20-4365)

【通釈】難波の港から船の装備を整え、私は出航したと、妻に告げてほしい。

【語釈】◇おしてるや 難波の枕詞◇船装ひ 出航前に船の装備をととのえること。◇告ぎこそ 告げこその訛。告げてほしい。

 

常陸(ひたち)指し行かむ雁もが()が恋を記して付けて妹に知らせむ(万20-4366)

【通釈】故郷の常陸をめざして行く雁はいないか。私の恋しい思いを書き記して、雁に付けて妻に知らせよう。

【補記】当時の農民に漢字を書けた者のいたらしいことが判る。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日