3 次コオナアへゆくまへがきへ戻る       *                                                                 をはり                                                      天平勝宝七年 難波での作 見えないほど霞がたなびいてゐます  揚げ雲雀の見られる頃の春にすつかりなつたので 都の方も                                   都も見えず霞たなびく 二十|四四三四                            雲雀揚がる春辺とさやになりぬれば                            同に集ふ飲宴に作る歌               三月三日防人を検校する勅使と兵部の使人等と       *                                             ぼつてゆき 心は切なさに溢れる 独りで物思ひに耽つてゐると  明るくのどかに照り渡る春の光の中を 雲雀が鳴きながらの                                  心かなしも独りし思へば 十九|四二九二                            うらうらに照れる春日にひばりあがり                            二十五日に作る歌       *                                              題詞の二十三日は天平勝宝五年二月 次の歌も同様 この夕暮れの光の中 鴬が鳴いてゐるのを聞くと  春の野に霞がたなびいて 私は切なさで胸がいつぱいになる                                    この夕影に鴬鳴くも 十九|四二九〇                            春の野に霞たなびきうら悲し                              二十三日 興に依りて作る歌