海犬養岡麻呂 あまのいぬかいのおかまろ 生没年未詳

伝不詳。海犬養宿禰は、安曇氏などと同族の、いわゆる海人系氏族。福岡市博多区住吉付近を本拠とし、もとは那津官家の守衛を職掌としたらしいが、その後中央に進出、宮城門の守衛に従事した。

六年甲戌(きのえいぬ)、海犬養宿禰岡麻呂の詔に(こた)ふる歌一首

御民(みたみ)われ生ける(しるし)あり天地の栄ゆる時に遭へらく思へば(万6-996)

【通釈】天皇の民である私は生きている甲斐があることよ。天地が栄える時に生まれ合わせたと思うので。

【語釈】◇御民 天皇のものである人民。民はすべて天皇に属したので、天皇に対する敬意ゆえに敬語「御」を付けたもの。

【補記】天平六年(734)、聖武天皇の詔(ご命令)に応じて作った歌。聖武朝讃美の歴史歌巻とも言うべき万葉集巻六を代表するような一首である。

【主な派生歌】
み民われ生けるかひありてさすたけの君がみことを今日聞けるかも(賀茂真淵)
御民われ楽しくもあるか天地のたらへる御世にあらくし思へば(長田鶴夫)


更新日:平成15年11月09日
最終更新日:平成21年05月01日