葛岡宣慶 かどおかのぶよし 生没年未詳(1627頃-1715以後)

宇多源氏。父は右近衛中将従四位上、庭田重秀。姉妹の秀子は後光明天皇の典侍で、礼成門院孝子内親王の母。
公家歌人として古今伝授に与る。大坂に下り、居宅を「新歌林苑」と名付けて多くの門人に和歌を教授した。晩年は五辻家を継いだ孫広仲の後見のため帰洛したという。宝永五年(1708)成立の家集『歌苑和歌集』がある(和泉書院刊『和歌文学選』に抄出。大阪市立大学森文庫蔵本がDjVu画像にて閲覧可能)。
以下には『歌苑和歌集』より二首を抜萃した。

風前夏草

うすくこく茂るをままに吹き分けて風のゆくへの見えし夏草

【通釈】薄く繁った草も、濃く繁った草もそのままに吹き分けて、夏草に風の行く方向が見えた。

【補記】夏草が靡き、風の通り道を見せる。「うすくこく」は草の粗密すなわち色の濃淡でもあろう。

【参考歌】宮内卿「新古今集」
うすくこき野辺のみどりの若草に跡までみゆる雪のむら消え

旅宿冬夜

旅ぞ憂き一夜と思へど冬の夜は透間(すきま)の風の吹きて身にしむ

【通釈】旅は辛いよ。一夜限りのこととは思うけれども、冬の夜は、隙間風が吹いて身に沁みる。

【補記】冬の夜を旅宿に過ごす辛さ。趣向に新味も深みもないが、詞つづきが緊密で粘りがあり、新古今調を体得した作者の力倆を窺うに足る一首。


公開日:平成20年08月12日
最終更新日:平成20年08月12日