広河女王 ひろかわのおおきみ

上道王の息女。穂積皇子の孫。天平宝字七年(763)一月、従五位下に初叙されている。万葉集巻四に2首載る。

広河女王の歌

恋草を力車(ちからぐるま)七車(ななくるま)積みて恋ふらく我が心から(万4-694)

【通釈】この恋を草に譬えるなら、刈草を力車七つ分積むほど恋しいことよ――そんなに苦しい思いをするのも、ほかならぬ自分の心ゆえなのだ。

【語釈】◇恋草 頻りと恋情が催すのを、草が繁るさまに譬える。◇力車 力夫の引く車。◇我が心から この「から」は原因を示す助詞。自業自得である、といった気持。

【主な派生歌】
七車積むともつきじ思ふにも言ふにもあまるわが恋草は([狭衣物語])
七車つむ恋草のおもければうしとみれどもやるかたもなし(大江匡房)
人しれぬわが恋草の七車思ひみだれてやる方もなし(後村上院[新葉])
恋草のちから車を引く牛のくるしむいきを我がむねにして(肖柏)


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日