秋明菊 しゅうめいぎく 貴船菊(きぶねぎく) Japanese anemone

秋明菊 鎌倉 瑞泉寺にて

秋の庭に風情を添える花、秋明菊。九月最後の日、瑞泉寺にお参りすると、薄紅の花が元気に咲いていた。晩秋にかけて次々に咲き継いでゆくことだろう。

菊の名が付いているが、キンポウゲ科アネモネ属の植物。菊に似た八重咲きの花が本来の秋明菊であるが(下の写真参照)、交配によって一重の花、また様々な色合の花を咲かせるようになった。英名はJapanese anemone(ジャパニーズ・アネモネ)。

秋明菊 鎌倉 海蔵寺にて

二枚目の写真は鎌倉の海蔵寺にて、十月中旬頃の撮影。秋明菊の原種かそれに近い品種と見られる。原種は本州・四国・九州の山野に自生し、ことに京都貴船の群生地が名高いため「貴船菊」の雅称もあるが、古歌に詠まれた例を見ない。近代以降も作例を知らなかったが、斎藤史の『風翩翻』にようやく見出すことができた。

貴船菊の色も終りしきのふ今日白より冷えし雨となりたり

暖かげな紅い花の色が終った頃、山国に降る氷雨は「白より」冷えた色をしているのだろう。
『風翩翻』は平成十二年(2000)刊、作者十一番目の歌集。生前まとめられた最後の歌集であった。
因みに秋明菊は花びらが全部散ってしまうと、雌蘂だけが緑色の玉のようになって残る。しばし秋を見つめた瞳を、形見として残してゆくかのようだ。

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公開日:平成18年1月18日
最終更新日:平成18年1月18日

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