プラズマクラスターイオン発生器 SHARP IG-B20 車載改造(本格改造版) (2009/8/19〜8/27)

(Last update:10/10/18)


まずはブレッドボードで動作確認。 上:今回製作した基板
下:トラ技付録 DC/DC コンバーター基板
基板表 基板裏。
チップセラコン x 2、チップ抵抗 x 1。
チップ部品のハンダ付けに手こづった形跡が ^^;
早く鉛フリーはんだに慣れねば・・・
最終配線の様子 基板に絶縁シールを貼り、
ホットボンドで固定して厚みを抑える
最後はファンの前に押し込む。
配線がファンに絡まないよう
厚紙で仕切っておく
厚紙がたわんで、
基板の固定の役目も果たす
コネクタが振動で外れないよう
ゴムで押さえておく(爆)
車載完了。
見た目はフツーでも機能は満載 ^^
スイッチまわりの推定回路 回路図
おまけその1
代替に最適な秋月 \400 DC/DC コンバーター(左)。
トラ技コンバーターよりも一回り小さくて薄い。
おまけその2
うまく動かなかった試作初号機
(回路は最終版とは若干異なる)。
見た目はそれほど問題無さげなのだが・・・

注意事項:

 本改造に関して、

 ・管理人は、この記事を参考にした改造によって生じたいかなる損害にも責任を負いません。改造はあくまで自己責任で。
 ・管理人はいかなるご質問にもお答えしません。
 ・改造後はメーカー保証が受けられなくなります。
 ・本記事はあくまで管理人が入手したロットでの改造例です。今後製品基板の仕様変更により、改造ができなくなるかもしれません。


きっかけ

 実はつい先日まで、管理人は車のヒューズボックスなんて見たこともないぐらい車の電装はまったくの素人であった(爆)。よってお手軽改造で車載可能となった IG-B20 もシガープラグ(アクセサリー電源)から給電することとなり、停車時は IG-B20 が動作しなかった。

 まぁ、それはそれでバッテリー上がりを心配せずに済むというメリットはあるのだが、各種電源(常時電源、イグニッション電源、アクセサリー電源)を手軽に取り出すコネクタが販売されていることがわかったため、より本格的な改造を施すことに。これで車内での使用もより快適になるであろう ^^


仕様

 コンセプト的にはこれこれの合体+α。前回のお手軽改造を踏襲しつつ、以下の機能を追加する。

 ・降圧コンバータを内蔵し、常時電源やアクセサリ電源への直接接続を可能に
 ・通電後、10秒+2秒ほど遅延してから電源を入れる(遅延機能)
 ・バッテリ電圧を監視し、5秒間連続で設定電圧 (11.4V) を下回ったら自動的に停止し、ブザーで警告。(過放電検出機能)
 ・過放電停止した後、10秒間電圧が設定値 (13V) を上回ったら通電再開(v2.1〜)
 ・条件(下記参照)を満たせばエンジン停止後、4時間稼動して自動的に停止(タイマー機能)
 ・IG-B20 のフィルタクリーニング信号を検出したら音で知らせる(フィルタクリーニング検出機能)

 今回は、電源として (1) 常時電源、(2) イグニッション電源(キーを2回回した時に通電)、(3) アクセサリ電源の 3種類が考えられ、これらをどう接続するかで以下のように動作が異なる。

12V(メイン電源)接続先 ACC 接続 IG-B20 の動作条件 再稼動条件 過放電自動停止
アクセサリー電源 接続しない アクセサリー電源 ON 時 アクセサリー電源 ON あり
常時電源 接続しない 常時稼動 あり
常時電源 アクセサリー電源に接続 アクセサリー電源 ON 時、およびアクセサリー電源切断から4時間 アクセサリー電源 ON あり

 もちろんアクセサリー電源には、イグニッション電源を代わりに接続してもよい。

 要するに、タイマー機能は、常時電源+アクセサリ電源の両方を接続し、かつ、IG-B20 動作中に少なくとも1回はアクセサリ電源が入った場合に有効となる。

 今回の仕様変更に伴い、ハードウエア的には、

 ・DC/DC コンバーターに、トランジスタ技術 2008/10 号付録のものを 4.6V 出力に設定して使用
 ・給電制御は上記コンバーターのシャットダウン機能を利用
 ・過放電検出に A/D 変換が必要なので、PIC12F683 を使用

 といった変更を行う。


フィルタクリーニング信号

 IG-B20 は連続稼動約1ヶ月でフィルタクリーニングサインが点灯する。運転席から離れたところに IG-B20 を設置しているとなかなか気付かないのでビープ音で知らせる機能を付けることにした。折り良く、最初に購入した IG-B20 にフィルタークリーニングサインが点灯したので信号を解析してみた。

 結論としては IG-B20 の 4pin が、正常時 H, クリーニング点灯時 3V になることがわかった。電源電圧 4.6V との差 1.7V はおそらくクリーニングサインの橙 LED の Vf であり、スイッチ基板側には LED のみが実装されていて、ブリーダー抵抗が本体基板側に実装されている、と推察すると丁度辻褄があう(推定回路図参照)。

 もちろん、製品本体の制御マイコンのピンから直接信号を取り出せれば H/L のみで判定できてベストではあるが、コネクタから直接信号を取り出せるお手軽さは捨て難いので、PIC 側でこのピンの電圧を A/D 変換して測定し、3.8V より以上なら正常、3.8V 以下ならクリーニングサイン点灯、と判定することにした。

2010/10/18 追記:

 この仕様でフィルタクリーニング通知ができることを実際に確認 ^^v


割り込み処理

 今回は TMR0 割り込みを使って 1秒をカウントし( 8ms 割り込み x 125 回で 1秒)、それを 60回カウントして残り時間のカウントダウン処理を行っている。TMR1 + コンペア機能の方が正確なのだが、今回はそれほどの正確さは必要ないので、しがらみの少ない TMR0 を使用することにした。


製作

 信号を引き出す場所は前回のお手軽改造を参照のこと。今回は 2pin に加えて、フィルタクリーニング信号を 4pin から取り出している点が前回とは異なる。

 さて、いくら IG-B20 内部にスペースがあるといっても、ファンをある程度は塞いでしまうわけで、風量確保の点から追加回路は極力小型・薄型に仕上げることが望ましい。その点、トラ技付録コンバーター基板はコイルが小さくて薄く仕上がっており、基板サイズも小さく、出力電圧可変、12V 入力時 5V 700mA も取れるのでスペック的に丁度良い。

 一方、PIC 回路は 12 x 7 穴のユニバーサル基板上に製作し、裏面(ハンダ面)に絶縁テープを貼り、DC/DC コンバータ上にホットボンドで固定することで全体の厚みを抑えた。これをファンの前のスペースに押し込んだ。この時、配線がファンに絡まらないよう厚紙でファンと基板を仕切っておくと完璧(写真参照)。


今回の失敗

 試作一発目は何故か PIC がリセットを繰り返してしまい、製作失敗(逝)。ブレッドボードではうまく動作していたし、配線ミスも無かったので、おそらくは目視では判らない半田付け不良か、加熱のしすぎで部品を壊したか、のどちらかと思われる。んー、鉛フリーはんだ、思ったより手強い ^^; 早くコツを体得せねば。ハンダが流れにくいので、特にチップ部品とかハンダ付けしづらいんだよね ^^;


注意

 タイマ機能を有効にするには、少なくとも1回はアクセサリ電源を給電する必要がある点に注意。単に常時電源とアクセサリー電源を配線しただけでは IG-B20 は連続稼動のままとなる。もっともその場合でも過放電検出は有効なので、バッテリー上がりは防げる・・・・ハズ。タブン。なお、一度タイマが有効になってしまえば、以降は PIC の電源を切るまでタイマ機能は有効となる。

 ちなみに管理人は配線の都合上、実車でのタイマの動作確認を行なっていない(殴)。ブレッドボード上ではちゃんと機能していたので大丈夫だとは思うが、タイマーモードで車載される場合にはご注意あれ。

 あと IG-B20 2pin に接続するダイオードだが、今回は PIC 電源電圧 (5V) > IG-B20 電圧 (4.6V) となっている。念のため Vf の大きいシリコンダイオードを使った方が良いだろう。


懸念点

 IG-B20 はプラズマ発生ユニットの交換サインやフィルタクリーニングサインを出すために、総稼働時間を IG-B20 内の不揮発メモリに記録していると思われる。そこで問題なのは、どのタイミングでこのデータが更新されるか、という点。もし正規の手続き(IG-B20本体のスイッチで電源断)のみで稼動積算時間が更新されるのであれば、現在のように電源供給自体をカットして強制的に電源を切っていてはユニット交換やフィルタークリーニングサインが永遠に出ないことになるし、また逆に、IG-B20 が一定時間経過後に自動的に積算稼働時間データを更新してくれる場合は積算時間に齟齬は生じないが、たまたまデータ更新中に電源を強制的に切ってしまうとそれまでの積算時間がすっ飛んでしまうリスクも出てくる。

 そこでフィルタークリーニングサインが出た IG-B20 から AC アダプタを抜いて強制的に電源を切り、再度電源を投入してみた。するとフィルタークリーニングサインが再点灯したことから、IG-B20 はおそらく稼動中の一定時間毎にデータを不揮発性メモリに書いているものと思われる。よって、上記の「データすっ飛び」リスクは拭いきれないことになる ^^;

 一番の解決策は、電源切断も IG-B20 の電源スイッチをソフトウエアで操作し、正規の手順で電源を切ってやること。少なくとも常時電源とアクセサリー電源を接続している場合はこの対処も不可能ではないが、稼動中にヒトがマニュアルでスイッチ操作をする可能性とか考え出すとスイッチを常時監視する必要が出てきてプログラム的にかなり面倒なので対応は見送った。


最後に

 今回も、表面的には改造が成功しているものの、製品基板をちゃんと解析したわけではないので、上記の「稼動時間」絡みの不具合が出てくるかもしれない。繰り返すが、改造はあくまで自己責任で


プログラム

 改変自由。商用利用は厳禁。

Ver 2.1 (2010/10/18) asm & HEX ファイル
IG-B20_v2.1.zip


おまけ(改良のヒント)

 もはやトラ技付録 DC/DC コンバーターは入手難と思われるので、代替 DC/DC コンバータを参考までに紹介。

 2009/8 頃から秋月・秋葉原店の店頭のみで売っている 400円の DC/DC コンバーター(OER05SC1224)が小型、薄型で代替品としてお勧め(写真参照。2009/9/7 時点では店頭に残っていたが、いつまであるか・・・)。シャットダウン機能は無いが、DC/DC コンバーターへの給電を P-ch パワー MOS FET でスイッチしてやれば OK。ただ、PIC からの制御信号は通電時 L、シャットダウン時 H と一見都合よさげにみえるが、電圧レベルが異なるので FET の直接ドライブは不可。ゲートに 2V 程度のツェナーを入れてスレッショルド電圧にゲタをはかせるとか、ソースを書き換えて制御信号を反転し、デジトラを介して FET を制御する、といった変更が必要となる。ま、この DC/DC コンバーターが入手できなくても IG-B20 への内蔵を諦めれば他に選択肢はいくらでもあろう。

2008/10/20 追記: 単3電池(ニッケル水素電池でも可)を4本使用する純正電池パックが発売された。すなわち電源は 6V までは OK とメーカーが認めたわけなので、5V 出力の DC/DC コンバーターなら何でも OK ですね ^^;




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