【民芸館】全国郷土玩具バーチャルミュージアム


奈良県篇(1)ー2

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手向八幡宮の立絵馬
 手向八幡宮(奈良市雑司町)の社務所で授与されている、有名な絵馬です。
 「うないの友」6巻(大正2年刊)に、「奈良手向八幡宮社務所奉納古製絵馬額」として、現在授与されている絵馬とあまり変わらない絵が載っています。いかにも原始的な絵馬を思わせる形をしています。同じような形のものには、茨城県東海村の村松虚空藏堂の真弓馬(茨城県篇、参照)があります。
 「郷土玩具展望」上巻(昭和15年刊、有坂与太郎著)に、
「社記によれば、祭神品陀別命あつふさと称する愛馬を御し給うに依り、白馬を献りて晴を祷り給ひし古儀あり。後、絵の馬に改む。これらの由来ありて同社は絵馬の元始なりとす。領与されたるは明治三十年以降なれど、大江匡衛の色紙絵馬と関聯(関連)し、絵馬の発達過程を知る上に於て、絶好なる資料と云うべし」と記されています。
 また、この絵馬の馬は、雨乞(あまごい)の黒馬が描かれているようです。 




法華寺の守り犬と聖徳太子の尊像
 法華寺(奈良市法華寺中町)の古くからの授与品に「守り犬」があります。
土製の手捻りの素焼で、大中小の3種類があります。この守り犬は、すべて同寺の尼僧の手作りによるものです。
 模様の若松は、護摩木(松材)の灰が粘土の中に入っていることを、朱の五つの点は人間の五体を、(裏側に書かれている)山の文字は山内の壌土で作られたことを現わしています。
 聖徳太子の尊像は、最近は作られていないようです。  

鹿の巻筆
 奈良の伝統工芸の一つに美しい鹿の巻筆があります。毛筆を郷土玩具の中に入れるのは変だと思われる方があるかもしれませんが、収集家や研究者はこれらのものをも郷土玩具の範囲に含めています。
 筆の芯に神鹿の毛を用い、外を御幣にかたどり五色に染めた毛を上毛にして、柄の先には五色の紙飾りがついています。
 本来は春日大社でのみ使われていたものですが、それがいつか一般の祝事にも使われるようになり、この地方の嫁入りの花嫁道具の硯箱にもこの鹿の巻筆を入れるようになりました。

人形墨
 大同年間(806〜10)に、僧空海が唐から墨の製法を奈良に伝えたのが、わが国での墨の製造の始まりと云われています。そして筆と共に、墨も奈良の伝統工芸となりました。
 かっては、その伝統の技法を生かして、人形墨が作られていました。戦後一時期、わずかながら作られていましたが、今は廃絶しています。
 この人形墨の製造技法は、現在、三重県鈴鹿市に引き継がれて、同地の「玄泉堂」で作られています。(参照:三重県編・鈴鹿の墨人形)


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(1998.6.8掲載)