備前饅頭郎先生リサイタル最終日完全レポート



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(例によって上手階段上から登場した古林、バンドさんと丁寧なあいさつを交わしつ つ上手へ。マイクを渡す女性スタッフ、今夜は浴衣で登場。はにかみながら 渡す彼女の姿に古林ちょっとにやけ気味。ソデにハケる彼女の後ろ姿に投げキッス。 )

(ステージ中央に戻ると落ちている埃に下手のスタッフ(別人)を呼び寄せる。「な んだよこれは!」と言わんばかりの怒りの表情。つまんだ埃をスタッフの口にこじい れる。)

古林:どうもありがとうございます。ひとつ今 日は備前饅頭郎リサイタル、よろしくお願い申し上げます。(礼)

先生:(奥の扉から備前饅頭朗登場。顔に「 爺」の面をあて右手には紫の房のついた金色マイクを持っている。そのまま 上手へ移動。古林のあいさつの間にステージの縁まで行ってしまい落っこちそうにな っている)

古林:(大慌てで先生のところに走り引きずり 戻す)

先生:(そのまま下手へそして上手へ横歩き =タッチおじさん歩きともいう、をする)

古林:先生、本日は華麗なステップで。


先生:それでは笛を吹きます。(といいつつマイクを持つ手がブルブル震えているので声にビブラートがかかっている)(横笛を吹くポーズ)、ピー!

古林:先生、何なさってるんですか?

先生:何って、ここはどこなんだ?

古林:今日は先生のリサイタルじゃございませ んか。

先生:そうか。(ナマリつつ)本日はぁ佐々 木家鈴木家ご両家にとりましてぇ誠におめでたい日でございます。ご両家ならびにご 親戚方のますますのご繁栄を願いましてぇ…

古林:せんせ?何をおっしゃってるんですか?

先生:は?だからブライダルじゃないのか

古林:先生のリサイタルですよ。

先生:なんだリサイタルか。ブライダルか と思った。(1歩前へ)それではバンドの皆さん、よろしくお願い申し上げます。( 後ろを向いて)さぁみなさん(と言いつつ腰を振る)…

古林:(振り向かせ)先生、こちらが(タメ)お客さんです。

先生:あこっちか。…古林、立ち位置はどこ かな?

古林:その言葉を待っておりました。本日の先 生の立ち位置は、こちらとなっております!

先生:(古林の台詞の最中から上手へ移動) ここだな(ずっと上手でポーズ)(効果音:鼓の音、 ポン)

古林:先生、わざとやってるんじゃないでしょ うね。…本日の立ち位置はこちらでございます!

先生:そんなこと、先に言わなけりゃだめだ ろう。古林、おまえがちゃんとしなくちゃだめだろうが。

古林:(不本意ながら)申し訳ございません( おじぎ)

先生:(古林を見て)校長先生、すい ませんでした。うちのユーイチがガラス割っちゃって。(振り返りつつ)ユーイチこ っちへきて校長先生に謝りなさい。

古林:(ユーイチの頭をなでつつ)いいんだよ ぉユーイチくん。

先生:看護婦さん、こんなちっちゃい コップじゃあふれちゃいますよ。

古林:夜中に何か飲んだでしょ。

先生:(カブって)キャサリン、キャ サリンじゃないか。いっぱいついでくれ。

古林:(しなを作りつつ注ぐしぐさ)

先生:おっと、校長先生こんなところ でお会いするとは。看護婦さんこれじゃあふれちゃいますよ。(飲むしぐさ )やっぱりキャサリンのついでくれたビールはうまいなぁ。(後ろを振り返 りサックスに歩み寄る)奥さん、こんなところで。だんなさんにバレちゃいますよ。こんなおおっぴらに…

古林:(近づいては来るがなかなか受けの芝居 をしてくれない)

先生:一人ではつらいんだよ。早くしてくれ 。

古林:見てみたくて。

先生:苦しいんだよ(客席:爆笑)

古林:先生それはサックスという楽器です。

先生:できません、できませんって。

古林:ですからサックスという楽器なんですか ら。

先生:なんだ楽器か。

先生:古林、立ち位置はどこだ?

古林:こちらとなっております。

先生:古林、芸能界で大事なのは?…立ち位 置、順番…

古林:(先生の袖の下をくぐりつつ)そでのし た!…先生、今日はコンパクトにまとめようとおっしゃったじゃありませんか。

先生:(ポーズ)(効果音:鼓の音、ポン)

古林:それではバンドさん、おねがいいたしま す。

(イントロ、男同士始まる。♪やんちょ、やんちょの箇所、古林やけくそ気味)

古林:(歌中の台詞)どろぼうさんだぃ!(エ コー)

先生:あー回る、回るよ。どろぼうさんが、 あー!(よろけつつ奥に向かう。銅鑼に激突。)

(ガーンンンンン!)(大音量!)

古林:先生!大丈夫ですか? いつにない大音 量で…

先生:いたい。いたいよ。…おれぁ日本にい たいんだよ。(直立不動で敬礼!)お願いです、シベリアになんか出兵させねぇでください(古林の膝にすがりつく)お代官様ぁ、こんなに年貢米を召し上げられたらおらたちとても生きてはいけねぇですぅ。(立ち上がり)校長先生…

古林:(キャラが変わるたびに受けの芝居。腕 組みして足蹴にしたり)

先生:そこの段ボールはこっちに置いて。そ れからそっちのナガシバチ(長火鉢)はこっちへ。(古林: 運ぶ)それからサイドボードはこっちへね。( 古林:運ぶ)…そっちの段ボールはカーテンが入ってますから、あとで 私がやりますから(古林:右往左往)それと神 棚、神棚はサイドボードの上に置いて(古林: 運ぶ)パンパン!(二人揃って柏手)…それと湯飲みぃ(古 林:右往左往)はあとで私がやりますから。よし、引っ越し完了!

古林:先生、古林疲れました。

先生:(突然両手をだらりと垂らす)ジョー ! ノーガード戦法だ。

古林:力石徹!(正面を向いて、女声で)力石 くん、冷たいお水は体に毒だっていうからあったかいお湯を持ってきたわ。減量、が んばってね。

先生:(いきなりの側面攻撃にめんくらう)なっ、なんなんだ!おまえもなんか考えてきたな!

先生:(上手へ手を引きながら歩くしぐさで)奥さんこっち・・・亭主もちの女はスリルがあって・・・

先生:よいしょっと!…ユーイチ動物園行こ う。ほらキリンだよ。首が長いな。餌やってごらん。ほーら近づいてきた。(殴るふり)ヒャッヒャ。今度は カバ見に行くかカバ。お、口開けたぞ。でっかい口だな。ゆーいち入って遊んでこい (子供を投げるふり)。(受けるふり)戻ってきた。ぬるぬるになってるぞ。(半分 消化してんじゃないのか in 7/29) (客席を向いて)ユーイチほぉら、(客席に 向かって)皆さんこうやって(手を伸ばす、客席マネ)。ほらフラミンゴだよ。いっ ぱいいるな。今度はサル見に行くか。ほらサルがいた。

古林:(この間中央の階段に座って一服してい る。サルのキーワードでマネを始める)

先生:ほらなんか食ってるぞ。…(踊り出す )祭りは最高調。阿波踊りは楽しいな。

古林:(すっくと立って)たかし!最後の最後 までおまえは何やってんだ。とーちゃんの言うこときかないとねぎ食わすぞ!

先生:(赤ちゃん返り)ねぎキライなの。ボ ク。

古林:あ、赤ちゃん返りしてしまった。こんな ときは『秘技、赤ちゃん返りがえし』!(といいつつ「アブアブ」とひっくりかえり 赤ちゃん返り)

先生:(近づいていって叩く)おまえが赤ち ゃん返りしてどうするんだ。俺はブライダルがリサイタルでどっかに旅立っていく旅 人なんだ。自由人なんだよ、俺は! それを、おまえまで旅だってどうするんだ。汗 かいてるんだ!!早く家に帰りたいんだ。だいたいいつか言おうと思ってたんだが、 こんな面を着けてたら俺かどうかわからねぇんだから、べつに俺じゃなくてもいいん じゃねぇか。

古林:いや、先生でなければこの場は盛り上が りません。

先生:どこまでいったんだ?

古林:今までの状況をまとめさせていただいて よろしいでしょうか。(先生:うん)まずは 先生、ここは東京だという認識はございますか?(先生: ああ京都か。)いえ東京なんです。(先生:うん東京ね。(と言いつつよそ見))

古林:先生?話を聞いてください。で、楽屋で の打ち合わせでは本日先生には『男同士』を3番まで歌っていただくと、こういうこ とになっていました。

古林:それでですね、先生聞いてらっしゃいま すか?(先生:うん)それで「どろぼうさん だ」の「だ」のポーズのところで先生はどこかへお出かけになってしまいました。で すから絵的には帰ってきた状態からはじめさせていただきたいのですが。(先生:ふんふん(よそ見))今日の先生は手強いです 。…先生の十八番どろぼーさんだのポーズがございますよね。その『だ』のところか ら始めたいと思うんですが、よろしいですか?

先生:だ!のところね。そんときの扇の開き はこのくらいか、それともこのくらい、このくらい、こんくらい、こんくらいか(と 、どんどんポーズを変えていく)

古林:(一緒になってポーズを変える)

先生:古林とめなさい。

古林:先生、このポーズでおねがいします。

先生:こうだな(ポーズ)

古林:先生、よろしゅうございますね。そのま ま動かないでいてくださいよ。…それではバンドの皆さん、よろしくお願いいたしま す。

−『男同士』演奏復活−

先生:(演奏終了、おじぎ をする)

古林:どうもありがとうございました。これか らも備前饅頭郎、備前饅頭郎をよろしくお願い申し上げます。備前饅頭郎…

先生:(よろける)あー!目が、目が みえねえ。(倒れる)なんにも見えねぇ

古林:先生、大丈夫ですか(駆け寄る)。

先生:あーなんにも見えねぇ。あ、カラス が飛んでいく。(新国劇のような芝居がかった口調で)…古林、俺ぁも うだめだ。(古林:何をおっしゃいます先生。 )この備前饅頭郎は今日でお終ぇだ。古林、おめぇはこの俺に代わって明日っから古林小饅頭郎として全国津津浦々を歌って歩くのよぉ。(名前が間違っている ことに気づかず芝居を続ける先生)

(客席から期せずしていっせいに「えー!」の声。先生と古林、様子がおかしいので固まる)

古林:先生、ちょっと…(先生に駆け寄りマイ クをはずしてひそひそ話)

先生:(立ち上がり両手ではさみを入れるし ぐさ『ここカット』をする。また倒れて)俺ぁもうだめだ。明日っからおめえは2代 目備前饅頭郎として全国を歌って歩くんだ。名前は『備前小饅頭郎』。

古林:備前…(ものすごく長いタメ)こまんじ ゅーろう

先生:カメラ入ってると芝居がなげぇなぁ…デビー(=デビュー)曲はそうだな、今『孫』って ぇのがシット(=ヒット)してるから、『ごま』っ てぇのはどうだ。

古林:『ごま』…(さっきよりさらに長いタメ 、ついでに顔で見得を切っている)ですか。

先生:芝居がちっちぇんだよ…小さくても 大きなエナジーエクスキューズミー?

古林:小さくても大きなエナジー…。

先生:あ、あ、あー(すわったままの姿勢 でぴょんぴょん跳ねる)(倒れる)

客席:せんせぇ〜!

古林:(客席の反応を待って)先生〜! (駆け寄る)

先生:なんだよ!( 起きあがる)俺は今死のうとしてるんだから。いいとこなんだから、泣くと こなんだから。ひとりで死ぬから。…あっ、あー(倒れる)

古林:(ギターのところへ行きコンダくんと雑 談)このギター、木でてきているんですか? 弦6本もあって、ほんとすごいですね ぇ。等々

先生:あ、あー!…俺はひとりで死んでゆく 。今日おれは…(古林を見るが古林完全無視。業を煮やして尻に向かって扇子を投げ る。扇子古林の足下に飛ぶ)なんだよ。こっち見て、俺がここで死ぬから抱き起こし て『先生!』とかなんとか言って。(とかなんとか言いながら立ち上がる)

古林:すいません。(近づく )

先生:(ばったり倒れる)

古林:せ、先生ぇ〜! (絶叫、よろける)

(効果音:オープニングのダンサー登場時と同じ−チ ャンチャチャーン、チャ、チャ、チャ、チャーン− が流れる)

先生:(起きあがりながら )午後から尿検査があるんだった(置いてあるキックボードに乗ろう とする。がケーブルに絡まって動かない。しかたなく下手に走り去る)

古林:せんせぇ…

−【ごま】へ− イントロ部分で古林
「やはり当日になって仕込んでもうまくいかないものでございます」


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