最初のページに戻る
スイスの写真/ギャラリー目次へ戻る

スイスのアルバム

シルトホルン編

 五年ほど前の夏休み。三度目のミューレンは着いた日は小雨が降っていました。ラウターブルンネンの谷からは霧がわき上がり、白いガスの中にミューレンは煙っていたのです。
 小雨の中、雨合羽を着て少し散歩をしました。
 アルメント・フーベルに登るケーブルも空しく登って行きます。静かで、何とも心が落ち着いてきます。人の気配がほとんどない通りを、一年ぶりの再会を心に刻むように歩いていると、自分の足音だけが、人の気配を生んでいるのに気づきます。
 でも、これでは素晴らしい眺望は望めません。近くの店でビールと乾燥肉のスライスを買ってきて、ホテル・ベルビュー・クリスタルのベランダで文庫本などを読んで、時を過ごしました。このホテルははじめて来た時からいつも同じ部屋に通されます。
 そこがまた気に入っていて、また行くと、「やぁ今年も来たか」とマスターとマダムが出迎えてくれるのが、またうれしかったりするのです。

 翌朝、起きて散歩にでると、昨日のままミューレンは白い霧の中にありました。しかし、ずいぶん明るいので、これは晴れるかも知れないと、ブラブラ歩いていると、ちょっとした晴れ間から白銀の山が覗いていました。
 これはひょっとするとと思い、ホテルに帰ってテレビのお天気カメラの番組を見ていると、シルトホルン山頂は晴れ。白い雲海の上に逆光の三山が望める絶好の状態。すぐに朝食を摂り、出かけました。
 心配なのは霧が一気に晴れてしまわないかということだけです。

 ビルクでの乗り換えの時もまだ霧の中でした。「これはいけるぞ!」と乗り換えて、動き出すと霧の中を抜けて、快晴の空の下に出ました。
 振り返ると雲海にベルナーオーバーラント三山が浮かんでいました。

 写真を撮るのも忘れて、辺りの素晴らしいというか凄い光景に目を見張る瞬間です。同乗のインターナショナルなお客たちも歓声をあげるのも忘れて見入っています。
 息をのむというのは、こういうことなのですねぇ。

 すぐに山頂駅に着きました。辺りは昨日は雪だったようです。陽のあたるところでは、すこし融けだしていましたが、陰になっているところでは、歩くと雪の堅く締まった音が響きました。
氷柱も小さなものですができていたのには驚きました。
 三千メートルあたりでは、雨が雪になることも多いのだと思い知った次第です。
 尾根には雪がつもり、そこだけ見ていると初冬の南アルプスのような錯覚をしてしまいそうです。(とは言っても初冬に行ったことはないのですが)
 雲海に浮かぶユングフラウ、アイガーやメンヒ、遠くヴェッターホルンが、新鮮な感動をもたらしてくれました。
 次第に霧が晴れるにつれて、緑の谷が鮮やかに太陽の光を受けて輝き始めるのもまた、感動的でありました。このような風景を見せられると、人間の作るものというのは、なんてちっぽけな物なのだろうと、思います。
最初のページに戻る
スイスの写真/ギャラリー目次へ戻る
ミューレンのページへ
スイス音楽紀行/地域別インデックスへ