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楽聖たちの村、クララン

 クラランは、知られざるスイスの音楽の聖地ではないか、と思います。ストラビンスキーチャイコフスキーがここで作曲の日々を送り、大指揮者フルトヴェングラーの亡命後の生活の場となり、今もここには未亡人が住んでおられるのですから。
 長い間、通り過ぎるだけだったクラランに昨年(1999)の夏、訪れてみました。
 ここは観光地ではありません。駅を降りて坂道を登って行くと景色は広がりますが、どこかにチャイコフスキーとかストラヴィンスキーの名前があるわけではありません。
 歩いている人に尋ねても恐らく何も返っては来ないのではないでしょうか?
 少し高台の所まで登ると、モダンな教会(写真左)があります。その前の道路を挟んでベンチが置かれ、丁度良いレマン湖を望むテラスとなっていて、私たちが行った時もお母さんと小さな子供が散歩に来ていました。(写真下)
 恐らくはフルトヴェングラーもストラビンスキーも、チャイコフスキーも眺めた景色ではないでしょうか。
 晴れた日には、ここからはロショ・ド・ネイが眺められ、更にはレマン湖畔きっての名山ダン・デュ・ミディの美しい姿が湖面に映る様子が鑑賞できるはずなのですが、この日は曇り空で、見ることが出来ませんでした。ちょっと残念でした。
 このレマン湖畔には、チャップリンやオードリー・ヘップバーンという著名人が住んでいました。彼らに限らず、有名人がスイスに腰を落ち着けるのは、ここが著名人だからということで、パパラッチや週刊誌の記者やテレビのレポーターが騒ぐということが無い土地だからではないでしょうか。
 彼らを特別視することも無く、普通に隣人としてつき合う、仕事の上の事は仕事として、しっかりとした区分が存在するようです。
 フルトヴェングラーのお宅の前(実はどこか知らないので、探しようもなかったのですが)で写真を一枚、なんていうのは、スイスでは、というより大人の世界ではルール違反なのではないでしょうか。
 彼らの生活を覗き見るような、下品な週刊誌や、テレビのワイドショーはスイスには無いのだそうです。
 そんな国、街、村々だからこそ、彼らが安住の地としてスイスを選ぶのでしょうね。ヘップバーンのお墓があるということだけで、人が押し寄せるということは、スイス人にとっては不思議なことなのかも知れません。(とは言え、彼女のファンの一人として行ってみたい気にもなるのですがね。)
 しかし、落ち着いた村の佇まいは、実に印象的です。駅を出て登ると右側にモダンな教会と、高い所に古城があり、葡萄畑が広がっています。そして、その周りには、昔からの農家が立ち並んでいて、趣があります。
 逆に左手に行くと新興住宅街となります。
 静かな昼下がり、かつての楽聖たちが過ごした村の風景を眺めて過ごすのも、なかなか良いものですよ。いかがでしょうか?
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