The Other Side of Myself

 

3rd June, 2000

count

 

「では、ゆっくり、数を数えてください」

 

最後の数を数えるまでに、手術台からだって逃げ出すチャンスはあった

いくらでもあった。誰も強制してない。

でもわたしはつながれた羊みたいにおとなしく

されるがままになっていた

 

どうしてだ

そして、あきらめた

何度も何度も手を当てて、守ってあげると約束したのに

 

忘れるもんか

絶対に忘れるもんか

「私は卑怯にも、そんな事をするんだ」

そりゃ、いくらでも都合の良いようには考えられる

でも、自分のことだから本当は知ってる

乏しいながら、体力も気力もあったはずだ、それに

最後の数を数えるまでに、逃げ出すチャンスはいくらもあった

みすみす逃した

何のために?

 

そう、それが問題だ

何かのためかと思ったが、そんなものは何もない

どこを探しても出てこない

何も補ってはくれない

何があっても

誰が何と言っても

 

わたしの前にも、わたしの後にも、連綿と

今だって、数を数えて気を失うのを待っている馬鹿な女がいる

正気に戻る時に、何を最初に思うかっていえば

目を、覚まし、たく、ない

目を、覚ましたくない

目を覚ましたら、忘れてしまいたい

 

 

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