The Other Side of Myself

 

18th May, 2000

 

運の良い人と悪い人がいる。

それは運動神経が良い人と悪い人がいるみたいなものなのか。

わたしは明らかに運の良い人だった。運の良い人には、学習する機会が少ない。

不運を避ける用意がない。

逆に運の悪い人は、常に不運を避けるべく予め措置をするようになる。

人間関係では、技術の研鑽によってある程度、運の良し悪しをコントロールできる。

常々「自分は運が悪い」と言う先輩から教えられたことの中で

わたしが一番気をつけなくてならないのは「人のプライドを傷つけてはならない」

という原則だった。わたしにはプライドがないから特に危ないのだそうだ。

人によってプライドの持ち方も様々なので、この原則を守るにはまず

傷つけてはならないものは何なのかを見抜く洞察力が必要だ。

 

生まれた時から社会システム的に差別されてきたと思われるある国の偉い方からは、

「君はふたつの側面を持たなくてはならない」と諭された。

在日中のお世話係だったわたしにはとても穏やかで気さくに接してくださったが、

公的な場面では表情が変わり、何重にも丁寧で腰が低く、堅苦しく、頑固で笑顔を見せない。

どうしてそんなに極端に人が変わるのか、と尋ねた時のことだった。

「誰でもそうだが、はっきりと別のふたつの側面(ペルソナ)を持たなくてはならない。

ひとつは個人的な側面で、君も今のままで構わない。

もうひとつは社会的な側面で、常に注意し努力して作ったり守ったりしなくては

ならないのだよ。君にはそれが全然出来ていない。」

 

この示唆に富んだふたつの忠告は、きっちりと頭の中にしまわれているものの、

普段はからっきし忘れてしまっているのが残念だ。

 

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