これまで多くの悩みやトラブルがあったので、1999年の新労働者派遣法では、労働大臣(実際には公共職業安定所)が申告を受けて相談にのることになりました。
労働行政は、残念ながら、これまで派遣労働者に暖かく対応してくれたとは言えません。
「公共職業安定所でも、労働基準監督署でもまともに相手にされなかったり、キャッチボールされた」といった不満も聞かれます。
実際のところ、労働基準監督署だけでなく、公共職業安定所の職員でも労働者派遣法について詳しいことを知らない職員が少なくありませんので、助言できるはずなのに、知識がないために適当な助言ができていない例も目立ちます。
また、雇用保険など、派遣労働者にとっては制度が十分に適合していないものも少なくありませんので、誠実に対応しようと思っても、公共職業安定所の職員としてもどうしようもない、といった声も聞かれます。
しかし、新派遣法では、公共職業安定所への申告が法律の規定に盛り込まれました。
これまでの公共職業安定所の対応とは違う対応が期待できます。
これを積極的に活用する必要があると思います。
公共職業安定所への申告
とにかく、労働者派遣法の運用については、公共職業安定所(ハローワーク)が管轄です。
法違反の実態がありましたら、(1)の記録を示して改善をしてもらうように申告することができます。
また、公共職業安定所は、労働省の地方出先機関ですので、労働省の指針に従って派遣元、派遣先を行政指導してくれることになっています。(2)の派遣元、派遣先への指針にしたがった指導をするように、公共職業安定所に求めることができます。
とくに、1999年12月施行の新労働者派遣法(第49条の3)では、公共職業安定所〔労働大臣〕に労働者個人が相談を持ち込むことができることになりました。
(労働大臣にたいする申告)
第49条の3 労働者派遣をする事業主又は労働者派遣の役務の提供を受ける者がこの法律又はこれに基づく命令の規定に違反する事実がある場合においては、派遣労働者は、その事実を労働大臣に申告することができる。 2 労働者派遣をする事業主及び労働者派遣の役務の提供を受ける者は、前項の申告をしたことを理由として、派遣労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。 |
派遣会社の違法なやり方、不当な対応について、公共職業安定所に申告できます。公共職業安定所に申告することを派遣元に伝えて、派遣元との交渉を有利に進めることも可能だと思います。
ただ、公共職業安定所によっては個人の申告を真剣に受け止めてくれない可能性もあるかもしれません。その場合には、地域労働組合などに相談し、公共職業安定所として動かないこと自体が問題であるとして行政を社会的に包囲して派遣会社や派遣先に行政指導をさせるということも考えられます。
労働基準監督署への申告
派遣労働者の権利問題のほとんどは、労働基準法などの権利が守られていないことです。労働基準法違反がまかり通っています。労働基準監督署は、全国各地に配置されている国(労働省)の機関です。専門的な知識と特別な権限をもつ労働基準監督官が、労働者の保護のために相談と申告を受け付けてくれます。
賃金未払いなどの法違反があれば、強制力のある措置をとってくれますので、解決も早くなります。
とにかく、公共職業安定所や労働基準監督署は、派遣労働者の実際の申告がなければ改善になかなか動くことができません。とくに、規制緩和の動きのなかで、経営側の圧力もあって、労働行政としても違法の摘発が難しいのが実情ですので、できるだけ具体的な事実を示して申告することが必要です。
同じ派遣会社の派遣労働者で一緒に申告する人があれば、複数のうったえとなりより有力になります。
具体的に名前を出すのが難しければ、匿名の電話や手紙でもかまいません。確実に動いてくれるかは判りませんが、いくつかの訴えが重なれば、公共職業安定所も指導に動きやすくなります。
自治体の労政事務所・労働相談センター
大都市にお住いでしたら、労政事務所(東京・愛知)、労働センター(神奈川)、労働事務所(大阪)、労働福祉事務所(福岡)が、相談コーナーを設けており、会社にも働きかけてくれます。
とくに、東京地区にお住いか、勤務されているときには、都の労働相談などが実際の力になってくれます。
【東京都の労働相談】
http://www.hataraku.metro.tokyo.jp/sodan/rodosodan/index.html
*注 最近のいくつかの例では、労政事務所は担当者による対応の差が大きいと思われます。相談者をあきらめさせようとする回答者もいるようですので注意して下さい。
ただ、派遣110番としては、行政の相談活動には「限界」があることを指摘せざるを得ません。
できれば、地域で労働者個人の相談を受ける地域労働組合を通して、行政機関を活用するという姿勢が必要だと思います。行政機関だけに頼らず、労働者の権利を守るには、何よりも労働者自身の組織である労働組合であることを強調したいと思います。