公職選挙法に違反するアルバイト・派遣の防止について
派遣労働研究会、公職選挙法に違反するアルバイト・派遣の防止について
80大学へ広報活動の申し入れ

 1996年10月10日、民主法律協会・同派遣労働研究会は、公職選挙法に違反するアルバイト・派遣について、次のような申し入れを京阪神を中心とした約80の大学に送付しました。

 マスコミでも、問題点を十分に理解しないまま「選挙ビジネス」の横行を無批判に報道する例(朝日新聞『ウイークエンド経済』など)が目立っています。金のかかる選挙そのものに問題がありますが、研究会では、とくに、「労働者」が選挙違反で摘発される可能性を警告しています(『がんばってよかった』参照)。

 この度は、衆議院選挙が告示されたなかで、学生がアルバイトや派遣労働で働く可能性があると考え、関西の大規模大学あてに、下記の申し入れをしました。

申し入れ書

  公職選挙法に違反するアルバイト・派遣の防止について
        学生への広報活動のお願い

 衆議院選挙投票白(一〇月二〇日)が近づきました。
 貴大学の学生の皆様には、選挙事務所での投票依頼の電話掛けや車上での投票依頼であるウグイス嬢など選挙事務所でのアルバイト・派遣労働に就かれる方はありませんでしょうか。
 一般新聞紙上で「選挙産業大盛況」などといった記事が出されていますので、何の疑問ももたずに、こうした仕事に就いている学生が少なくありません。
 しかし、選挙活動には、無償の原則があります。電話による投票依頼行為の全てと、ウグイス嬢については、一定の場合(報酬額一日一五〇〇〇円が限度・氏名の選管への登録以外は、公職選挙法第二二一条の「被買収の罪」(三年以下の懲役若しくは禁固又は五〇万円以下の罰金)に該当します。
 選挙の度に摘発の記事が新聞に掲載されますが、一般には選挙事務所でのアルバイト・派遣労働が選挙違反に当たる場合があることが知られていないようです。
 そのため、違法と知らずに投票依頼のアルバイトで摘発され、罰金一〇万円、公民権停止四年の有罪判決を受け、受け取ったアルバイト料金額を追徴された母親(主婦)と、家庭裁判所送致となった未成年の娘さんの例があります。二人は、雇った派遣業者などを相手に慰謝料などの損害賠償を請求して裁判を起こしました。裁判所は、「違法と知らなかった者が悪い」と、二人の訴えを認めませんでした。
 この種の仕事は、派遣会社に雇われて選挙事務所に派遣されている例が多いのですが、労働者派遣法自体は、選挙活動を派遣の「対象業務」とは認めていません。派遣会社は、二重の法違反を犯し、かつ、多大な利益をあげているのですが、実際に、公職選挙法違反で処罰されるのは、行為者であるアルバイト・派遣労働者です。
 私たちは一〇年来、派遣労働者の権利擁護のため活動してきたものですが、以前からこの問題に注目し、労働省や選挙管理委員会への申入れ、新聞への投稿などにより、啓発の活動をしてきました。しかし、現在でも事態は改善されていません。
 大学および大学関係者の皆さまには、右の趣旨を是非ともご理解いただき、学生等が、選挙違反のアルバイト・派遣労働によって「犯罪者」にならぬように、広報に努めていただきたく、緊急に申入れをいたします。

        一九九六年一〇月一〇日
            大阪市北区南森町一−三−一五 同和衣料ビル
             民主法律協会
             民主法律協会派遣労働研究会
                代表 弁護士 渡辺和恵
              (お問い合わせは弁護士渡辺和恵
               〇六−六三三−七六二一宛にお願い致します。)
         大 学 御中


申し入れに応える大学についての朝日新聞記事 派遣労働者の悩み110番関連ホームページ(目次)
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