生保裁判連ニュース第5号 第5頁
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福岡で争われている二つの裁判は今・・・
                  弁護士 深堀 寿美



 中島訴訟の現状と課題

一、学資保険裁判中嶋訴訟は、現在、福岡高等裁判所第二民事部に係属中です。
 一旦は、三月に結審予定でしたが、裁判所の方から、事実関係についての釈明なりをもう少し検討させてほしいということで、結審が延びました。四月に裁判官が交代しましたので、六月六日に更新手続きをし、相手方提出の準備書面に対する反論及びこちら側の主張を整理した準備書面の陳述を行い、本件訴訟についての口頭弁論を行うべき準備中です。

二、本件訴訟については、実際に支給された保護費のやりくりをしていた母親の紀子さん、父親の豊治さんが相次いで亡くなってしまい、福祉事務所はケース記録を一切提出しないという方針を取っていますので、事実関係が十分明確になっていませんその中でこれまで弁護団では、明らかになっている数少ない事実をつなぎあわせて、原判決の不当性をついてきました。
 控訴審では、一審では十分でなかった本件世帯に関するケースワークにも焦点をあわせ、本件世帯が如何に生活保護法の趣旨に従った優良な保護世帯であったかの立証を行ってきました
 それでも、前記の通り、裁判官は事実が明らかでない点が不安のようです。
 そこで、一旦は結審を予定したものの、何とかもう少し事実関係が明らかにならないかと京都の弁護団とも協議した結果、ケース記録を綿密に検討することを考え、現在準備中です。

三、相手方提出の書面を読むと、「最低生活を割る生活を行政は容認することは出来ないから、本来の使途以外の目的には保護費は一切支出することは許されない。保護費を貯蓄に回すことも同様。」と、時代遅れ、常識をはずした論旨に終始しています。この主張の非常識さを裁判官に素直に理解してもらい、頑張った世帯としてほめられこそすれ、非難されることなど何もなかった本件世帯になされた不当な行政処分を取り消させることが出来るよう、力を尽くしたいと思います。

 増永訴訟の現状と課題

一、自動車裁判増永訴訟は、現在福岡地方裁判所第二民事部に係属中です。
 これまで、原告の保護費支給に携わってきたケースワーカf及び保護課長を尋問し、「被保護世帯は自動車を借用してはならない」という規制は、生活保譲法上、どこを探しても出てこないということを繰り返し、繰り返し、明らかにしてきました当初、弁護団の方で、この点に関する福祉事務所(大牟田市役所)の主張を明らかにするように求めてきましたが、相手方の証人尋問をほぼ終えた現段階においても、明確になっていません。つまりは、そのような規制を根拠づける法律上の根拠はないということです。

二、次回期日は、五月二七日午後一時一五分から、いよいよ原告本人尋問です。弁護団としては原告の本人尋問を終えても、「自動車を借用している」ということだけで、中学生を抱えた世帯の保護を廃止したという本件福祉事務所の処分が如何に生活保護法を無視した違法・違憲かつ冷酷なものであったかを、徹底的に明らかにし、福祉事務所のやり方を根本的に改めさせるべく力を尽くす所存です。

福岡・不服審査請求で”認容”
  あきらめずにたたかった甲斐があった


 生健会福岡東支部    梅崎勝

 「検診の結果、稼働能力があると認められた」ことを理由に、生活保護を却下され、不服審査請求を行っていました福岡市東区の田中俊子さんに、三月二六日付で、麻生渡福岡県知事から、田中さんの訴えを認め、「処分庁の請求人に対する保護申請却下処分を取り消します」との裁決書が届きました
 四月七日、福岡東福祉事務所は、この県知事の裁決にもとづき昨年六月二八日の保護申請にさかのぼり保護費を支給する保護開始決定を行ない、田中さんに支給しました。
 田中さんは、審査請求でたたかうとともに、保護申請却下後、再申請を行い、昨年一一月に三ヵ月分の保護費を支給させていましたが、二度目の勝利に、「本当に皆さんに支えられて頑張って良かった。保護が却下されたときは、どうしようもなく生活は大変でした。これでどうにかその時の借金が払えます」と喜びを語っています。
 福岡県で生活保護をめぐる審査請求で、審査庁である県知事が、審査請求人の訴えを認め、福祉事務所の決定を取り消したのは最近では初めてのことであり、泣き寝入りすることなく、あきらめずに最後まで、福岡東支部の仲間たちといっしょに審査請求をたたかった結果の全面勝利です。



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