名古屋・林訴訟の控訴審判決は
八月八日の予定 署名にご協力を!
藤井克彦(林訴訟を支える会)
不況と両足のけいれんもあって仕事につけず、一カ月近く野宿を強いられたのに、「稼働能力があるから保護の要件がない」とされたのは生活保護法違反だとして訴えた林訴訟は、昨年一〇月三〇日に第一審で全面勝訴の判決を勝ち取りました。
名古屋市当局が一一月一二日に控訴したので、今年三月から控訴審が始まりましたが、名古屋市当局の証人申請が却下され六月一二日に結審、八月八日午後一時判決となりました。判決に向けて署名運動を行います。短い期間しかありません。皆さんのご協力をせつにお願いする次第です。
名古屋市当局の恐るべき控訴理由
名古屋市当局側は控訴し、政府の代理人も四名つきました。控訴理由は、@判決は、林さんが重労働をする能力はなかったと認定したが愁訴のみからそのように判断するのは問題。A林さんが就労の意志を持っていたという認定は容認できない。B林さんが就労しようとしても就労する場がなかったとの認定は失当である、としています。
(一)生存権保障に反する主張
控訴理由では、福祉事務所が「稼働能力があるから保護の要件がない」として求職活動状況を確認しなかったにもかかわらず、林さんが怠け者であるかのように主張しています。また、生存権に反する立場から、体調の維持・管理における万全の努力、稼働能力の活用における万全の努力、自立的な生活を営むことに対する真摯な意思・意欲、自立のための真摯な就労意思などがなければ保護の要件がない、という主張をしていますこんな抽象的な基準では、その気になればどんな人でも保護の要件がないことにできます。しかもこの解釈は全くまちがっています。かつての救護法や旧生活保護法では、素行著しく不良な者あるいは就労を怠る者については、救護や保護を行わないと定めていましたが、現在の生活保護法では、生活困窮に陥った原因の如何はいっさい問わず、もっぱら生活に困窮しているかどうかという経済状態だけにして着目して保護を行うことにしているのですから。
(二)譲った「自立論」「正義・公正論」
また控訴理由では、「保護に要する経費は、国民の税金でまかなわれており、活用すべき余力があるのに保護が認められるのでは、正義・公正の理念にも反することになるし、受給者の自立が阻筈されることにも留意すべきである」としています。
小山進次郎氏も言うように、「自立の助長を目的にうたった趣旨は、そのような調子の低いものではない」。控訴理由は、まさに調子の低い「自立論」、誤った「惰眠防止論」であり、「正義・公正」論も含めて、保護受給を生存権としてではなく恩恵的なものとしています。そして、野宿の厳しさや不況の厳しさ、労働現場、飯場生活の実情などなど一切無視し、現実を踏まえないで、勝手な推測、机上の空論を主張しています。
このような主張により、生活保護を受けられるべき人が受けられず、餓死事件など様々の事態を引き起こしているわけですから、この主張が生存権を否定するものであることを控訴審で明確にさせ、勝訴する必要があります。
名古屋市民生局保護課長の証人申請認められず!
三月五日、四月二五日に控訴審の口頭弁論が行われ、名古屋市当局は、現在の民生局保護課長の証人申請をしました。しかし彼は、当時生活保護業務に当たっていたわけでもなく、林さんのことを全く知らないのですから、証人には採用されませんでした。慌てた名古屋市当局は、当時の保護課長などを検討しますと答えましたが、結局証人申請を断念しました。結局、六月一三日で結審となり、八月八日(金)午後一時判決となりました。
至急署名をお願いします
私たちは、内容的には控訴審でも勝訴することを確信していますが、裁判は判決が出るまでは予断を許しません。期間が短いですが、今回も署名運動を行います。
「保護適正化」という名の保護締め出し政策、そして恩恵的・救貧法的な保護行政を変えるためにも、林訴訟は重要な意味を持っています。ぜひ皆さんのご協力をお願いいたします。第一次締め切りは七月三日ですぐに提出しますので、大至急お願いいたします。その後は遅くとも七月二三日までに左記事務局までお送り下さい。署名用紙をお送りいただいた方には控訴審判決文をお送りしたいと思っています。
なお、第一審勝訴報告集が出ています。また控訴審の全記録も資料集(4)として八月に発行します。ご入用の方は、ご連絡下さい
(支える会事務局)
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TEL/FAX 052-671-6537 藤井
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