生保裁判連ニュース第5号 第2頁

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 C信義誠実の原則(信義別)違反について

 過去四年分の過払金の返還を余儀なくさせる処分については「著しく不当」「遵法」と判断しましたが、将来分の併給については併給調整規定が有効で合理性があるから信義則に違反しないとしました。信義則とは、相手方の信頼を裏切ることのないように行動すべきであるという原則のことです。
 判決は、事実認定では原告の主張を大筋で認めながら、結論を逆転させています。このことは、憲法二五条に関する広範な立法裁量の容認をはじめとし、憲法・法律の解釈に大いに問題があるからです。しかし、判決には評価できる点も多々あります。

 判決の意義と課題

 宮岸訴訟判決の意義は、まず第一に、過払金の内払調整、返還請求を違法と認めたことです。全国的に、過払いによる内払調整や返還請求をされている人々が数多〈存在していることが各地から報告されているので、この判決は極めて大きな意義をもちます。社会保険庁は、判決に従った対応をとらなければなりません。社会保険業務センターも、新聞の談話で「正当な判決」として、いわば過払金の内払調整・返還請求を違法と認めています。ただちに、現在行っている内払調整・返還請求を止めるべきです。そして、判決内容に沿って通達の改正を行うべきです宮岸訴訟弁護団・宮岸年金訴訟を支える会は、社会保険庁長官と金沢市の社会保険事務所にそのような申し入れをしています。それでも、内払調整や返還請求をされた場合は、この判決が問題解決の武器になるでしょう。また、立法の課題としては、行政の過ちによる過払金に対して内払調整や返還請求ができない旨の規定を盛り込む必要があります。

 第二に、判決は、「障害と老齢という複数の保険事故によって、稼得能力の低下ないし喪失につき何らかの加重があること自体は優に推認できる」「障害は稼得能力の喪失、低下の原因となるのみならず、障害に起因する特別の出費の原因となっている」と認定したうえで、「立法論として老齢及び障害による加算類型を設けることが検討され得る」としています。国会は、判決に沿って立法を改正又は立法を行い、老齢加算.障害加算を設ける必要があります。また、そのような改正を求める運動が重要です。

 第三に、生活保護制度について「補足性を前提とする要保護性の調査・確認のために個人の尊厳、自立性を害するおそれが常に存在する」と制度のもつ不可避的な問題点を認めています。さらに、運用について、「現在の生活保護行政下では資産調査が必要以上に厳格に行われ過ぎているとの指摘がつとにされていること、右調査の萎縮的効果により要保護者の申請自体が困難となるとして、これを福祉事務所による『水際作戦』と称して批判する向きもあることが認められる」として、生活保護制度の運用改善の必要性を指摘しています。行政機関(福祉事務所)は、判決の指摘を謙虚に受けとめ「補足性を前提とする要保護性の調査が個人の尊厳を侵害し、あるいは保護の必要ある者から保護の機会を奪うような結果とならないように」保護行政の運用を改善しなければなりません。

 第四に、ミーンズ・テストを伴わない制度による保障の意義を認めたことです。生活保護以外の制度、社会手当による最低生活保障は、「経済的に繁栄した国家の理想であって憲法二五条の目指す方向にも一致する」と述べています。経済大国日本における社会保障の進むべき方向として、今後、社会手当制度や年金制度を充実させることが、国会に要請されています。

 第五に、社会保障法上の各条項が憲法二五条に適合するか否かの判断基準について、「国の財政事情のみを過度に強調することは相当ではない」と判断したことです現在国会で審議されている医療保険「改革」法案は、医療保険財政の危機を理由に被保険者の自己負担率の引上げ(二割〉など、制度の引下げを内容としています。判決は、そのような財政事情のみを過度に強調した制度の引下げに対する歯止めとなるものと言えるでしょう。

 第六に、改正に改正を重ねる年金制度の複雑さを指摘していることです。分かりやすい年金制度への改正が国会に求められています裁判の控訴と訴訟支援のお願い 原告の請求した年金の併給調整処分の取消し自体は全く認められなかったので、原告側は三月一〇日に東京高裁に控訴しています。控訴審で訴訟を大きく前進させるためには、もう一回り大きな運動が必要です。そのためには、多くの人のご支援が是非とも必要ですその点をご考慮していただき、是非とも「宮岸年金訴訟を支える会」へのご入会とカンパをお願い致します。詳しくは左記までお問い合わせください。

 裁判の控訴と訴訟支援のお願い

 原告の請求した年金の併給調整処分の取消し自体は全く認められなかったので、原告側は三月一〇日に東京高裁に控訴しています。控訴審で訴訟を大きく前進させるためには、もう一回り大きな運動が必要です。そのためには、多くの人のご支援が是非とも必要ですその点をご考慮していただき、是非とも「宮岸年金訴訟を支える会」へのご入会とカンパをお願い致します。詳しくは左記までお問い合わせください。


宮岸年金訴訟を支える会(連絡先)

〒 920 金沢市大手町九番二九号   北尾法律事務所
    弁護士 橋本明夫まで    TEL0762-31-1800
                  FAX0762-31-5985
会費:個人入会金(年会費)   一口1000円   (何口でも)
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