updated May 1 2000
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3317. 契約終了と雇用保険の離職理由  退職後の失業保険の給付手続きについて派遣会社に問い合わせたら、契約終了後の退職は、会社都合とみなされ、待機期間なしで失業給付を受けられるけれども、派遣先での就業期間が終った後も1ヶ月は、派遣会社としては会社都合で退職させたとはみなさないので、失業してから1ヶ月後にしか離職票を発行しないといわれました。実際には就業していなく、収入もないのに、雇用が終了したとみなしてもらえないのは、法律的には問題ないのでしょうか?
   雇用保険制度を悪用した派遣会社に共通する運用です。派遣労働者にとっては苛酷な対応だと思います。実際に対抗するには、会社と対決することも必要になります。

 派遣先と派遣元との労働者派遣契約が期間満了で終了すれば、登録型派遣の場合には、派遣元と派遣労働者の間の労働契約も終了するのが建て前です。会社がいう1ヵ月の「待機」という意味が理解できません。「待機」について、派遣元と特別の契約(合意)や就業規則に関連した規定がないか確認して下さい。「待機」の法的意味(当事者の権利・義務)を徹底して明らかにする必要があります。

 雇用保険との関連で、派遣元は、離職票を退職後10日以内に交付することが義務づけられています。それに反して、1ヵ月間は離職票を交付しなければ「離職」の手続がとれません。もし、「待機」させるのであれば、派遣先での 就労が終わっても、派遣元との労働契約は待機期間中は継続していると考えられます。他方、派遣元が、健康保険の被保険者証の返却を求めるのは、派遣元との労働契約が終了することを前提にしています。つまり、雇用保険の関係では1ヵ月間、離職を認めず、逆に、健康保険では契約終了を前提に保険証返還を求める派遣会社の言い分は明らかに矛盾します。

 たしかに、労働省(公共職業安定所)は、登録型派遣労働者の場合、派遣先との関係が切れても、すぐ次の派遣先が見つかる場合があるとして、簡単に「失業状態」を認めない運用をしているようです。つまり、登録型派遣労働者の場合、一般の「離職証明書」にあたる「労働者派遣終了証明書」を1ヵ月程度経過して、派遣先が見つからないときに提出するように指導しているようです。

 他方、雇用保険の制度では、「自己都合」退職であれば、失業給付を最長3ヵ月も支給制限される可能性があります。
 この1ヵ月経過後の「労働者派遣終了証明書」と「自己都合退職」を理由とする支給制限を悪用して、派遣会社は、労働者を1ヵ月待機させ、その期間に不利な条件の仕事でも引き受けさせようとしているのだと推測します。
 労働者を1ヵ月の間、「待機」という名目であれ、拘束する以上は、労働契約が継続していることになります。その期間も使用者としての義務を派遣元は果たさなければなりません。つまり、賃金全額を支払い、健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの使用者の保険料負担をしなければなりません。こうした負担なしに、労働者を「待機」という名目で拘束することはできません。労働者には大きな不利益を押しつけておいて(賃金なし、雇用保険の支給制限、健康保険なし等)、派遣元には好都合に労働者を待機(拘束)できる(賃金支払なし、健康保険なし、労働者拘束)ことは均衡を失しており、法的にもありえません。

 労働者としては、待機期間中、条件の悪い仕事に応ずる必要はありません。適当な仕事を紹介するように請求できます。それがなければ派遣会社に賃金全額を求めることができます。また、健康保険・厚生年金保険などの使用者負担を求めるができることになります。

 待機ということで離職票を発行してくれなかったり、離職理由を自己都合退職とするのであれば、逆に、派遣元は労働者を拘束することになります。労働者は、実際に仕事をさしていなくも賃金全額(少なくとも、労働基準法第26条に基づく休業手当(平均賃金の60%)を請求できます。したがって派遣元との労働契約が継続しますので、健康保険の被保険者証も返す必要はありません。

 会社に右のように主張すれば、離職票を発行すると思いますが、それでも1ヵ月の待機期間中の賃金などを請求すればよいと思います。

 なお、派遣先からの労働者派遣契約中途解約の場合、派遣元との労働契約は継続します。この場合、残り期間の派遣元の雇用責任を追及することが重要です。最低でも、休業手当を支払わせることが必要です。

 労働省の指針でも、派遣先から派遣元への損害賠償を求めています。労働者としては、派遣元の雇用責任を曖昧にせず、きちんと追及して下さい。そうでないと、逆に、派遣先の勝手な都合での労働者派遣契約中途解約なのに、労働者が自ら退職したという扱いにされ、損害賠償や休業手当も受けず、雇用保険も「自己都合退職」とされ、二重に不利益を受けることになってしまいます。

 要するに、雇用保険の制度が登録型派遣労働者にとってはきわめて不適合であり、労働者には不利な運用がされていることを十分に理解して下さい。派遣元の雇用責任を追及して下さい。派遣元が雇用責任を果たせないことを明らかにしてください。そうすれば、雇用保険の受給についても、不当な支給制限を受ける可能性が少なくなると思います。

 なお、労働者派遣契約中途解約に関連する項目をご覧下さい。
 2340. 派遣先が労働者派遣契約を途中解除したが、解雇されますか?
 2350. 派遣先が、「もういらないから辞めて貰いたい」といいだし、派遣会社から時給60%の休業保障が出ると言われました。どうして解雇手当にはならないのか、納得が出来ません。
 中途解約の際に休業手当の周知徹底(朝日新聞 1999.11.21)
 読者発 派遣労働者問題 対談・脇田氏、岸本氏(朝日新聞 99.11.22)
 労働者派遣契約中途解除関連・相談回答例(FAQ)

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