updated Dec. 24 2000  派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)
 質 問 と 回 答 例 (F A Q)

2340. 派遣先が労働者派遣契約を途中解除したが、解雇されるのか?

期間の途中で派遣契約を打ち切られ、派遣先から 「明日からもう来なくてよい」といわれました。賃金はどうなるのでしょうか? 派遣元との契約期間が残っているのですが、次の派遣先を見つけることにしたほうがよいでしょうか。?


 まず、派遣先からの「明日からもう来なくてもよい」というのは「解雇」ではないことを再確認して下さい。間違ってはいけません。決してあわてないで下さい。
 大切なことは、派遣元に雇用責任をとらせることです。解雇と早とちりして、解雇予告手当を請求しないで下さい。まだ解雇ではありません。
 とくに自分から諦めて「退職」をして、すぐに別の派遣会社での派遣就労を考えないで下さい。派遣会社の責任を追及する手掛かりがなくなってしまいます。本来であれば受けられる権利をすべて失うことになりかねません。


 派遣労働者は、派遣元との間に雇用契約(労働契約)関係がありますので、派遣先からの受入れ拒否があっても、直ちに派遣元から労働契約(雇用契約)を一方的に打切られることになりません。この点をしっかり認識することが必要です。


 常用型労働者派遣の場合はもちろん、期間を定めた契約である登録型労働者派遣の場合であっても、派遣元は派遣労働者との間で締結した労働契約で定めた契約期間は、派遣労働者を雇用継続する契約上の義務を負っています。基本的には、派遣元が派遣先から労働者派遣契約契約打切られて派遣就業の継続ができない場合であっても、派遣元の責任として、別の就労先を派遣労働者に紹介して雇用を継続するか、契約期間中の賃金保障が必要です。


 派遣元は、派遣先の一方的な契約解除に対して契約違反の責任を追及して、損害賠償などを請求することができます。派遣元は、派遣労働者を別の派遣先を紹介して就労継続をはかるなど解雇を回避する努力義務があります。そうした努力なしに派遣労働者にだけ負担を強いるかたちで解雇をすることは解雇権の濫用と考えられます。
 とくに、登録型労働者派遣の場合、派遣元は、契約した期間について労働者を雇用継続する義務を負っています。労働者は、派遣元事業主の「責に帰すべき事由」によって就労できなかったときには、その期間中の賃金全額を派遣元に請求することができます(民法第五三六条第二項但書)。少なくとも、労働基準法第二六条は、天災などを除き、「使用者の責に帰すべき事由」による休業については平均賃金の六割の手当を保障していますので、派遣元に対してこの休業手当を請求することができます。

 現実に、派遣元は、労働者派遣契約を一方的に打ち切る派遣先に対して強い態度で責任追及や損害賠償を求めることをせずに、最も弱い派遣労働者にしわ寄せをして、派遣労働者を解雇する事例が多く現れました。こうした労働者派遣契約終了前に派遣先が一方的に派遣を打切る「中途解除」の問題は、派遣をめぐるトラブルのなかでも弊害の目立つものでしたので、一九九六年の労働者派遣法改定のときに、法律改正を含めて一定の改善措置が導入されています(同年一二月から施行)。

 その結果、労働者派遣法第二六条が改正され、派遣先からの一方的な契約解除に対して派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を労働者派遣契約に記載することが義務づけられました。派遣労働者に対する就業条件明示書でも、「派遣契約解除の場合の措置」を明らかにすることが義務づけられています。

 また、労働省は、「派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成八年労働省告示第一〇二号)のなかで、派遣先に対して、「労働者派遣契約の解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置」として、次の三つを指示しています。

 まず、「(1)労働者派遣契約の解除の申入れ」として、派遣先が、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の期間満了前に解除を行おうとする場合には、派遣元事業主の合意を得るだけでなく、相当の猶予期間をおいて解除の申入れを行うことが必要です。

 次に、「(2)派遣先における就業機会の確保」として、派遣先は、労働者派遣契約の期間満了前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由で契約解除が行われた場合には、派遣先関連会社での就業あっせん等により、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることが必要とされます。

 さらに、「(3)損害賠償等に係る適切な措置」として、派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約を期間満了前に解除しようとする場合には、契約の残期間や派遣料金等を勘案しつつ、派遣元と十分に協議した上で適切な善後処理方策を講ずることが必要となります。また、派遣元・派遣先双方に責任がある場合には、派遣元・派遣先のそれぞれの責任割合についても十分に考慮することとされています。

 ご相談の場合、就業条件明示書に記載された派遣契約解除の場合の措置の内容を確かめて下さい。労働省指針に基づく内容が記載されていれば、派遣先は、相当期間をおいての予告の義務、関連会社への派遣紹介の義務、派遣元への損害賠償の義務を負っていますので、派遣労働者としては、派遣元に対して残期間中の賃金全額の請求や派遣先の関連会社への紹介を強く求めることができます。
 派遣元や派遣先が、こうした責任を取ろうとしないときには、労働省の出先機関である公共職業安定所に事情を説明して、改善をするように指導を求めて下さい。右の指針に従って行政指導をしてもらうことができます。


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