updated Oct. 1 2000
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3076. 土曜出勤と休日出勤手当  私は人材派遣(従来の26業務)で働いています。質問したいのは休日出勤手当ての件です。10月から派遣の仕事が決まりました。1年半ほどの長期の仕事で、やりがいのある仕事なので多少条件が悪かったのですが、引き受けました。
 最終の企業との面接も終え、その場で就業がきまりました。契約としては月曜日から金曜日、9時10分から5時半となっていたので時間外及び休日出勤手当ては時給の1.25倍と思っていました。
 しかし、就業が決まってから知らされたのですが、その派遣会社は休日出勤手当てとしてもらえるのは法定休日の日曜日だけで、土曜日と祝日は通常の就業日扱いだと言われました。かなり忙しいプロジェクトで、休日出勤(土曜日)はかなりの日数があると思われます。
 私としては、契約の就業日以外は休日出勤に当たると思うのですが、休日出勤手当てはもらえないのでしょうか?
 競合している他の派遣会社は土曜日も休日出勤手当てを支給する会社です。同じ仕事をするのにそのような格差があってもいいのでしょうか?
 ましてや、残業や休日出勤は私達の体を酷使してでも責任を果たしたいという気持ちで働いているのに、何の苦労もせず私たちの残業代までも搾取されているかと思うと本当に納得がいきません。

 

 労働条件の文書による確認

 まず、労働条件の決定は、当事者(派遣元と派遣労働者)の間の合意が優先します。 労働基準法などの法律は最低基準しか定めていません。雇入通知書、就業規則、就業条件明示書などが、総合されて当事者の間で労働条件を定める労働契約があると考えられます。
 この労働契約(当事者の合意)にかかわる文書を確認して下さい。
 ご相談の「休日出勤手当」についても、当事者の間の合意が優先します。
 「私としては、契約の就業日以外は休日出勤に当たると思う」と言うことですが、合意の問題です。契約の相手方である派遣会社が「土曜日と祝日は通常の就業日扱いだ」と言うのですから、本来の労働者と使用者の間の契約(合意)が何かを確定することが必要になります。
 あなた(労働者)が、「契約の就業日以外は休日出勤に当たる」「休日出勤には割増手当を支給する」ことを契約内容に盛り込むことを求め、相手方(派遣会社=使用者)がそれに応じていたとすれば、それが労働契約の内容になります。
 契約の文書がなくても、労働契約は成立します。しかし、後で使用者が、そんな合意はなかったとシラをきったときに、労働者としては合意の存在を証明するのに困ります。
 そこで、労働基準法は、重要な労働条件については文書による明示を義務づけています。また、派遣就業をめぐっては、労働条件の合意をめぐるトラブルが多いので、労働者派遣法では、就業条件の明示を義務づけています。また、就業規則については、労働基準法で労働者への周知義務があります。詳しくは、FAQ3002をご覧下さい。
 「賃金の決定や計算方法」は、文書で交付することが労働基準法第15条で義務づけられています。
 派遣会社の言い分を鵜呑みにせず、契約書などの文書で土曜出勤についてどのように規定されているかを確認して下さい。

 土曜出勤手当

 もし、当事者の間の合意(契約)が明確でないときや、その合意の内容が労働基準法などの最低基準を下回るときには、労働契約の当該部分は無効となり、労働基準法の定める基準によることになります。

 ご相談の場合、土曜出勤について当事者の間の合意を明確にすることが必要ですが、もし、合意がないか文書などがなく不明確であれば、最低基準である労働基準法の規定等によるしかありません。

 労働基準法第35条で
 「使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
 2 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。」
 と規定しており、週1回の休日だけを法定休日としています。
 たしかに、週休2日制で、土曜日、日曜日が「休日」になることが多いのですが、法定休日としては、原則として週1回の休日になっており、この法定休日に労働させるときには、労働基準法第37条等に基づいて割増賃金(35%以上)の支払が使用者に義務づけられます。

 したがって、週休2日制の場合、日曜日が休日として休めるときには、土曜日に出勤しても労働基準法第37条の「休日労働」にはなりません。したがって、労働契約や就業規則などの会社の規定がとくになければ、労働基準法第37条の休日労働への割増賃金(35%以上)の支払を使用者に求めることはできません。

 1日8時間を超えれば、法外時間外労働となり、割増賃金(25%以上)が必要ですが、もし、どの日も1日8時間を超えないとしたら、労働基準法第37条に基づく割増賃金はありません。
 しかし、土曜出勤をしたとき、週単位の40時間という労働時間の上限を超えて働くことになれば、割増賃金(25%以上)の支払が義務付けられる場合があります。

 (場合A)ご相談の場合、1日の労働時間が9時10分から5時半までということです。休憩時間が示されていませんが、かりに休憩が1時間とすれば、1日の所定労働時間は7時間20分となります。月曜日から金曜日まで毎日働けば、合計で36時間40分となります。この場合、もし、土曜日に出勤して3時間20分を超えて働けば、その週の労働時間は、合計で40時間を超えることになり、その超えた時間は法外残業となりますので、割増賃金(25%以上)が必要となります。

 (場合B)もし、1日の所定労働時間7時間20分を上回って、月曜日から金曜日まで毎日8時間働けば1日については8時間を超えません。しかし、週単位では40時間になりますので、土曜日に働く労働時間は、法外残業となりますので、使用者(派遣会社)は、労働基準法第37条による割増賃金(25%以上)を支払う義務があります。

 たしかに、休日出勤の場合の割増賃金(35%以上)よりは少ないとしても、週単位の時間外労働ですので、割増賃金(25%以上)の支払を求めることはできることになります。

 土曜出勤の義務

 以上は、土曜出勤をめぐる割増賃金についての考え方です。
 要するに、(1)当事者間の契約を文書類を調べて確認すること、(2)労働基準法では週1日が休日となっていること、(3)土曜出勤は、週40時間を超える時間外労働になり、割増賃金(25%以上)を請求できる可能性があることがポイントです。

 しかし、もっと重要なことは、「土曜出勤」は契約による就業日外ということです。そうしますと、「休日出勤(土曜日)はかなりの日数がある」とされていますが、契約上は労働者としては土曜出勤の義務を負わないと推測します。

 契約日以外の日の出勤を派遣先が命じるには、それなりの契約上の根拠が必要です。さらに、労働基準法は、休日労働だけでなく、週40時間を超える残業を原則として禁止しています。法定の時間規制に反する時間外労働を命ずるには、(1)労働基準法第36条に基づく労使協定(いわゆる36協定)が派遣元で結ばれていること、(2)それが労働基準監督署に届出られていること、(3)上限が協定で一定の基準以下になっていること、(4)雇入れ通知書、就業規則だけでなく、就業条件明示書でも労働者に示されていることが必要です。割増賃金さえ支払えば何時でも時間外労働や休日労働を命じることができる訳ではないのです。この点をしっかりと認識して下さい。

 そうしますと、土曜日が、契約した就業日ではないというのであれば、土曜出勤を命ずることについて、当事者(派遣労働者、派遣元、派遣先)には、特別な契約上の根拠が必要です。こうした土曜出勤を命ずる明確な根拠がなければ、派遣先は、派遣労働者に土曜出勤を命ずることはできません。派遣労働者は派遣先の出勤命令に応ずる義務はありません。この点を改めて確認しておいて下さい。

 しかし、土曜出勤については、契約上の根拠や36協定・就業条件明示書の規定がないことを理由に出勤を拒否することができます。「休日出勤(土曜日)はかなりの日数がある」ということですので、自分の都合が悪いときには拒否すれば、派遣先や派遣元は土曜出勤を促すために、競合他社のように土曜出勤手当支給という条件改善を示さざるを得なくなります。

 事前面接の禁止

 ご相談にありますように、派遣先との「事前面接」やいくつかの派遣会社から「候補者」を「競合」させることは、実際に広がっている慣行です。
 しかし、99年改定の労働者派遣法でも、「派遣先による労働者の特定行為」として禁止が確認され、次のように努力義務が明確にされました。  「第26条(契約の内容等)第7項 労働者派遣の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。」
 とされています。FAQ22702272参照。

 弱い立場の派遣労働者として問題提起は難しいのが現実ですが、もし、限度を超えたり、何か他に問題があるときには、事前面接をした派遣先やそれに協力した派遣元には、法違反や労働省の指針違反の責任を追及することが可能です。この点をしっかりと認識しておいて下さい。

 問題の解決

 実際には、派遣労働者という弱い立場ですので、個人では派遣元や派遣先に強く対抗することは難しいかも知れません。できれば、雇用を守りながら、労働条件の改善ができればベストです。そのためには、労働者自身の連帯しかありません。地域にある派遣労働者の問題に取り組んでくれる地域労働組合に相談するか、派遣労働者の労働条件改善を自らの問題として受け止めてくれる派遣先従業員の労働組合があれば、その援助を受けて、派遣元や派遣先と交渉することが可能です。現実には、地域労働組合に相談して労組を通じての交渉で問題を解決する事例が増えています。

 「土曜出勤手当」がないことなど労働条件(したがって派遣料金)が低いことが、派遣先の派遣元を選ぶ理由になっているとしたら、ご指摘のように「競合」や「事前面接」の目的は社会的に不当ですし、その違法性がより加重されることになると思います。

 派遣元や派遣先が法に違反しているときには、公共職業安定所や労働基準監督署を通じての救済、行政指導、違反取締り等を求めることができます。こうしたアクションも、個人では時間や経験がなく、難しいかも知れませんが、地域労働組合のバックアップがあれば十分に可能です。問題のある企業や慣行が広がらないように、迷わず、地域労働組合などの援助や行政機関の活用を考えて下さい。

 本来なら、働きながら労働条件を守ったり、改善を求めることが労働者の権利として当然です。しかし、派遣労働者は、不安定雇用という難しい立場にあります。もし、条件がなくて、すぐに問題提起が難しいときでも、法的には賃金請求権などは時効が2年です。就労などの明確な記録を残しておけば、契約が終了してから争うことも不可能ではありません。いざというときのために、信頼できる身近な地域労働組合や行政機関の連絡先など色々と調べ、また、派遣元や派遣先の対応や発言などは細かく記録を残すようにして下さい。

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