updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3040. 2 仕事の内容が違う  派遣元に本登録し、派遣先を紹介され、6カ月間の契約で就業し、現在7日目なのですが、派遣先の業務内容が、自分の考えていた業務内容と若干ズレており、すぐにでも契約解除したいと思っています。それは可能なのでしょうか?
 可能な場合、どのような手順をふめば良いのでしょうか?また、たとえば違約金などのペナルティー要素はかかってくるのでしょうか?早急に回答をいただければと思っております。

 (53頁) 【知って得する権利手帳Q1】 類似項目参照
 派遣先での仕事の内容や労働条件が、事前に考えていたのとは違うという、トラブ ルや相談は、派遣労働関係で一番多いものです。

 労働者は、自分が合意していない仕事を無理矢理にしなければならないという義務 はありません。

 法律的には、労働契約・就業条件明示書と実際の労働条件が違うことから、派遣元 との労働契約を解除することができます(労働基準法第15条第2項)。

  労働基準法は、第15条で、労働条件の明示を定めています。
 そして、15条第2項では、
 「前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、
  労働者は、即時に労働契約を解除することができる。」としています。
  それどころか、第3項では、
 「前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14
  日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければ
  ならない。」
  と定めています。

 つまり、いい仕事だという、うまい話で、実際に働いてみたらとんでもない悪い仕事や労働条件であったとき、労働者は、契約を解除できるわけです。しかも、仕事をするために旅費を使ったりしたときには、それも返してもらえることを保障しています。

 派遣の場合、間に、派遣元が入りますので、この問題が余計に大きくなります。
 そこで、労働者派遣法は、こうしたトラブルを防ぐために、特別に、派遣元と派遣先に、いくつかの法的責任を定めました。

 まず、労働者派遣法は、派遣元に、派遣先での就業条件を詳しく明示する義務を定めています(労働者派遣法34条)。

 労働者派遣法第34条(就業条件の明示)

 派遣元事業主は、労働者派遣をしようとするときは、あらかじめ、当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、労働省令で定めるところにより、その旨及び第二十六条第一項各号に掲げる事項その他労働省令で定める事項であつて当該派遣労働者に係るものを明示しなければならない。
 

 しかも、「書面の交付」を義務づけています。

 この就業条件についての書面(書類)を調べ下さい。なければ、重大な法違反です。
 明示しておかなければならいない、事項は次のとおりです。

 1.派遣労働者が従事する業務の内容
 2.就労する派遣先の事業所の名称、所在地、就労の場所
 3.派遣先で、就労を指揮する者の氏名
 4.労働者派遣の期間及び派遣就業する日
 5.派遣就業の開始・終了の時刻および休憩時間
 6.安全衛生に関する事項
 7.苦情の処理に関する事項
 8.派遣契約解除の場合の措置(以上、労働者派遣法第26条1項)
 9.派遣元責任者に関する事項(労働者派遣法施行規則第22条)
10.派遣就業日以外の就業や時間外の派遣就業ができるとした場合の当該の日
   又は延長できる時間数(労働者派遣法施行規則第22条)
11. 派遣先が派遣労働者に対し、診療、レクリェーション等に関する施設又は設備の
   利用、食堂の利用、制服の貸与その他の派遣労働者の福祉の増進のための便宜を
   提供する旨の定めを労働者派遣契約において行った場合にはその定め
 口頭での指示や約束だけですと、契約内容を変更するといったことが多いので、派遣元や派遣先に都合よく変更できることになってしまいます。そうしたことがないように文書で、この11項目を明確に記載して、派遣労働者に渡すことが求められているわけです。
 この就業条件についての書面(=就業条件明示書)を調べ下さい。
 この就業条件明示書が渡されていなければ、法違反ですし、10項目に必要なことを書いて、渡さなければ重大な法違反です。

 もし、派遣元がいまだに、これらの項目の就業条件明示書をあなたに交付していないのであればそれだけでも労働者派遣法・労働者派遣法施行規則違反ということになり、派遣元は、10万円以下の罰金を受けることもあるほど、厳しい規定です。

 ご相談の場合には、業務内容が異なるということですが、就業条件明示書の記載との関連を点検してください。
 この点は、どうでしょうか?

 就業条件が就業条件明示書などに示された内容と異なっている場合は、その違っていることについては労働者の責任ではなく、派遣元の責任です。労働者としては、むしろ被害者ですので、契約違反の責任は問われません。労働基準法第15条に基づいて、堂々と、労働契約を解除することができます。

 この点が何よりも大切です。

 できれば早い時期に、就業条件の違いについて問題を提起することが望ましいと思います。あまりにも日が経ってからでは、「黙示の合意」をしたとされかねません。

 さらに、派遣元には、代わりの就業機会の確保を求めて下さい。それができないときは、残りの契約期間について賃金の支払を請求することもできます。

 実際に働いておられますので既に働いた分については賃金全額の支払を求めることができます。あなたが、相手方の責任で貴重な時間を費やしたことになりますので、労働契約を解除し、賃金に加えて、「損害賠償」として交通費などの実費や、慰謝料などの精神的被害額を含めて請求額を決め、相手方に通知して話し合いを求めて下さい。

 労働基準法第15条3項は、労働者が「就業のために住居を変更した」ときは、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合に、必要な旅費の請求も認めています。

【参考条文】
 労働基準法第15条(労働条件の明示)

 1 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金に関する事項については、命令で定める方法により明示しなければならない。  2 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働 者は、即時に労働契約を解除することができる。  3 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以 内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。  
 


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