MINPOKYO 295 派遣防止について

民主法律協会　96．10．31　民主法律時報　NO．295

学生さん、選挙アルバイトにご注意
－公職選挙法違反のアルバイト・派遣防止について関西の各大学へ申し入れ－
派遣労働研究会　弁護士　渡　辺　和　恵

　

一〇月二〇日の衆議院選挙に向けて、朝日新聞が「ウグイス嬢は学生が頼り」「派遣業者が足元を見て値を吹っ掛ける。」等、「選挙産業大盛況」の記事を載せました。私たち派遣労働研究会は、「ウグイス嬢や電話かけ」は派遣適用業務外で派遣法第五九条に違反し、派遣業者は懲役や罰金に処せられること、又そのアルバイト学生（ウグイス嬢については日当が一万五〇〇〇円を越えた時）自身が公職選挙法第二二一条の被買収の罪で懲役・禁鋼や罰金に処せられることがあまりにも知られていないことから昨年から大阪府労働部、選挙管理委員会に行政指導や広報を申し入れたり、新聞に投稿したりして事態を改善する運動をしてきました。
　そこで、早速朝日新聞社に間題有りの意見を出すと共に、急いで、関西の約七〇の大学にむけて、「申し入れ書」と「学生たちへの掲示文例」を送付しました。いくつかの大学から、被買収事犯のケースを教えて欲しいなどの問い合わせが有り、ある大学教授からは、資料を送って欲しいとの要請があり、又、いくつかの大学キャンパスには掲示が出され、申し入れ活動は大きな成果を生みました。
　しかし、選挙後、兵庫九区の若宮清候補（民主）派の運動員Ａがウグイス嬢四人を派遣業者Ｂから公選法が認めた一万五千円を越える日当五万円で派遣を受ける約束をした買収容疑でＡ・Ｂが逮捕されたとの報道がなされました。買収側が逮捕となれば、被買収側のウグイス嬢は警察や検察に何らかの調べの対象になります。残念なことですが、報道されていないところで同様のことが起こっていると思われます。
　超氷河期と言われる女子学生の就職難の中で広がる若い女性のフリーター化、日給が少しでも高いところと飛びつき易い選挙アルバイトの高給。その結果が、被買収罪による検挙ではあまりにも残酷です。しかし、翻って「選挙を金で売り買いしてはならない」の原則を破っている事の重大性を学生たちに考えてもらいたいものです。選挙活動は良い金儲けとの体験と若者の選挙離れは表裏一体と言えるでしょう。
　ところで派遣業界は選挙事業で大儲けをしながら摘発はそのごく一部でしかありません。今年の年末には、先の国会で通過した派遣法「改正」へ育児休業・介護休業期間中の派遣は適用対象業務の制限撤廃など）を受けて、政府は派遣適用対象業務を政令で拡大します。昨年の大阪府労働部への申し入れによって派遣元事業主への一般指導（講習）で選挙産業は適用対象業務外であることが盛り込まれるようになりましたが、儲かる事業を制限することが問題だとの“資本の論理”が大手を振っている今日、私たち労働の側が派遣労働問題にもっと大きな関心を持つことが根本的に求められています。

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