デンキノチカラの逆襲

「デンキのチカラ」の電話を最初に、同社からの電話はこれが三回目です。前回、前々回と違って、今度は年配の女性のテレアポでした。
 
女 「とおみさんのお宅ですか」
私 「はい」
女 「私どもは、〇〇と申しまして、このたびキャンペーンでフローリングのお掃除を300円でさせてもらっているんです。○○区のお宅を○○日まで廻らせてもらっているんです。
 最近のお宅は、奥様、お若くていらっしゃるようだから、新しいお宅は殆どがフローリングですよね。小さいお子様がいらっしゃったら、どうしても瑕が心配だと思うんですけど・・・」
私 「あの、お掃除屋さんですか?」
 
 二回目の電話の時に「掃除機屋さんなんですよね?」と聞いたら、テレアポさんのトークが一気にトーンダウンしてしまい、すぐに電話が終わってしまったので、今回は逆さに訊いてみました。
 
女 「え? あ、え、いえいえ、お掃除屋さんじゃないんですけどね、テレビCMでもご存知だと思うんですけど、スウェーデン製の掃除機の、素晴らしさを知ってもらおうと、この度キャンペーンで今だけ300円で・・・」
 
 おばさん、はっきり答えてくれません。
 
私 「キャンペーンで300円ってことは、普段はもっと高いんですか?」
女 「いえいえ、お掃除屋さんじゃないんですよ。徹子の部屋なんかのCMでもご存知でしょうけど、スウェーデンの掃除機、その素晴らしさをお伝えしたくて、キャンペーンで300円でお部屋のお掃除を・・・」
 
 やっぱり、なかなか答えてくれません。仕方が無いので、ズバリ訊くことにしました。
 
私 「掃除機屋さんですか?」
女 「え、まあ、家電販売のね、他にも色々あるんですけれど、今回はスウェーデンの掃除機を・・・」
私 「宣伝にこられるんですね」
 
 話の腰を折ったつもりだったが、相手はかなりのツワモノ、再びトークがほとばしり始めた。
 
女 「え、まあ、テレビのCMでもご存知でしょうが、掃除機は、使ってみて初めてその良さがわかると思うのですよ。
 あ、でも、訪問販売じゃないんですよ、あくまでもテレビのCMみたいな感じで、押し売りはいたしません。販売に伺うんじゃないんです。
 それで、お客様からお預かりした300円は、聴導犬協会へ、福祉の方へ回させていただいているんです。年末に、新聞で表彰されているんですよ。去年は、全国に支店がありますので、去年は他の地域が500万で表彰されておりましたが、私どもも今年こそと思っておりまして」
私 「あー、ウチ、ついこの間、新しい掃除機を買ったんですよ(嘘)。だから・・・」
女 「ああ! 最近のはとても良いものが出ていますよね。それでも」
 
 おばさん、すごい勢いです。反論する隙を見つけるのに一苦労です・・・。
 
私 「結構いい値段だったので、当分買い替えも無いので、必要ないんで・・・」
女 「あらっ? それは水フィルター?それとも・・・」
私 「ミーレのです。ドイツのメーカーの」
 
 「通販生活」のピカイチ事典で紹介されている掃除機です。夢です。欲しいです。
 
女 「ああ、当社以外にも、幾つかありますものね、同じような、じゃ、40万も出されたの? でも当社は・・・」
 
 金額にも驚きましたが、同様な高価な掃除機を買ったばかりだと言う人間に、まだセールスを続ける根性に吃驚しました。
 
私 「よんじゅうまん? そんなに高いんですか?」
女 「え、あら、(狼狽しているのか、早口で)お幾らなのかしら?」
私 「7万円です」
女 「そうね、私も、昔十年ほど前に、訪問販売で掃除機を買ってね、それが40万ぐらいで、でも、担当の方がしばらくして辞めてしまって、アフターサービスもあまり良くなかったのよ。
 その点、当社は、情報の管理がしっかりしているから、とても良心的だと評判なんですよ。この機会に、是非見ていただいて・・・
 訪問販売じゃないんですよ。皆さん、買わない方が殆どですし。どうしても、という方には販売いたしますけれど、そのときに車に無かったりすることもありまして、それこそ、お売りするとなれば、いろいろ手続きとかございますでしょ。こちらとしては、CMのように見ていただくだけのつもりで、気に入った方は、後日、電話していただいて・・・」
私 「いや、でも、絶対買わないものを、宣伝しにわざわざ来ていただくのも・・・」
女 「ですから、あくまでも、どんなものかを知っていただく為に(トークがループしているので、中略)訪問販売じゃないんですよ
 
 いいのかなあ・・・これで訪問時にセールスが行われたら、まごうことなき特商法違反だよ・・・。
(特商法における、訪問販売に対する規制については、「ピロンちゃん特集・訪問販売の規制について」のコメントを参照して下さい)
 
私 「でも・・・スーパーの試食なんかも、買わないものは試食できない性格なんですよ、私。なんだか申し訳なくって」
女 「ああ、それはね、良くないわ」
私 「は?」
女 「私の友達にね、スーパーでそういう仕事をしている人がいるんだけど、試食はね、食べてもらわないと困るのよ。冷めておいしくなくなったり、余ってしまったら捨てなきゃいけないし。
 こんな商品がありますよ、って宣伝だから、気にせずに食べて欲しいんですって。そりゃ、子供が何度も何度も食べるのも腹が立つけど、それでも食べない人よりは良いんですってよ。
 それにね、食べてもらったら、もしかしたら気に入ってもらって、買ってもらえるじゃない?(←おばさんの本音が出た模様) だからね、試食は食べなきゃダメなのよ」
 
 いや、だから、買いたくないって言っている。人の話を聞け。
 
 なんだか、完全に相手のペースです・・・。
 おばさんがどこまで粘るのか興味があった、というよりも、電話を切るタイミングを失った、というのが正しいかもしれません・・・(涙)。
 
私 「そういわれても、100%買わないって分かっているのを、わざわざ時間を割いて来てもらっても・・・」
女 「いえいえ、ですから、こんな掃除機があるよ、って(やっぱりトークがループしているので、省略)」
私 「でも、絶対買わないウチに来ている時間があったら、他の人のところに行ったほうが、絶対いいですよ」
女 「ですから、掃除機の良さを(見事にトークがループしているので、省略)」
私 「いや、だから、買いもしないのに、お試しも何もありませんが」
 
  さらに五回ぐらい、こんなやり取りが続きました。
 今回は相手の上品な口ぶりに合わせて、あくまでも穏やかに、自然に電話を切り上げよう、と思っていたんですが、いい加減嫌になってきました。そろそろお昼ごはんの準備もしなきゃならんし・・・
 で、ちょっと強い口調で
 
私 「だから、来てもらっても無駄だし、来てもらうつもりもありませんから!」
女 「あ、そうなの・・・。じゃあしかたないわね・・・」
 
 ・・・やっと諦めてくれたよ・・・
 
私 「はい、失礼します」
 
  で、普通に受話器を下ろそうと思ったんですが、何故かふと魔がさして、そのまま黙って二秒ほど待ってしまったんです、私。
 
女 「要らないなら、要らないって言えよな!」
 
 さっきまでの、上品なおばさまは何処へ?ってなドスの効いた声を聞いてしまいました・・・そして切れる電話・・・
 ・・・要らんって、何回も言ったやん!(泣)

■「テレアポさんのトークに真面目に付き合うと、電話が長くなる」ということを身をもって体験しました。
 で、はっきりと強く「必要ないから要らない」と「断言」しない限り、一般的な断り文句はテレアポさんには通じないようです。
 そして、被勧誘者に口を挟む余地を与えてくれないテレアポさん・・・。
 
 うーん、八方ふさがりだ(苦笑)。

(2005.9.1)