アトピーに効く洗剤・・・?

■独特の話し方のテレアポさんでした。
 以下、テレアポさんの台詞は、語尾を上げて音を引っぱるようにお読み下さい。
 
女 「こちらLイフCリエイトと申しますー。
 とても便利で安全な洗剤の試供品を、キャンペーンでプレゼントしているんですー。
 口に入れても安全で、油汚れもとても良く落ちるんですー。
 お風呂に入れていただいたら、お風呂が綺麗になるだけでなく、美容にも、アトピーにもとてもいいんですー。
 お肌がつるつるになるんですー。
 試供品は、500mlのペットボトル入りなんですけども、10倍に薄めてお使いいただきますー。
 たっぷり使えて、お台所からおうちの隅々まで、色々と使えるんですー。
 とても安心で便利な洗剤ですー。
 油汚れから、消臭、除菌まで使えますー。
 赤ちゃんが舐めても安心ですー。
 アトピーの方は、お風呂に入れていただいて・・・」
 
 トークがループに入ってきたようなので、無理矢理割り込む事にしました。
 
私 「あの、何の試供品ですって?」
女 「洗剤ですー」
私 「洗剤を・・・お風呂に入れるんですか?」
女 「はい。とても安全な洗剤なんですー。
 重曹と水を電気分解して、マイナスイオンにしているんですー」
私 「電気分解で、マイナスイオン?」
 
 また、わけのわからんものが出てきました。
 電気の力の次は、マイナスイオンですか・・・カンベンシテヨ
 
女 「そうです、マイナスイオンですー」
私 「マイナスイオンって、何ですか?」
 
 ダメ元で、質問してみました。
 
女 「・・・え、マイナスの、イオンですー」
私 「水素やナトリウムといったプラスのイオンはどうなっているんですか?」
女 「え、あの、重曹のお話をしているのですがー」
私 「重曹でしょ。炭酸水素ナトリウム」
 
女 「え? あの、電気分解して、マイナスイオンにするんです。そう、アルカリ性ね。アルカリ性にするんですー」
 
 ちょっと待て。
 
私 「・・・重曹って、もともとアルカリ性ですよね」
女 「え?」
私 「さらにアルカリ性にするんですか?」
女 「え、そう、そうなんです」
私 「強アルカリ性って、かなり危なくないですか?」
女 「あの、試供品が必要ないのでしたら・・・」
 
 ちょっと突っ込んだくらいで、逃げないで下さい。
 
私 「いえ、一体どういうモノなのか、とても興味があるので・・・」
女 「そうですか。そうでしたら、三時頃、お宅に伺わせていただいて、実演を兼ねて三十分ほどお時間をいただけたら・・・」
私 「実演?」
 
 実演です。三十分です。さあ、話が怪しくなってきましたよ(喜)。
 
女 「当社の洗剤の効果的な使い方、お掃除のアイデアなどをご説明させていただきます。三時から六時までの間の、都合の良い時間にそちらにお伺い・・・」
私 「あの、試供品を持ってこられるだけなんですよね?」
女 「ええ、今までにない安全で便利な、お得な洗剤の試供品をお届けに参ります。現在お使いの洗剤との違いなど、ご説明させて・・・」
私 「電気分解の機械を売りに来るわけじゃないですよね? 絶対に絶〜対に!試供品だけなんですか?」
 
 実は、以前に友人から、似たようなセールスの話を聞いた事があったのだ。よってイキナリ強気な私。
 
女 「いえ、あの・・・いや・・・いえ・・・」
 
 とても歯切れが悪い。
 
私 「普段使いの分をストックしておくのには、場所をとるし、お金もかかる。この機械があれば、いつでも電解水が使えます、って売りに来るんじゃないですよね?」
女 「あー、ええ、まあ。その宣伝も兼ねて・・・」
私 「機械の販売があるんですね?」
女 「ええ、まあ、はい、そうですね・・・」
 
 はい、めでたく特商法違反の言質をとれました。
 あとは・・・どう断るかだけれど・・・そうだ、一度、悪霊退散の呪文を試してみる事にしよう。
 
私 「特定商取引に関する法律」で、販売目的のアポをとる場合は、はっきりと商品の販売であるということを明言するように定められて・・・
 
 ガチャン!
 
 ・・・これ以上は無いと言っていい程の、素晴らしいガチャ切りっぷりでした。
 初めての試みでしたが・・・やっぱ効くなあ、呪文。

■テレアポ嬢のトークが無茶苦茶だったので、ちょっと検索してみたところ、「重曹電解洗浄液生成器」なる物を発見しました。35万円強するようです。
「重曹電解洗浄液生成器」は、「重曹電解洗浄液」の他、電解質として精製塩を使って「強アルカリ性還元水」と「強酸性水」を作る事ができるそうです。
 なるほど。これらをごっちゃにして語っているから、余計にわからないトークだったんですね。
 
■しかし・・・、残念ながら私は地学選択だったので、化学は完全に専門外です。ツッコミしようにもイマイチよくわかりません。とりあえず、私にもわかることを少しだけ。
 
 わざわざ電気分解しなくっても、重曹って、脱脂効果や脱臭効果があるし、重曹泉という風に入浴剤としても使えます。「重曹の使い方」で検索したら、研磨剤の代わりにもなるそうです。
 
 電気分解したらどうなるのだろう・・・。重曹はNaHCO3だから、Na+(ナトリウムイオン)とHCO32-(炭酸イオン)に分かれるの・・・かな? アルカリが汚れを落とすっていうから、陽極の方の液体を洗剤として使うわけなのかな? マイナスイオン云々って言うのだから、きっとそうなんだろう。
 
 いや、待てよ。アルカリ性の溶液が必要なら、食塩水を電気分解すれば良い訳だ。重曹の洗浄力が必要なら、重曹水で良い訳だ。
 わざわざ重曹水を電気分解する必要は、どこにあるのだろう。他の電解質ではダメな理由ってあるのだろうか? ああ、もう、さっぱり判らない。色々調べてみたけれど、これダ!という情報は見つけられませんでした・・・。
 
 ・・・なんて、ぐだぐだ考えていたら、ダンナが、
「おい、敵の術中に嵌ってるぞ」
 敵って・・・(苦笑)
「この手のヤツはだな、たとえ枝葉の部分が正しくっても、集めて全体にするとヘンになるのにきまっている」
「そんな、ハッキリ断言せんでも」
「出発点が間違ってるから、枝葉をちまちま考えても仕方がない」
「と言うと?」
「重曹を電気分解する必要があるんじゃない。
 重曹を電気分解したいからしているんだ。
 重曹を電気分解しないと、「重曹電解洗浄液生成器」が売れないじゃないか

(2004.10.13)

■重曹電解水の効能について、かるみんさんから投稿をいただきました。

 重曹水を電気分解すると炭酸水と水酸化ナトリウムが生成されます(NaHCO3→H2CO3+NaOH)。

■・・・訂正をありがとうございます。本当に助かります。
 詳しくは「ピロンちゃん特集・重曹電解水の効能について」を是非ご覧ください。

(2005.10.29)

■マイナスイオンについて、「はてなダイアリー」のキーワード「マイナスイオン」が、まさしく快刀乱麻を断つ記述なので、ご紹介します。

マイナスイオン
 
■ 疑似科学用語
 
別名:空気イオン。空気のビタミン。
 
定義は明確ではないが、「空気中に存在する、何らかの要因(宇宙線、放射線、放電等)で電離したイオンのうち,マイナスに帯電したもの」と言われている。
 
空気の澄んだ森林や高原,滝の周辺などに多く存在するとなどといわれるが、森で測定すると逆にマイナスイオンは少なかったと結果を出した研究者もいる。
 
俗に「体内に取り込まれると,新陳代謝を促進し,心身をリラックスさせる効果がある」などといわれるが、実証に成功した研究者はいない。
 
なお、この文脈の『イオン』とは、水溶液中などに存在する『イオン』とは別のもの。
 
空気中のイオンとは気象学でも大気イオン?として組成等の研究がされるが、実証抜きに健康まで言及するようなものは疑似科学の世界となる。
 
マイナスイオン商品がブームとなっているのは日本だけである。

■上記のページでも紹介されていますが、「疑似科学批評」というサイトに「マイナスイオン特集」 という実にアグレッシブな(いや、「批評」なのだから当たり前か)ページがあります。マイナスイオンについての集大成のページと言えるかもしれません。

(2004.12.8)