科学的な努力(EVP)

 テープなどで録音をしたときに、録音時はなかったはずの音声が再生すると聞こえる現象はEVP(Electronic Voice Phenomena:電子音声現象)と呼ばれています。もっとも単純な実験形式は、ラジオを局と局の間の何も受信できないところに合わせ、ホワイトノイズというたくさんの周波数が混在した雑音を生み出します。その状態で録音を行い、何かを質問するたびに一、二分程度の沈黙をする。実験が終わってからテープを再生すると、自分が黙っていたところに何者かの声が録音されていて、それはしばしば質問の答えになっているのだそうです。こういったホワイトノイズの替わりに、水の流れる音、雑踏のざわめき、そういったノイズは使わない、など、他にもいろいろなやり方があります。
 さて、そんな現象があるのでしょうか。この現象は歴史が長いだけに、かなりたくさんの人が調査しています。少なくとも1936年には、カリフォルニアのアティラ・フォン・スザレイが蓄音機を用いて科学的調査を始めています。そのような調査に関わった人で一番有名なのは、コンスタンティン・ラウディヴでしょう。
 ラウディヴは、EVPが存在することを広く世界的に訴えたフリードリヒ・ユルゲンソンの二冊の著書を読んだ後、実際に彼に会いに行き小人数で公開実験をしてもらうことを申し出ました。何度かそういった実験を行い、EVPが真正の現象であることに疑いが無くなった時点で彼は独自の実験に入ります。そして、自分が今までに得てきた72,000例の録音に基づいて「聞こえないものが聞こえる」という本をドイツ語で出版しました。これが英語訳されるときにいろいろなことが起きます。
 1971年、この本が英訳されようというとき、当然たくさんの反対がでました。この本を出版しようとしたコリン・スミスの友人ピーター・バンダーもその一人です。この際にスミスは、ドイツ語版のラウディヴの記述に従って実験をしてみました。彼によれば割とすぐ声のようなものが得られたが、何と言っているのかはまったくわからなかったそうです。それをバンダーのところに持っていき「自分でもこんな声が受け取れるのだから、この本を出版する価値はある」と説得しようとしたとき、バンダーはそれを聞いて、なんと、次の結論に達してしまったのです。

「ラウディヴと彼の同僚が言及している奇妙なリズムが・・・、声が聞こえる・・・。声はとても早口で、変なリズムだが、確かにドイツ語で、スミスは話すことのできないドイツ語で問いかけている。私はこれが、3年前に死んだ母親の声だと確信した。」

 ちょっと出来すぎの感がありますが、先を続けましょう。友人のバンダーを説得したスミスは早速出版にとりかかろうとしたのですが、今度は当時の英国副首相から「そんないいかげんなものを出版するなら、おまえの出版社をつぶしてやる」と言わんばかりの横槍が入ります。そこでスミスとバンダーは「そこまで言うのなら厳密な科学的実験をやってみよう。それでも声は録音されたら出版してもいいでしょう」と開き直ったのです。
 1971年、ピー社というレコード会社がラウディヴを招待して実験をすることになりました。彼らは、当時知られている限りのラジオとテレビ信号を完璧に遮断するように特別にあしらえた音響研究室にラウディヴを招き、彼には一切機器類に触らせないようにしました。ラウディヴの用いたテープレコーダ一台は、他の機器に管理・モニターされていて、彼にできることといえばマイクに向かって話すことだけです。18分間の録音の最中、聞こえてくるのはラウディヴの話す声だけで、実験者の誰も他の音を聞いていません。しかしそのテープが再生されたとき、驚いたことに200以上の声が録音されていました。実験に関わったオブザーバーたちは、声の中でコンスタンティン・ラウディヴの愛称である「コスティ」「コステ」が使われ、ラウディヴの亡き姉妹からの声だとされた録音では、その声は自分のことを「テクレ」という正しい名で三回呼んだ事実から、この現象は真正のものだと判断しました。
 で、めでたく「ブレークスルー」の英語版は出版されました。翌年、さらに厳密な試みがなされています。イギリスのエンフィールドにあるベリング・アンド・リー社は、イギリスの防衛のために電子機器のテストをしたりする会社でした。そこには特別に設計されたラジオ周波数遮断研究所があり、ここにラウディヴを呼んで実験をしようということになったのです。このときは、電磁波遮蔽についてヨーロッパでも5本の指に入る、イギリスが誇る物理学者・電子工学技師であるピーター・ヘイルが実験の監修をしています。このテストのために研究所独自の録音装置が備えられ、工場から出荷されたばかりのテープが用いられました。そこで起きたことについてヘイルはこう述べています;

「このテストが遮蔽設備付きの自社の研究室で行なわれたということを考えると、今回起きたことを通常の物理の理論で説明することはできない。」

 うーん、どうなのでしょう。やはりこの現象、何がしかの真実性がありそうな気はしませんか?


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