2000年3月 パリ・イタリア旅日記



3月20日(月) フィレンツェ2日目(1)


朝、ゆっくり寝て、朝食のため階下のレストランに行くと、
そこは、結構なスペースだが、さすがに
遅く行ったためにもう数組の人しかいない。







月曜日は、ウフィツィ美術館は、休みのため、のんびり、町の中を
散策して見る計画だ。昨日のように混んでいなければ
いいけれど、と、外に出る。昨日ほど、ひどくはないようだ。
まずは、近くの「サンタ・マリア・ノヴェッラ教会」
Santa Maria Novella
行ってみることにする







サンタ・マリア・ノヴェッラ教会は、14世紀の
中頃に完成したドメニコ修道会の教会との事。

13世紀頃から、盛んになった「聖母崇拝」の拠点の一つなのだそうだ。
白と緑のツー・トーンの大理石のデザインが美しい。












遠近方を最初に使って
描かれたという
マザッチョの「三位一体」は、
残念ながら、修復中だった。












サンタ・マリア・ノヴェッラ教会を出て、
いよいよ改めて、「花の聖母教会」ドゥオーモに向かう事にする。途中、
メディチ家・君主の礼拝堂
Cappelle Medicce 
寄ろうと、いうことなる。
塩野七生さんの小説の場面を思い出したりしながら歩く。、
メディチ家・洗礼堂の辺りに近づくともう、観光客が、
列を作っている。どうも2、30分位は、待たなくてはならなそうだ。




メディチ家・君主の礼拝堂



先にドゥオモへ行くことにする。
私達は、その礼拝堂を横目に見ながら、進む。
この礼拝堂を過ぎると、歩道を残して、狭い「車道」の端に、
沿って、びっしりとおみやげ屋の屋台が、並んでいる場所になる。
私達は、そのお土産屋の前方を通らずに、
お土産屋の後ろの歩道をずっと、歩いて行った。



《ジプシーに狙うわれる》



ポシェットが、狙われる。
前日まで、「ポシェットは、コートの中」を守っていた。
でも、それまで、、何もなかった事もあり、その時は、
ポシェットは、コートの上にかけていた。

娘と私は、並んで、主人より随分前を歩いていた。
二人で、おしゃべりしながら歩いていた時、
いきなり、私は、何かに、後ろから、腕を掴まれる。

わけがわからず、びっくりして、
振り返ると、そこには、ショールのような汚れた布のようなものを
体に巻いた黒っぽい肌の女性の顔があった。

彼女は、"Money...money..."と、言いながら
どんどん私の腕を手繰り寄せる。
娘は、驚いて、思わず後ずさり。私は、慌てて、
「ノー!」「ノー」と言うが、彼女は、全く怯まない。
そして、更に私に体ごと
幾重にも重ねたショールと一緒に取りすがってくる。
私は、自分の「ノー」が、全く、効力がないばかりでなく、
更に迫って来られたことに、一瞬恐怖を覚えて、飛びのく。

その拍子に
口が開いた自分ポシェットが目に飛び込んできた。
一番上のお財布が見える。「まだ取られてない。」でも
パックリ口が開いている自分のポシェットを見て、
私は、思わず、恥も外聞もなく、「ウワーッ!」っと、大声を発していた。
娘と、私は、焦りながらも合図して、逃げた。
でも、大衆の中で大声を出し、逃げ出した事で、
彼女は、諦めるに違いないという思いがあったので
必死には走っていなかった。

ところが、早足で逃げ出した私達に向かって、
彼女は、諦めるどころか、なんと追いかけて来ている。
全速力で走っているわけではない。
ただ何とも粘り強い体制の走り方だ。
その時、私は、彼女のそばに小さな子供が、いるのに、気づく。
全部で何人いたかは、必死過ぎて、記憶にはない。

私達が、ちゃんと逃げなきゃ、と、
気づいてきた時、もう一人のジプシーの女性が、
思いがけない方向にいるのに気づく。
そのうち、おみやげ屋のテントの間からももう一人。
「えっ、何人いるの!?」

やっと、私は、後ろにいたはずの主人を思い出す。
決して、スピードは出さずに、ただズ・ズ・ズーッと、
迫ってくる、女性の顔を逸らすようにして、
私は、後方の主人を必死で呼んだ。

主人は、離れていて全く気づいて
いなかったらしく、びっくりして、何事かと走ってくる。
と、ジプシーの足は、別方向にいたジプシーと一緒にピタリと、止まり、
こちらが、興奮冷め遣らぬ状況にいる間に
何時の間にかその姿は
かき消えてしまっていた????


その後、道すがら、興奮しながらその話をした。
主人は、おしゃべりしながら先に行く私達の後ろから、
ビデオをまわしながら歩いていたはずだった。
二人で、「私達が、襲われてるのに、全然気づかなかったの?」
と、問いただす。「いやぁ、見えてたけど、ただ
金をくれって言われてるだけだと、思ってた。」・・・のんき過ぎ!

「じゃあ、ビデオは、ずっと回していたんでしょう?
今の場面、撮れてるんじゃない?」
そして、
確かに、アタック直前の彼らの姿が、ビデオにあった。
画像は、ちょっと遠いけれど、よく見ると随分前から、狙いを定めて、
後をつけられていたのだった。



私を狙ったジプシーの人達







前の方でコートを着ているのが、私と娘。
三人の大人と二人の子供のジプシーの姿がある。







この角を曲がって少ししたところで襲われた



こうしてみると、私を襲ったのは、子供連れのお母さん達だったらしい。
私は、いきなり腕を掴まれて、見たので、
黒いシワの多い表情から、「老婆」のように見えた。
ジプシーという事は、その独特の
目鼻立ちと、格好からから、すぐにわかった。


グルグル巻いたショールは、ターゲットにバッサリかけて、
目をくらますため。私のお財布が、無事だったのは、
小さいポシェットがギューギュー詰めだったから。
(不幸中の幸い)

私達が襲われたのは、露店が立ち並ぶ人通りの多い場所。
だから、少なくてもお店の人はたくさんいて見ていたはず。
でも、「誰も」助けてくれなかった。
「不注意者が、又、やられている。」そういう感じだったのか・・・。

私が、それから、心したのは、言うまでも無い。



***
ジプシーとは定住しない事をその生活スタイルとした
「インドに発祥したロマ族のこと」で、ハンガリーを中心に
世界に分布している。と「ものの本」に、書いてあった。

ガイドさんによると、路上で、窃盗を生業とするジプシーは、
物心ついて以来そういう生活をしてきているので、
全く、罪の意識は、ないとのことだ。
***



サン・ロレンツォ教会
San Lorenzo



教会は、ジプシーに狙われた狭くて
短い通りを抜けたところにある。
メディチ家から近いため、メディチ家の教会として使われるようになり、
ロレンツォ豪華王の曽祖父が、ブルネレスキに
命じて、元から在った小さな礼拝堂を増改築させたのだそうだ。
その時、ブルネレスキは、
「花の聖母大聖堂」のクーポラも手掛けており、
外観のほうは、完成しないまま、世を去る。
その後、ミケランジェロも関わったとの事だが、
結局、現代まで、外観は、治されることなく、そのままになっているとのこと。
かって、サヴォナローラもここで、説教をした事があると、本にある。











未完成の外側は、現代の建築のようにも思える。
他の重厚なフィレンツェの建物に比べると、
迫力に欠ける外観かもしれない。
でも、内部は、とても、すっきりとしていて、荘厳な雰囲気である。
両側に一直線に並んでいる石柱が、
すがすがしい空間をもたらしてくれているようだった。





「花の聖母教会」(ドゥオモ)へ



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