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99.05.31

京都の看板

 数年ぶりに京都に行って来ました。京都のような行きやすいところでさえ「数年ぶり」というところに、僕の出不精ぶりが表れています。
 旅をすると、まず気になるのがその土地のことばです。京都の人は、自分たちのことばに自信を持っているせいか、往来でも大きな声でしゃべるようです。だからあちこちで京都弁が聞ける。東京や京阪以外の土地では、こうはならないと思います。しかし、それにしても、京都タワーのエレベーターのアナウンス(録音)までが京都弁だったのには驚いた。
 街の看板も、「京都ならではのことば遣いをしているのではないか?」という期待をもって見るためか、どれも変わったことばに見えてしまいます。
 京都駅前に市バスの乗り場があって、その横に「おりば」と書いてあるところがある。どうも、見たところ、もともと「のりば」と書いてあったところに、上に「おりば」という紙を張ったんじゃないかと思います。要するに「降車専用」ということなのでしょうね。だから「のりば」ではおかしいので「おりば」としたんでしょう。これは、東京ではついぞ見かけないように思う。もっとも、古典を見ると、「降り場」ということばは、まったく無いわけではないのですがね。
 また、地下鉄の烏丸御池駅を歩いていたら、「係員の外 入るな」という看板がありました。これも、日本語としてどこもヘンではないけれど、東京では「係員以外 立入禁止」とでも書くと思います。漢語ではなく和語で書く方が、インパクトはたしかにあります。
 宿に帰る途中で道路工事をしていて、そこに出ていた看板が「通り抜け出来ません う回お願いします」。こういう何げない看板も、「京都ならでは」という色眼鏡で見ているせいか、ふと注意が向いてしまいます。これも、ちょっと独特の言い方ではないか? 東京の看板なら「この先通行止 う回してください」とでもありそうなところ、かも。
 あくまで印象にしかすぎないので、こういう言い方は別に地方によるのではなく、東京でも探せばあるのかもしれません。でも、なぜかこの看板からは、「通り抜けできんのどす、すんませんな」というような京都弁のアクセントが聞こえてくるように思うのですが、空耳かな。

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