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99.02.12

香港のしんにょうは変だ

 最近、香港の雑誌をたくさん読む機会がありました。パソコンの雑誌から芸能雑誌まで、いろいろ眺めていたのですが、どれも活字(明朝体・ゴシック体その他)のデザインが修正されていることに気がつきました。
 たとえば「公」という字の「ム」の部分などは、日本のふつうの明朝体では、折れる部分でちょっと左に突き出ているのですが、香港の明朝体ではそのデッパリがありません。この種の修正は日本の中学校国語教科書にもあることは以前に触れました。
 中華人民共和国本土では以前から活字を直していましたが、香港は、僕の記憶では日本の旧印刷字体そっくりだったと思います。日本と同じくデフォルメされた字体でした。いつの間に変わったのかな。
 徹底しているのは「紙」などの糸ヘンで、日本の明朝体ではデッパリが目立って8画にみえますが、香港の活字では6画に見えるように直しています。しかも下の部分が「小」ではなく「ヽ」を横に3つ並べたような形になっています。手書きではこれが正解なのですが、日本の中学校国語教科書でも下は「小」のように書いていますから、香港のほうが一歩進んでいるわけです。
 ただ、不満なのは「避」「道」「通」などのしんにょうです。
 明朝体のしんにょうは、もともと昔から変な形でした。というのも、楷書体のしんにょうは何だかくねくねしていて、そのままでは明朝体活字には納まりにくいのです。伝統的な明朝体では2画めがカタカナの「コ」のように直角に折れています。これを手書きでまねては誤字に近くなります。
 だからといって、それを直した香港の明朝体のしんにょうも変です。なんだか「延」「建」などのえんにょうに似て、2画めがやたらにギザギザしているのですね。たしかに、しんにょうは筆をゆすって書きますが、こうノコギリの歯みたいにはならない。これは手書きに近づけようとして、かえって誤字にしてしまったものとみえます。
 一部の雑誌に限ったことではなく、多くの媒体ではこのギザギザしんにょうが主流のようです。さもなくば旧来の印刷字体の二点しんにょうを使っています。
 ギザギザしんにょうのようなものを毎日目にしていては、僕ならストレス溜まると思うんですが、香港の人はどう考えているのでしょうか。どうせしんにょうは明朝体になじみにくいのだから、せっかくデザインを変えるならば、より手書きに近いように直したらいいと思います。

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