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04.05.04

よみがえる「ぎろっぽん」

 「六本木」を「ぎろっぽん」とひっくり返していう言い方が「流行語」となっているのだそうですね。この流行を僕が初めて知ったのはテレビによってでした。日本語学者の金田一秀穂氏が、「まじ」をひっくり返して「じーまー」などと言う逆さことばを紹介する中でこう述べていました。

 そう、「まじ」を逆さまにすることによって、あの、「まじ」をもっと強めるというんですね。「ぎろっぽん」もそうですね。「六本木」から「ぎろっぽん」。昔からあったんですね、「ざぎん」〔銀座〕とかね。(NHK「生活ほっとモーニング」2004.04.22)

 これと前後して、バラエティ番組で「業界用語」についての話題が出たときに

鈴木紗理奈 だりひ(左)みたいな? ぎろっぽん(六本木)みたいな?(テレビ朝日「コドモのギモン」2004.04.25)

という発言があったりして、「ああ、これは本当に使われているらしい」と分かりました。

 「銀座」を「ざぎん」、「新橋」を「ばしん」、「上野」を「のがみ」とひっくり返すのは、僕も知っています。「浅草」を「えんこ」というのは「公園」(昔の浅草公園)のひっくり返しでしょうから、ここに含まれるでしょう。一方、「有楽町」を「らくちょう」、「新宿」を「じゅく」、「池袋」を「ぶくろ」と上を略す言い方もあります。「六本木」も同様に「ぽんぎ」と略すのならば知っていました。

 上のテレビ番組で、金田一氏は「ぎろっぽん」が「昔からある」と発言しています。これは、このような作り方が昔からあるということでしょうか、「ぎろっぽん」そのものが昔からあるということでしょうか。

 じつは、僕は「ぎろっぽん」ということばを8年前に聞いています。日本テレビ「ダウンタウンDXDX」(1996.03.28放送)で、松本人志さんが、反対ことばの一例として「六本木」を「ぎろっぽん」と言うと発言しました。

 すると、スタジオ内は大爆笑。ほかの出演者全員、「言わない言わない」「『ぽんぎ』なら言う」と笑って否定しました。松本人志さんは不満そうな顔をしていました。

 ぼくはこの時、大した考えもなく、彼の発言「ぎろっぽん」と、周囲の反応をメモしておきました。あとで、ときどきこのメモを見ながら、「さすがに『ぎろっぽん』はでたらめだな」「これは彼独特のギャグで、メモに値しないのではないか」と思いつつ、消すのも惜しくてそのままにしていました。

 ところが、今になって「ぎろっぽん」が「若者ことば」として取り上げられるようになろうとは。あのときのメモが、急に生きてきました。メモというのは、何でもしておくにこしたことはありません。

 もしかすると、交際範囲の広い松本人志さんは、どこかでこの「ぎろっぽん」を聞いて、テレビ番組で話したのでしょうか。周囲の人はそれをギャグだと受け取ってしまいましたが、本人は大真面目だったのかもしれません。

 「ぎろっぽん」の由来に興味がわいてきました。

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