たまさかに

深谷庄一(Shoichi Fukaya)

  1. 久々に
    (1998-03-10)
  2. デモ版
    (1998-03-23)
  3. IBM 仕様公開の理由
    (1998-04-20)
  4. Wiodows95からLinuxパーティションをMount
    (1998-05-26)
  5. 金利を何故上げないの
    (1998-06-12)
  6. 急に経済問題の話がでたのでついでに
    (1998-06-15)
  7. 調整インフレ論が急浮上
    (1998-07-09)
  8. Word 97 では HELP ファイルを作れない?
    (1998-07-16)
  9. 貸し渋りはなぜおこる
    (1998-08-03)
  10. 統計コンサルティング
    (1998-08-22)

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1.久々に

 久々に秋葉原に行って、メモリ32Mを一枚試しに買ってみました。ノンパリで7350円(税込)。ところで、総メモリが32MBを越えたら、「コンピュータの主な使用目的」を「ネットワークサーバー」にした方がパフォーマンスがよくなるとききましたが、 Wintune 97 で測定したらかえって悪い評価になったしまったんですが、どういうわけでしょうね。気持ちとしてはほとんど変わりないので計測誤差の範囲内かなとも思うのですが。ご存じの方お教えください。設定で具体的に何が変わるのでしょうか?

 あとは雑談です。

 秋葉原では、IDEのフラットケーブルや、CD-Rメディアを140円で買ってきました。新しい OS が出そろうまで、マシンを買い換えるのは尚早だし、秋葉にも用事がなくなってきました。ハード的には触手を動かしたいものはありませんが(実際パソコンの売れ行きは鈍っているようです)、最近感じるのはフリーソフトの充実です。当初 Windows 版はシェアウエアが多く、インストールも怖くてほとんど見向きもしなかったのですが、ちょっとみないうちに、かっての DOS 並にフリーソフトがいろいろ出回り始めたようです。TeX を含めて。それだけ層が厚くなってきたのだと思います。これからが楽しみです。最近はフリーソフトを集めたサイトを巡って、ソフトウエア的環境の充実にいそしんでいます。

 日本計算機統計学会の10周年記念 CD-ROM に CAS を収録したいとのメールが来ていました。もう少し時間があれば最新版をと思いましたが、急いでいるようなのでここの HomePage にあるままのものしか用意できませんでした。ちょっと心残りですがやむを得ません。

 それにつけても思うのは、統計ソフトのユーザーインターフェイスって、本当にバラバラですね。それだからおもしろいともいえるのですが、一度使ったことのあるソフトからなかなか離れられないという、「弊害」を招いているともいえると思います。学生の頃使った SPSS しか使えないとか。修得コストが高いので、異なったソフトへの移行が難しいのです。私のところのように小さな世帯だと、研究分野がそれぞれ違いバラバラだから、何を買うか意見がまとまらない。

1998-03-10

2.デモ版

 届いたばかりの「日経バイト」4月号に、統計解析の広告記事が載っているので、いくつかのデモ版をダウンロードしてみました。

 STATISTICA 5.1J のHELPファイルは、WINHLP32.EXE の保護エラーで動かないんですが、これは日本語版だけではなく英語版のHELPファイルでも同じです。いつの頃からこうなったのか忘れましたが、最初はちゃんと動いていた記憶があります。

 WinSTAT(LIGHT STONE) は、DISK1, DISK2 というフォルダを作ってやらないと、うまくインストールできませんでした。これだけでいやな予感がしたのですが、よくメモリエラーを出します。カテゴリを数値データと見なして計算すると浮動小数点計算のエラーでプログラムをシャットダウンさせます。三次元グラフではダブルバッファリングの初歩的な手法を使っていないので、唖然としました。

 Science View(Hydro System) は目的が分かりませんが、変わったソフトです。起動しても白紙のウィンドウが開くだけでメニューがありません。データの Drag & Drop もききませんから、最初何をしたらいいのか分かりませんでした。白紙上でダブルクリックすればいいのですが、とにかくグラフを描くパラメータが多すぎて気軽に使えるソフトではないようです。

 これらはすぐに私の HD から消去しましたが、StatView は持っていて良いものです。雑誌には紹介されていませんが、JMP もいいです[ これは昔からのファン ]。unix から移植されたもので数式処理ソフトですが MuPAD Light, Maple V Release 4 Demo、デモ版ではありませんがフリーの ViSta[ 作者が主に使っているマック版がやはり一番使いやすいようです ], scilab-2.3[ demo しか動かしていません ], Yorick, R, DATAPLOT なども Windows に移植されています。いずれも大作です。グラフ化ソフトでは、軽快な EasyPlot(Cherwell Scientific Publishing) などがいいかな。

 日本語版でかつフリーのものでは、JSTAT(佐藤真人)[ ESCキーが煩わしい ]、RQC32(Takeshi Nojima)[ きれいだけど、ものすごく重い ]、PlotWin32(Hiroshi Fukuda)、De for Win32(mikawaya) などがありますね。他にいくらでもあるでしょうけど。

 そういえば pTeX も 2.1.7 にバージョンがあがっているのですね。差分は簡単に当てられましたが、Windows 版は大きなファイルを落とさなければなりません。こういうときは unix の方が簡単です。

1998-03-23

 私は以前、 MacSpin というソフトにふれて、「今でも売っていますが」と書きましたが、おもしろいことに、MacSpin はフリーソフトになっています。役割を終えたということでしょうが、ある意味では注目すべきニュースです。敢えて書いておきます。

 しかし折角のファイルを私の IIci ではうまく落とせないでいますが、調べてみたらなんと、ドメインネームサーバーが働いていないらしく、直接 IP アドレス(208.2.87.66)を打ち込まないと接続できないという状態です。久しぶりにマックで Internet につないでみたのでいつの間にこうなったのか分かりません (結局アドレスが変わっていたのに修正していなかっただけでした--4/5)。まあ一応ダウンロードしましたが、エラーで止まることが多いのはやはり古いソフトだからでしょうか? バージョンアップするようですからそれに期待します。いずれにせよ、お薦めです。

1998-03-29

3.IBM 仕様公開の理由

 何故 IBM は PC の仕様を公開したのでしょうか? 簡単な説明では「自社のパソコンを普及させるため」などと書いてあるだけですが、もっと詳しい理由を知りたいものです。現に IBM はクローンがあふれているのを嫌って、独自仕様の PS/2 を出そうとして失敗しています。1986年、コンパックが「デスクプロ386」を出すことで攻守逆転し、今日に至っているのですが、これはもちろん IBM が望んでそうなったわけではないでしょう。

 ロバート・X・クリンジー『コンピュータ帝国の興亡』(アスキー出版局)には当時の状況に関連して、ほぼ次のような理由がかかれています。

 どうも、進んで公開したとか、互換機を奨励したのではなかったようですね。そのほかに何か理由があったのでしょうか?

1998-04-20

4.Wiodows95からLinuxパーティションをMount

 Linux から Wiondows95 というか DOS のドライブあるいはパーティションをみることはできるけど、Windows95 からは見えない。html などの文書が Linux のパーティションにあるときなどいちいち立ち上げ直さなければならないと思っていました。なんと、Windows95 から Linux のパーティションを Mount 出来るツールを見つけました(Peter van Sebille)。Read Only ですが、おもしろい。ただしまだ不安定で、特定のフォルダをのぞこうとするとリセットがかかることがあります。また私のところでは umount に失敗してしまいます。しかし、これからが楽しみです(0.17はテストバージョンのようですが、安定しているようですし、unmountのオプションも有効です[98/05/31])。

 ハードディスクも狭くなってきたので、秋葉原に買いに行ったら、6.5GB で税込み 29120円(Seagate)でした。1GB あたり 5000円だから、一年前の半分の値段になっていますね。4GB を Windows に、2GBを Linux に割り振りましたが、贅沢になったものです。すぐにいっぱいになりましたが(^^;

 最近は本業の方に手がかかって、パソコンで遊ぶ時間がなくなりましたが、CD-R がまた不安定になったことが心配です。メディアを選ぶようになってしまいました。今まで正常に書き込めていたメディアで失敗するようになり、違う企業のメディアでは大丈夫とかいう状態になっています。まあアキバで買った132円/1枚の LEAD DATA のものが一番調子がいいのですから、まだ運がいいのでしょうね。

 私がこのようにいちいち細かい値段を書き連ねているのは、職業病です。よく人に灯油の値段がいくらだとか聞いて回るのでうるさがられます。しかし私は毎年「灯油の値段は通産省が watch していたが・・・・」などと講義しているので、どうしても細かい値段が気になるのですね。

(1998-05-26)

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5.金利を何故上げないの

 日銀政策委員(審議委員)が変わっても、公定歩合(0.5%)を引き上げないどころか、引き下げの機会をうかがっていると伝わっていますが、何も変わらないこの状況には本当にがっかりさせられますね。このまま低金利政策を続けても、銀行を甘やかすだけで、ちっとも改善になりませんよ。ますます円安が進み、アジアの金融危機を深刻化させるおそれもなしとしません。政府が一方では低金利政策を固持しながら、他方では円安を嫌って円買い介入をしているのも矛盾ですし。

 金利を下げるという金融緩和政策で日本経済を浮揚しようという議論の根拠になっているのは、現在は実質金利が高いという議論です。つまり、名目金利は低いが、物価が下がっているので実は実質金利(名目金利から物価上昇期待率を引いて求めます)は高いのだ。だからまだ金利の引き下げの効果はあるという議論です。

 しかしこの議論は両刃の剣です。実質金利の点でいうなら、金利を上げて1200兆円といわれる個人金融資産の利子所得が増大し消費が増えれば物価も上がって実質金利はむしろ低下するというシナリオも可能です。要するに実質金利論は利下げの根拠にもなり得ますが、利上げの根拠にもなるのですね。実質金利というのはもともと機械的な計算で求められるものではなく、期待金利ですから簡単に実質金利といわれるとどうもごまかされまいと警戒してしまいます。

 金利上げ論は政治家の民衆におもねる感情論(年金生活者がかわいそうという議論)からくるとばかりは言えません。最近の日経論説委員(名前は忘れました)の囲み記事にもあったように、1%利子を上げれば分離課税で20%の税収2.4兆円をあげられ、減税分を回収できます。低金利は銀行を救うため、あるいはその不良債権を処理するためという暗黙の了解だったような気がしますが、不良債権の処理は全然進んでいませんから、かえって逆効果(モラルハザード)でした。

 ただし、一般論として利上げ論を展開するのは難しいのかもしれません。今の状況はケインズのいう「流動性の罠(liquidity trap)」の状況ですから、基本的には財政出動が必要です。その点に英知を集めることが大前提です。それしか期待成長を引き上げる方法はありません。私はこの点でおもしろいアイデアを知っていますが、次の機会にでもお話したいと思います。

 植田審議委員の金利ではなく数量制御による政策への転換というのも、あるいは苦しい言い方でこれ以上の利下げに反対しているのかもしれません(実は逆で利下げを主張していると報じられていますが)。しかし「流動性の罠」の状況下ではマネーサプライを増やしても利子率が下がりませんから、具体的な内容を明らかしてもらわないと、どういう政策を採ったらいいのかの方針はでません。(以後、明らかになってきたのは、マネーサプライを増やしてインフレ期待をあげ実質金利を引き下げようという議論のようですね。円安政策そのものといってよいのではないでしょうか?)

 それにしても、具体的な政策がなかなかでてきませんね。公定歩合の引き下げは見送ったとかいう口先介入(「いつでもその用意はありますよ」という思わせぶりないいかた)ばかりでは白けます。

 ということで、利上げ論は、資産効果(金利所得の上昇)、為替レート効果(円安のデメリット)、銀行のモラルハザードなどを理由に展開するしかないのでしょうか。全く手詰まりです。(ロシアではルーブル防衛のために公定歩合を150%にしたということですが、1996年初めまで150%だったらしいのでそれほど唐突のことではなかったのですね。)授業ではいつも、金利引き下げは必ずしも貯蓄を減少させない、金利の引き上げは必ずしも貯蓄を増大させない(消費を拡大するかも知れない)、と説明しているのですが、あまり教科書的議論を展開するのも、分かりきった話で気恥ずかしいものです。それともそんな教科書的知識さえみんな欠けているのでしょうか??

 実質金利が期待成長率と一致することが長期均衡ですから、期待成長がプラスである限り(まだ国民は日本全体がだめになり沈没するとまではあきらめていないでしょう)、いくら金利を引き下げても、実質金利をプラスに保つように物価を引き下げることによって調整されるのもむしろ自然です。そうなると金利引き下げがデフレスパイラルを生んでいるとも言えるかもしれません。みんなが成長を諦めれば調整インフレ論が期待するように実質金利も下がるでしょうけど、金利(期待成長)はまた上がると思っているから貨幣は退蔵され(流動性の罠)、企業は安くしてでも売り込もうとするのではないでしょうか。この点を論理的・実証的に詰めてみたいものです。金利を下げても効果はないという議論でなく、金利を上げるべきだという合理的政策論がでてこないのでしょうか。

(1998-06-12)

最近の岩田規久男編『金融政策の論点』(東洋経済新報社)を読むと、斉藤誠氏の論文(初出2000円春『エコノミックス』)が、金利引き上げ論ですね。中長期国債買い切りオペと金利引き上げ論の違いは、金利上昇によるキャピタルロスという債権側負担を、政府から民間に広げることにあるという総括がなされていますが、現在のモラルハザードを断ち切るのが目的ですから当然の帰結ですね。しかし、やはり伝統的な観点からは貨幣の量的拡大による金融緩和しか手がないということのようです。短期国債はもうだめだから中期国債で。それが無理だろうというのがわれわれの主張になりますね。

(2000-11-26)

6.急に経済問題の話がでたのでついでに

 円レートが急落して、ついに146円になってしまいましたね。株も下がっているし。急に経済問題の話がでてくるとは自分でも驚きますが、ついでに利息のことについての感想を付け加えておきます。

 インターネットにも預貯金金利の比較表を載せているサーバがあるのですが、新聞と同じく、たとえば「ニュー定期の一ヶ月定期」については全然ふれていませんね。雑誌やテレビなどでは平気で触れているのに。新聞などに書けない事情は分からないでもないですが、やはり公式的には触れにくいのでしょうか。それとも得する情報はやはり金を払わなければ教えられないとか? それも一理ありますが、はっきり言ってがっかりさせられます。みんなが何のために表を見に来るのかを無視して表を作っているとしか思えません。といってここで表を作るつもりもありませんけど。

 しかし実際の金利の決定プロセスは、たとえば一千万以上の定期なら0.2%上積みしますとか、相当の相対取引の面もありますからね(どことはいいませんが)。つまり、一流の銀行だって店頭に貼ってある金利表は当てになりません。裏金利?(歩積み両建て)みたいなこともありますし。逆に言えばそのようなことが日本の金融機関の信頼を失わせているのかもしれません。もっともそんなことはどこの国でも同じでしょうが。

(1998-06-15)

7.調整インフレ論が急浮上

 あれから、寿崎雅夫氏の利上げ論(『日経新聞』1998-7-6 )なども出ましたが、通貨供給を増やしてインフレ期待を高めようという、調整インフレ論が急浮上してきたようです。さてそう都合よくマネーサプライが増えてくれるものでしょうか? 流動性の罠にはまって退蔵されるだけかもしれません。円安も心配だし、無理矢理実質金利を下げることの効果は確かなのでしょうか? 財政政策(公共投資、減税)は手続きが面倒なので金融政策にしわ寄せがきているのでしょうが、景気対策はあくまで財政で、金融政策は貨幣価値の安定(物価と為替)に特化するのが健全な policy mix だと思います。

 いずれにしてもこれだけの政策の混迷は記憶するに値します。面白いといえば面白い。今後の動きに注目です。

(1998-07-09)

8.Word 97 では HELP ファイルを作れない?

 バグで有名な? Word 97 へ update をしたのは、他の人がやたら Word 97 のファイルを送ってくるからです。通常の文章ではあまり不都合は起きていないのですが、CAS の HELP ファイルを作成していて困った事態に直面してしまいました。Word 97 で保存した .rtf ファイルをコンパイルすると、

>Invalid default font number in g:\delphi2\help\tools\.\Casw.rtf.

>The RTF file g:\delphi2\help\tools\.\Casw.rtf is corrupted at offset 286.

などといわれて、HCW あるいは HC31 でコンパイルできません。Word 95 でつくった .rtf を読み込んで、一文字削除して保存しただけですから新しい要素を加えたわけではありません。Word 97 による rtf への変換がおかしなことをやって、古いコンパイラーとあわないのでしょうか。

 このままだと HLP ファイルを作れなくなるのですが、困ったことになりました。Delphi Ver.2.0J ではさすがに古くなったのでしょうか。世間では Version 4 の話題でもちきりですから、 いま update する気持ちにはなりませんが。

 古い Word 95 に戻すか? それとも他のツールを使うか? HELP ファイルは手抜きの限りを尽くしているので、そのまま放っておくか?

 もともと HC31 ってエラーがでても原因が分からず対処しようがない困ったツールで、ヘルプファイルが HTML 形式が多くなってきたのはそんな不可解なツールだからでしょうね。

p.s. 唐突ですが、最近献本でいただいた佐藤誠三郎『笹川良一研究』(中央公論社)は面白い本です。衰えない研究心に感服しました。一冊の本を読んで自己の認識を改めさせられるというようなことがあり得るのですね。私は最近そんな本に出会っていないので本当に寂しい思いです。本を読んでいないからでしょうが。

 その本に、奇妙な病気のことが載っています。「笹川は静かにしていると心臓の心室と房室との伝達系に障害が生じるのに、身体を動かしていると正常になるという特異な心臓の持ち主である」(p.33)というのですが、そんな病気があるのでしょうかね。

p.s. もう一つ付言すると、調整インフレ論に関しては、むしろ反対論の方が目立つようになりましたね。新聞でも WEB でも。読売新聞は調整インフレ支持のようですが。

(1998-07-16)

 結局 Word95(Ver.7) を復帰させて、二つのバージョンをHDにおいています。かなりの無駄遣い。

(1998-07-17)

 ありがたいことに、この文章を読んだ熊谷明恭さんから、Word95 で Word97 の .doc を読込・編集できる「コンバータ」があることを教えていただきました。Excel の方は viewer があるようですが、4MBもあるので試していません。

 他にもこの互換性のなさに不便を感じている方が多いのでしょうね。今度の Word98 はどうなるのかな? Mac の Word との文書の互換性もいろいろ複雑で、本当に困ったもんです。

(1998-07-23)

9.貸し渋りはなぜおこる

 本来日本の銀行の与信量が過大なのだから、貸し渋りが起こるのはむしろ当然の流れだという議論もありますが、正常の企業までもが銀行の貸し渋りで倒れてしまう可能性もあるといわれると、やはり貸し渋りはいけないことなのかなとも思ってしまうものです。だからといって政府がいくら貸し渋りはやめるべきだといっても、なかなかなくならないという状況が続いています。銀行としては自己資本比率(いわゆる BIS 規制で 8% という最低限の基準があるのです)を保持するためには分母の資産の方を圧縮しなければならないからだという理由です。今まで日本は、この自己資本比率を高めるために、「劣後債・劣後ローン」を、さらには「優先株」を自己資本に含めるなどという弥縫策(広辞苑にはこの弥縫策という用語がありませんね)を繰り返してきたのですが、ほとんど効果はなかったようです。今でも優先株をとか言っていますし。

 どうも貸し渋りの理由を銀行の不良債権問題に絡めすぎているのではないでしょうか。経済理論的に言うと、貸し渋りとは借りたい人が貸したい人より多いという超過需要の不均衡状態です。これは価格が伸縮的であれば簡単に価格(利子率)を上げて均衡にたどり着きます。ということは貸し渋りの状態が長く続くことは利子率の価格規制(price control)のため、資金不足が生じていることを意味します。利子率が低すぎるために資金割り当てが起こっていることを意味します。利子を上げれば貸し渋りという社会問題はなくなります。個々の銀行によってではなく市場によって選別されるのですから、企業によっては困ることになるでしょう。しかし、その方がいいという企業もあるでしょう。

 ここに金利引き上げ(引き上げると言うより正常に戻す)論がでてくる余地があります。最近の日経新聞(1998/8/2)で Allan Meltzer 教授は金利引き上げ論を「あらゆる経済原則に反しますね。消費者の視点にのみ立った意見です。資金を借り入れている小企業が立ち行かなくなります。完全に間違った意見です。」と評しています。これが一般的な意見でしょう。

 しかし、銀行に頭を下げながらぺこぺこするより、市場によって選別されることを好む小企業もあるのではないでしょうか。金利を上げても借りたい企業にはかすというのが市場の選別です。確かに立ちゆかなくなる企業はでるでしょうが、企業淘汰という当然の過程でしょう。小企業が困るからと言う議論には常に胡散臭さがつきまといます。貸し渋りが悪いのはあくまで正常な企業が不当に倒れるかどうかであり、その選別作業に今の金融機関が適しているかどうかです。

 「貸し渋りでやっと借りられたけど金利を上げられた」と嘆いている企業人がいましたが、市場金利が本来高いのですから正常な商取引でしょう。よけいな労力をかけて借りたのに金利を上げられたら不満を抱くのは無理ないですが、市場の公的金利が正常に戻れば、正常な取引をも不当呼ばわりすることはなくなるでしょう。

 利子率に対する価格規制が教科書どおりの逆効果を生じさせているのが今日の貸し渋りの状況ではないでしょうか。超過需要が恒常化すれば、行列という無駄な労力が生じるとともに汚職が横行します。個別の情実に資金の流れが左右されてしまうのです。これは price ceiling の典型的な効果です。

(1998-08-03)

10.統計コンサルティング

 こういうホームページを開いていると、統計分析の一般的なコンサルティングに関する質問が迷い込むのはやむを得ないのでしょうか。

 以前、あるパソコン通信の統計関係のフォーラムに常駐していたこともありますが、その時も「こういう問題はどういう手法を使ったらいいのでしょうか?」などといった質問が、突然でてきたりしたものです。暇なら答えもしますが、というか、たまたま答える人もいるでしょうが、ほとんどは無視されます。当然ですよね。その手法が分かれば問題はすべて解決してしまうではないですか。そんなことに答えていたら、個別の問題すべてに答えていかなければならない。しかも、カスタムメイドのコンサルティングだから、お金はいくら掛かっても文句を言えませんね。

 そんなことを知ってか知らずか、ダイの大人が相変わらず、調べればすぐ分かるようなことを含めて質問してくるわけです。中には匿名で質問する人もいたりする。失礼な! 見も知らない人に、時間と労力を使っていちいち答える義務はないはずですよね。しかも、仮に答えても、結局どうなったか、礼とはいわないまでも返事もない。ま、こういうことが続くと、面倒なホームページともおさらばです。

 まあいろいろな質問も、詳しく状況を説明してもらえばそれなりに興味深い場合もあり、自分の勉強にもなるのですが、質問する人は詳しい状況の説明も怠りがちだし、メールで簡単に説明できる場合は少ない。

(1998-08-22)

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