恐竜王国・友の会　会報記事 「2000夏 発掘ツアー報告」by MINEW

　なぜ恐竜発掘なのか、とよく聞かれる。それを説明するのはとても難しい のだが、恐竜発掘は「宝探し」なのだ、と言えばかなり感じが伝わるんじゃ ないかと思う。あるのかないのか分からない、でもひょっとすると世紀の 大発見があるかしれない。お、あそこに見える小さな白いかけらはなんだろう…、 近づきながらわくわくする、この感じがたまらないのだ。

　今年のモンゴル・恐竜発掘ツアーはウランバートルから南東へ列車で約５時間、 さらに車で２時間の場所にある、フルンドッホというところが発掘現場だった。 ここは５年前に新種のダチョウ型恐竜が発見されたモンゴル有数の 化石産地である。発掘ツアーには５年連続で参加しているが、 この場所は最初の年（１９９６）に訪れて以来２度目の来訪となる。 懐かしい、見渡す限りの草原。ゆるやかにくぼんだ、幅１５ｋｍの盆地のへりに キャンプは設置されていた。

　ツアー日程は８／１２〜２６の約２週間、参加者は１２人。 ただしそのうち１０人は１週間コースで８／２０まで。 ２週間の延長コースを選んだのは僕を含む２人だけだった。

　キャンプ地に到着したのは８／１３夕方。その後４日間、１２人で数カ所の 発掘ポイントを探し回り、翼竜の歯、翼竜の指骨、イグアノドンのかけら、 二枚貝、亀、などを発見したが、ほとんどは部分骨の単体が見つかったもの だった。

　８／１７夕方、１週間コースの参加者とバルスボルド博士たちは雷雨の中 ウランバートルへと帰って行った。次の日からは４人の現地スタッフと、 ２人だけでのキャンプ生活となった。化石探索は単独行動とし快晴のもと 一日中歩き回るが、この日めぼしいものは何も見つけることができなかった。 この辺に出そうとか、なんの目星もないので、ただ勘にまかせて歩き、 地面をじっと見つめる。集中し消耗の激しい１日が過ぎた。

　８／１９の午前、ある斜面で白い化石の破片が沢山散らばっているのを 見つけた。大きさからイグアノドンと思われる。これが始まりだった。 周囲を良く見て小石や砂を掃いてみると、なにやら埋まっているものがあり、 それは太い１本の脚の化石のようだった。長さは３０ｃｍほど、これまでで 最も大きい。やった、やっと見つけたぞ。この骨を半分ほど露出させた後、 さらに周囲を注意深く観察し、別の大きな骨も見つけた。長さ２０ｃｍほどで 長平べったくゆるく曲がっている。それを掘り進めていくと、なななんと、 歯が、並んで現れた。と言うことは、アゴだ！　上下の両アゴがある。 やっほー。これは嬉しい。（写真１）

　再びキャンプ地にやってきたバルスボルド博士にこれらを見てもらうと 「これはいい化石だからモノリットにして取り出そう」ということになった。 モノリットと言うのは化石を掘り出し安全に運送するための処置で、 化石の周りを木枠で囲み、石膏を流し込んで固定するもの。 博士指導による作業は手慣れたもので、３時間ほどで化石は３０ｃｍ四方の 木箱に収まった。ふぅ。

　その夜、博士はまたウランバートルへと帰っていったが、発掘は続く。 次の日、アゴ化石のあった隣に少し露出が見つかっていた化石をたどって 続きを掘り進めてみると、それは長く細くつながる３０ｃｍほどの骨で、 その先にはまた別の骨の先端が現れた。それを掘ってゆくとまた別の長い骨が… 　なんかもう、笑うしかない。「掘り当てちまった」って感じ。 めちゃめちゃ楽しー！　見渡す限り羊しかいない中、ひとりでにやけつつ 土を掘り返している。

　骨の連続は続き、結局７本の長い骨が現れた。（写真２）　さらに続きも ありそうだ。しかし残念なことに、もう博士はいないし残された時間も 少ない。ここまで掘り出したが、固めて持ち帰ることができないのだ。 これはどうしようもないので、残念だが化石に土をかけて埋め戻し、 分からないよう元通りにした。この場所の正確な位置は僕の頭の中にだけある。 来年か、数年先か、またこの続きを掘りに来ることができるだろうか？

　後ろ髪をひかれつつも発見に充実した心持ちもあり、８／２４の深夜、 フルンドッホを後にして帰国の途についたのだった。

（追記）2002 年夏、この続きを発掘しに行ってきます。(2002/07/28)