香港2



(中国西北編から)

1.ビザの取り直し(5月31〜6月1日)

 結局、宿に荷物を置いて落ち着いたのは夜の8時前だった。 今回も宿はゴダイゴ(D70$)にした。

 翌日、宿で紹介してもらった代理店(華世旅行社、2367-9139、cwt@mail.hkisl.net)に行ってみて中国6ヶ月マルチビザの申請をした。 ガイドブックには申請の翌日受け取りで$650との事だったが、大抵の代理店では同じ期間でも$400で取得できるらしい。

 翌日、代理店を再び訪れると公安発行のビザのスタンプがパスポートに押されてあった。 大使館などで申請すると大体1〜3ヶ月らしいが、簡単に6ヶ月ビジネス・ビザが取れるのは出入りの多い香港ならではだろう。 ただし、この方法では同じパスポートに前回の中国ビザがないと発行してもらえない。 実績がないとダメということなのだろうか?

2.実は!(6月1日)

 胸の痛みと咳が直らなかったのでかぜにしては変だと思い、保険会社と提携している診療所で見てもらう事にした。 予約の電話をすると、日本語で会話できた。 かなり日本人が利用しているのだろう。

 指定の時間の前に到着すると、電話で応対したらしい受付の女性に呼ばれて手続きをした。 彼女は広東語が上手な日本人なのか?日本語が上手な香港人なのか?解らなかった。

 ドクターの日本語は受付嬢ほどではないが、会話する分には問題無かった。 宿の人の予想通り、レントゲンを撮って「軽い肺炎」と診断された。 特別悪いということではないらしい。
 日本ではかぜをこじらせて肺炎になるという重症のイメージがあるが、北京や西安のような大気汚染のひどい所では簡単になってしまうみたいだ。 とはいえ、肺炎とは驚いた。

3.日に日に日本化する香港人

 見分けた所でどうするというわけではないが、韓国人や中国人、台湾人と日本人との見分け方に顔つきや服装(メガネの形を含む)を見る。 女性の場合は化粧の仕方も地域によって違ってくる。
 ところが、ここ香港では日本人と変りないメークをする女の子が結構いる。 それだけ、日本の影響を受けやすいということなのだろう。

 九龍の旺角(Mong Kok)には日本の芸能人の写真集、映画やテレビドラマのVCD、夜になると海賊版やアダルトものを売る店がたくさん入ったビルがある。 また、深水[土歩](Sham Shui Po)にはPCのハード・ソフトなどを、夜になるとソフトの海賊版も売る店が入ったビルがある。 どちらも芸能関係、アダルト物は日本物が幅を利かせている。

 一般的に中国系が魚を食べる時は加熱するが、日本の観光案内のテレビ番組ではレポーターの香港人たちはごく自然に刺し身を食べていた。 日本料理が手軽に食べられる環境にあるからだろう。

 そんなわけで香港人たちは日に日に日本化しているらしい。 香港は大陸や東南アジアの中国系にも影響力があるので中国系社会も日本化していくかもしれない。

4.楽な越境(香港→潮州、6月5日)

 胸の痛みと咳が緩和してきたので、香港に訪れる前に行くつもりだった華僑の原籍地がある広東省の東部と福建省へ行く事にした。 まず最初に東南アジアの華人の出身地、潮州に行く事にした。

 深[土川]火車站近くのバスターミナルから潮州の隣町で経済特区の港町汕頭(スワトウ)へのバスがあることはわかっていたが病み上がりなので高いが($220)楽をして香港の旺角から出ているバスを使う事にした。 バスは1日に7:00発と15:00発の2便だが、早めに宿探しをしたかったので7:00発の便を前日に予約した。

 出発の10分前に旺角のバス乗り場に着くと、広州から深[土川]までのバスと同じく豪華なバスが待機していた。 女の子の車掌はいないものの、ミネラル・ウオーターのサービスもあった。
 乗客はほとんど香港人らしい。 旺角を出発してから2回停車してお客を拾って深[土川]火車站近くの羅湖(LoWu)ではない東の沙頭角(Sha Tau Kok)に着いた。 時間が早いこともあるが、ここは羅湖と比べると全然暇らしく香港人たちと一緒に審査を受けた。

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(中国華南編から)

5.怪しい香港(7月8〜17日)

 香港では、5月に北京にいたときに知り合って以来メールやりとりをしていた大平君と事前に宿で会う約束をして無事再会することができた。 彼は北京で別れた後に東北部の吉林省長春の大学に滞在して中国語の勉強をしていて、香港にはビザの取り直しを兼ねて遊びに来た。

 彼と再会した翌日の夕方に香港についての書かれているいろんな本に紹介されている旺角のネーザンロードに面している「信和中心」というビルに行った。 「信和中心」は1階の入口付近は普通のビルだが「オタクビル」とも言われていて、日本のアイドルの写真集やポスター、漫画本、PCのソフトなどを売る店が集まっている。 それだけ「オタク」なものが需要があるということだ。

 4〜5階にはインドネシアや中国でポピュラーなVCDやCDの店が多い。 アニメや映画、PCのソフトが主でPCのソフトの中にはラベルがカラーコピーで「いかにも」と言った感じのものもあった。
 また、映画の中には「アダルト」ものもあった。 日本ものと西洋ものが2分されているらしい。 あるアダルト専門店の中には日本もので西洋などポルノ解禁で無修正ものが売買できる国向けの英語版が置いてあった。

 個人的には購入したかったが、まだ先があるので諦めざるをえなかった。 冷やかしていると突然辺りが騒然としてきた。 店の入口のシャッターに店員が3人、いつでも閉められるように手を掛けていた。 あわてて大平君と外に出ると轟音とともにシャッターが閉められ、店の入口にたむろしていた男達は三々五々に散って辺りは静けさに包まれていた。 あっという間の出来事だった。 恐らく、香港では今でもこの手のものは合法化されてないのだろう。 そこで警察の手入れが時々あって、偶然その時に遭遇したのだろう。

 旺角は九龍側で随一の繁華街で東京でいえば新宿にあたる所らしい。 新宿同様、風俗店が数多くあり怪しい部分もある。

6.野宿 IN 中国(7月8〜17日)

 宿泊していた日本人宿に昼間に掃除に来る日本語がはなせるおじさんからこんな話しを聞いた。 なんでも、その日のお客がいない昼間に友達の家に泊めてもらっているという汚い格好をした日本人の若者が来て宿の事を聞いて宿に置いてある日本語の本を読んで帰っていったらしい。 おじさんは初めての事だったので不思議そうだったが、私も日本人宿が満室などで宿泊できないときによその宿からやってきて、本や情報ノートを見せてもらった事があるので別に問題ないと話しておいた。 しばらくするとある事を思い出した。

 5月の末に西安にいたときに宿に髭面の日本人の旅行者が部屋にいて、同じ部屋にいた別の日本人と話しをしていた。 なんでも彼は西安の友達の家に泊めてもらっているらしいがいずらくなってきたので宿の様子を見に来たそうだ。
 彼は6月末に上海の宿でも見かけた。 なんでも別の部屋にいるらしいがシャワーの調子が悪いのでシャワーを借りに来たらしい。 それから、香港の宿情報など旅行情報をその部屋にいた旅行者に聞いていた。

 宿に来たのは時期的に見てひょっとしたら例の髭面の日本人かもしれないと思った。 掃除のおじさんに聞いてみると特徴が一致していた。

 上海でシャワーを借りに来たということで、日本の沖縄県石垣島のある宿で宿の人の愚痴を思い出した。 石垣島のキャンプ場には日本のあちこちからテントを持ってキャンプしている旅行者がいる。 中には図々しいのがいて、その宿に宿泊している知り合いを訪ねる振りをして宿の人の目を盗んで勝手にシャワーを浴びるそうだ。

 あくまでも暇な一旅行者の勝手な推測だが、彼は宿泊施設を利用せずに野宿をして、事情を説明しやすい日本人が多い宿でタダでシャワーを浴びて情報収集していたのではないか?
 もしそうならば、旅行の目的が野宿や他の旅行者より極端に安い費用で旅行するという事なのだろうか?。

 世の中にはいろんな人がいるものだ。

7.人民小姐、飲茶を楽しむ(7月13日)

 インド旅行からの帰りに香港に立ち寄った伊藤さんと一緒に香港人の利用が多いという店で飲茶をする事にした。

 その店は午前中は1皿8元と午後より安いそうだ。 中に入ると常連さんらしい新聞を広げた人に混じって我々同様、観光客も来ていた。
 初めてということでついつい多く注文して「食い」に走ってしまったが、他の人達はおしゃべりしながら優雅に楽しんでいるらしい。

 前のテーブルにはどのような間柄かわからないが、中年男性と香港の子にしては地味な格好をした20歳くらいの子がいた。 彼女は口に物を入れたまましゃべったり、楊枝を豪快に使ったりしていた。 そして、しぐさを見ていると推定年齢よりどこか幼い。
 伊藤さんも大陸経験者なので聞いてみると彼も彼女は大陸(中国)の子だろうと思っていた。

 中国の沿岸部の先進地に住んでいて高速バス、鉄道の硬臥を利用しているような中産階級やほとんど英語が通じない中国で少しでも英語が話せる高等教育を受けたらしい若い女性のしぐさは落ち着いていて、日本人とあまり変わらないがそれ以外の女性は若くても私から見ると堂々と人前で鼻掃除をしたり唾を吐いたりと品が無いことをしたり、しぐさが幼く見える。 これは中国に限らず、インドネシアやラオスといった国でもそんな若い女性がいる。

 そんな彼女たちも鼻も恥じらう乙女の面を持っていて、意外な事で恥ずかしがる。 それが彼女たちにとっていい、悪いか別にして私から見て品が無い事は恥ずかしい事ということを若いうちに上手く伝えるとやらなくなるだろう。
 しかし、全ての人間から幼さや欠点を無くすとつまらない世の中になってしまうだろう。 難しいものだ。

8.我ら潮州人(7月8〜17日)

 既に中国華南編で記述しているが、6月の初めに広東省東部の潮州を訪れた。
香港入りする前に広州の町を昼頃歩いていると「潮汕料理」という看板があった。 そこで食事を済ませて女主人に「あなたは潮州人ですか?」と聞くとビックリした感じで「あなたも?」と聞き返した。 日本人であることを告げると「まあ座って!」と椅子を出した。 去年訪れたタイ、マレーシア、シンガポールで潮州人の華僑会館や食堂をあちこちで見かけた事を告げると「そうだろう。 潮州人は偉いだろう!」と言った感じでかなりご機嫌になった。 そして広州にも大勢の潮州人がいることを教えてくれた。 彼女は林さんで、以前沖縄旅行で知り合った横浜の福建籍の女性も林さんだった。 香港で滞在していた宿の掃除のおじさんも林さんで、御両親は福建と潮州だそうだ。 林さんは中国南部沿岸に多い姓らしい。

 宿の大家さん陳さんは海外在住の華僑向けの宿の経営もされている。 ある日、陳さんの宿が満室だったのか?華僑のお客さんが空いた部屋に宿泊に来ていた。 家族連れと年配の御夫婦、おじさんの二人組みなど若い人はいなかった。 皆、とても愛想が良くて目が合うと笑顔で挨拶してきた。 大陸の人は愛想の無い人が多いが、潮州など広東の人は表情豊かだ。 東南アジアに近いせいだろうか?それとも世界を渡り歩くには笑顔が重要ということを経験上悟ったのだろうか?

 翌朝、おじさんの二人組みが挨拶をして話し掛けてきた。 二人が話している言葉を聞くと「キャア」など潮州語の発音が聞こえたので「潮州の方ですか?」と聞くとその通りだった。 おじさんたちはカリフォルニア在住だそうだ。 ちなみに家族連れはカナダの人らしい。 掃除の林さんと大家さんの陳さんの会話も潮州語らしい発音が聞こえてきた。 どうやら皆さん潮州人らしい。 香港にも潮州の人が大勢いるらしい。

 広州に着いてからなにかと潮州と縁がある。 しかし、東南アジアや北米だけでなく世界のあちこちに潮州人がいるのだろう。 おそるべし潮州人!

9.自分の事は自分でする(7月8〜17日)

 香港を立つ前に80歳近い高齢個人旅行者がやってきた。 彼はほとんど講義を受講してないが北京の大学に在籍しているらしい。 香港にはビザの取り直しに来ただけのようでロビーに誰かいると部屋から出て、いなければずうっと部屋にこもっていた。
 彼の話しでは15年かけて中国全土をまわったそうだ。 そこで、あまり旅行者が訪れない寧夏回族自治区のことを聞いたのだが行った事が無いらしい。 彼の言う中国には寧夏回族自治区は含まれてないのだろう。
 彼の話しでは、病気で膀胱を摘出したそうだ。 先は長くないらしい。

 以前、インドネシアを旅行中に糖尿病で足が不自由な西洋人の高齢個人旅行者の荷物持ちをさせられたことがあり、それ以来高齢個人旅行者の印象が悪くなった。 そういう人達は結局誰かをあてにして、迷惑になるだけなのだ。 何かあったらどうするのだろうか?偶然その時、近くにいた人達が止む無く処理させられるのだ。

 私は決して高齢旅行者を否定するわけではない。 自分の事は自分で出来る元気で明るい高齢旅行者がいるのを知っている。 彼らを見ていると何か希望を感じる。
 自分の事は自分で出来なくなったら一人旅は止めるべきだ。

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(中国西南編から)

10.”さわやか”な選挙(9月4〜8日)

 武漢を出た翌朝、9月4日の朝に列車は広州火車站に着いた。 時間が早かったせいだろうか?夏の移動シーズンが終わったからだろうか?火車站前の人込みは以前程ではなかった。 今回は火車站から人民北路を南へ歩いて15分ほどの東方賓館から100HK$の香港、旺角までのバスに乗った。 こちらの方が羅湖の国境よりも混雑してない皇崗の国境を通るしあまり歩かないので楽だ。 値段も羅湖の国境を通るのと変わらない。

 こうして、昼過ぎに香港、油麻地の日本人宿ゴダイゴに無事チェックインした。
 今回はチベット帰りのベテランの面々が宿泊していて、いろいろ濃い話しを聞けた。 今回は諦めたものの、いつかはチベットに行ってみたいものだ。

 さて、香港では9月12日に日本の国会に当たる立法会議員の選挙が行われるとのことであちこちに選挙ポスターが貼られていた。 日本の選挙ポスターの様にスーツを着た人が一人で真面目な表情をしているポスターもあるが、多かったのは同じ政党の候補がおそろいの明るい色のポロシャツを来て笑顔で”さわやか”さをアピールしているものだった。 この人達が当選した暁には”さわやか”な政治をするかは別として誰がなっても変わらない日本の暗い選挙よりも明るい感じがする。

 今回は香港では体調が良かったのでそれなりにB級グルメもしたが、中国の次に訪れるパキスタンのビザの手続き、不要品を実家に送ったり買い物をしたりで結構忙しかった。
 香港に来てから5日目の8日の朝に旺角から例の100HK$バスで香港を去った。 何度か香港に出入りしていたが、これから新疆を経てパキスタン、インドへ抜けるのでとりあえず今年は香港を訪れる予定はなくなった。 次回はもう少しのんびりしたいものだ。

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