Heart Warming Ekiden Story YELLOW GANGS

「がんばっていきまっしょい」について



1998年に日本映画「がんばっていきまっしょい」が公開されました。夏目漱石の「坊ちゃん」で有名な愛媛県松山市が舞台で、一人の少女が女子ボート部を作って活躍(?)する青春映画です。実はこの映画がきっかけになって「Yellow Gangs」を書きはじめたといっても過言ではありません。

尾道を舞台にした大林宜彦監督の「転校生」や「さびしんぼう」など地方都市が舞台となった映画をけっこう好む私です。私は趣味で写真をしており、古の町並みをテーマに撮り続けています。この「がんばっていきまっしょい」も松山が舞台という事で、自身の撮影活動の参考にしようと拝見したのでした。

そんな軽い気持ちで見たのですが、この映画を見はじめていきなり涙がでてきました。松山の町並み、海のきらめきに感動したのはもちろんですが、ボート部の5人のいらだちや喜びも含めた青春の断片に痛く感動したのです。体育会系のクラブに所属したことのある人なら誰でも体験したようなエピソードの連続。エンディング・クレジットの時には、すっかり骨抜き状態となってしまったのです。

この映画を観たことにより、私は高校の陸上部時代の出来事を思い出させてくれたのです。私自身がすっかり忘れていたあの時の人とのつながりや思いが心の中から噴火し、おさまらなくなっていきました。
そんな事がきっかけで私は自分なりの「がんばっていきまっしょい」を書いてみようと思い立ったのです。

最近になってこの原作に出会うことができました。作者は敷村良子さん。初出は1996年1月に雑誌「鳩よ」に掲載されました。第4回坊ちゃん文学賞の大賞受賞作です。すでに「Yellow Gangs」を書きはじめて半年、20回目以上経過したのですが、早速買って読みました。読んでみて驚きました。確かに映画がきっかけとなり、ある程度参考にした「がんばっていきまっしょい」なので当然といえば当然なのですが、根本的な部分で共通点があることがわかりました。

1)執筆の目的が似ている


私自身は映画に出会って、大人になって忘れてしまっていたものを思い出すことができました。その気持ちを忘れない為に、自己回帰の為に書きはじめたのですが、敷村良子さんも私と似たような気持ちで書きはじめたことが後書きを読んで解りました。

1995年6月、八方ふさがり、お先まっくらの状況に私はいた。苦しかった。テレビの中で切り取られたようなオウム報道も、まさかと思う凄惨な事実ばかりで、阪神大震災の傷もまだ癒えていなかった。やりきれない気分だった。そんな時に、この小説を書いた。
ぺしゃんこになってたまるか、明けない夜はないんだ、なくしたものより、あるものを数えよう、できないことをなげかないで、できることを楽しもう。「がんばっていきまっしょい」を書きながら、私は、無意識に、自分自身を励ましていた。

(敷村良子作「がんばっていきまっしょい」あとがきより)

私自身も仕事面でも精神面でもうまくいかず八方ふさがりの状態だったのです。すべてを周りの人や環境のせいにしていてどうしようもない状態でした。そんな時に出会った「がんばっていきまっしょい」。自分自身の原点がそこにあり、その記憶を呼び戻す為の自己回帰。敷村さんも私と同じ考えだったのです。

2)エピソードでの共通点

「がんばっていきまっしょい」の続編が「イージー・オール」といいます。マガジンハウス刊の単行本に同録されています。そこで主人公の悦子が腰を痛めてボートが漕げなくなり、マネージャーに転身します。このエピソードが花山萌美のエピソードと似ているのに驚きました。また、腰を痛めて、なにもできない時に「カメラ」に出会います。これがきっかけになって最終的に彼女に将来「カメラマン」という道を選ばせます。「カメラ」が絡んでくるのも一種の共通点なのかも知れません。私の「Yellow Gangs」は記者である開田修平の視点で書かれています。彼がカメラ片手に取材しながら物語の進行を解説する形を取っていますが、これは私が写真が好きなのも一因しています。ある意味「写真」という共通点があったのもけっこう親近感がありました。

とまあこんな感じで影響を受けた映画「がんばっていきまっしょい」だったのですが、とてもいい映画です。また、原作小説も面白いです。機会がありましたら、ぜひ、ご覧ください。

原作 「がんばっていきまっしょい」 敷村良子作/マガジンハウス刊
映画 「がんばっていきまっしょい」 1998年公開  アルタミラピクチャーズ企画制作 磯村一路 監督・脚本

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※この物語は著者の体験を一部取り入れたフィクションであり、
実在の人物、団体等とは無関係です。

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