入門レベル機械式腕時計の精度を測ってみる

前回購入の、セイコーメカニカルシリーズ SARB030。
しばらく普通に使っていたのだけれど、「機械式」それも「入門レベル」という位置づけにしては、どうも異様に精度が高いような気がする。

「気がする」だけでは自分らしくないので、真剣に精度を測ってみることにした。

機械式時計の精度の測り方にも色々あるけれど、真剣に測定するのだったらクロノメーター試験(ISO 3159)、または、それを発展させた、(新)グランドセイコーの試験を使うのが妥当だと思う。この2つの方法の測定法の違いは、「12時を上にした垂直姿勢」があるか、ないかだけなので、グランドセイコー基準で試験をしておけば、クロノメーター基準の結果も計算することが出来る。厳密に言うと、その方法で計算したクロノメーター基準の結果を「クロノメーター試験の結果」とは言えない事情があるのだけれど、素人レベルであまり細かいことを言っても仕方ない。

素人としての言い訳は他にもある。まず、日差の基準とする時計がカシオのデジタル電波時計なので、秒以下の精度が無い。もちろん複数回測定して平均することで精度を上げることはできるが、面倒なのでしたくない。

もう一つの問題は温度である。測定は23℃、8℃、38℃の3温度で行うことになっているが、恒温糟などというゴージャスなものはもちろん持っていない。8℃と38℃は温度係数の算出に使うのだが、温度差さえ十分に取れていれば、定義としては厳密にこの温度でなくても良さそうである。そこで、8℃は冷蔵庫、38℃は期限切れのホッカイロを保温バッグに入れて代用した(下の写真)。23℃はもちろん「室温」で、日によって気温が違うから、日較差と復元差に対しては、より厳しい条件になるはずである。また、グランドセイコー基準の第二温度係数の算出で少々問題が生じるが、とりあえずは気にしないことにして測定を開始した。

さて。
測定結果である。

最後から2つ目の試験項目にコメントがついているが、実はここで姿勢を間違えて(苦笑)、文字盤上の水平姿勢にしていた。途中で気がついて修正したが、いずれにせよ、この日の数値は計算には使わないので、気にしないことにした。素人はあきらめが肝心である。

それはともかく、結果をまとめてみる。まずはグランドセイコー基準でのまとめと判定から。

合格基準 測定結果 判定
平均日差 -3〜+5 +1.58
平均日較差 1.8 0.83
最大日較差 4 2
垂直水平差 -6〜+8 -2
最大姿勢偏差 8 10.58 ×
第一温度係数 ±0.5 -0.63 ×
第二温度係数 ±0.5 -0.63 ×
復元差 ±5 2

さすがにグランドセイコーとは格が違うようである。8倍違う値段を正当化するためには、せめてコレくらいの差は必要なのだろう。測定結果を詳しく見ると、「12時上垂直姿勢」が足を引っ張っているようである。最初の方で書いたとおり、クロノメーター試験にはこの項目が存在しないので、もう少し希望が持てそう。ということで、クロノメーター基準でのまとめと判定である。

合格基準 測定結果 判定
平均日差 -4〜+6 +3.6
平均日較差 2 0.8
最大日較差 5 2
垂直水平差 -6〜+8 -2
最大姿勢偏差 10 6.4
温度係数 ±0.6 -0.63 ×
復元差 ±5 2

惜しいことに、温度係数がハミ出してしまった。実はこの値、測定温度差が30℃に対して日差の差が-19秒で、-19÷30=-0.63、つまり、あと1秒日差の差が少なければ、ギリギリ合格レベルだった。微妙にクヤシイが、入門レベルの機械式腕時計としては大満足である。むしろ、これがバレたらメーカーが困るんじゃないかと、余計な心配をしてみたりする。

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