お弁当の肖像

お弁当の撮影にコダックのデジカメを使っている話は以前書いたが,撮影の目的は書かなかった.これは,昼飯と晩ごはんでおかずが重複しないようにするためなのである.撮影されたお弁当の写真はリサイズされたのちに妻にメールされる.妻はソレを参考に,当日の晩ごはんのメニューを決定する,という段取りなのである.

コダックのデジカメは VGA でしか撮影できないのだが,どうせリサイズするのでその部分は特に問題ない.しかし,ホワイトバランスがおかしい(ない?)のと,マクロ撮影ができないのは少々問題があるし,何より色があまりきれいではない.また,もう一台持っているオリンパスのデジカメ (C-1000L, 85万画素) は,名器かもしれないとは思うけれども毎日持ち歩くサイズではない.そこで,さらに一台買い足すことにした.

Panasonic DMC-LC33(黒) 正面図Panasonic DMC-LC33-K

買ったのはパナソニックの普及型 (300万画素) である.いや,もちろん,松下としてはこれではなく,手ブレ補正機能付きのカッコイイ横長のデジカメのほうを「普及」させたいのだろうが,こっちの方がだいぶ安い割には中身は(手ブレ補正以外)大して違わないので,普通に考えるとこちらが普及型だろう.

さて,ではこれでお弁当を撮影してみる.比較のために,mc3 での写真を並べておく.別の日に撮ったので弁当も天気も違っているのだが,弁当箱だけは一緒なので発色の傾向ぐらいはわかるかもしれない(が,やっぱあまり参考にならないような,気が ^_^;;;)

お弁当の写真mc3 で撮影 お弁当の写真LC33 で撮影

かなり小さくリサイズしているのであまり違いがないようにも見えるが,LC33 の方が発色は豊かだし,等倍でも偽色はほとんど無い.オートフォーカスの分でシャッターラグは mc3 よりも大きいが困るほどでもないし,何より虫眼鏡を持ち歩かなくてもマクロ撮影ができるのは助かる.昔の機械と比べれば当然かもしれないが,とにかくイイ感じである.












前段落までで文章自体を終わりにして良いならば楽なのだが,そうは問屋が卸さない.このサイトは本質に切り込むのが身上なのだから,「買った,撮った,写った」というわけには行かないのである.過去そういう文章もあったような気はするが,いつものように都合よく忘れることにする(笑).

そもそもカメラ,特に全自動カメラというのは,困った機械である.電源を入れてシャッターを押すと,とりあえず何かは写る.ピントも露出も機械があわせてくれるので,記録そのものはたいてい正確に行われる.しかし,構図を決めるのは人間なので,構図がダメならダメな構図がダメな写真として正確に記録されるのである.筆や絵の具で絵を描く場合,絵がダメならそれは絵を描いた人間がヘタなのである.ところがカメラの場合,写真がダメなのはしばしばカメラのせいなのである.撮影者がカメラマニアの場合は,ますますカメラのせいなのである.そしてしばしば,レンズの森やボディの沼の暗闇の中に消えてゆくのである.クルマの世界と少し似ていないだろうか.

ともあれ,今度は少し工夫して撮ってみることにする.参考にしたのは『標準デジカメ撮影講座』(九門易・翔泳社)という,なんともすごい名前の本である.この本にたどり着くまでには本当に苦労した.というのは,写真の基本をコンパクトにまとめた本はなかなか無いようなのである.銀塩の方に当然あるべきだと思うのだが,どういうわけか何冊ものムックに分かれているものしかないようだ.営業の都合だろうか.昔,コダックから『写真大百科』みたいな名前の本が出ていたような気がするのだが,気のせいだろうか.

妻に送る弁当の写真は,おかずの量と種類が間違いなくわかることが必要である.そこで,これまでの写真はすべて真上から撮影していた.しかし,「ほら,こんなにすごいお弁当を食べているんだよ.いいでしょー」という写真の場合,必ずしもお弁当箱全体が写っている必要は無い.それどころか,脇役のおかずやごはんは,ピントが合っていなくても良いのかもしれない.そう思って撮ったのが,下の写真である.上に挙げた写真と同じお弁当を出したかったのだが,実は寄り過ぎて失敗してしまった.そういうことなので,こんな文章を書いているからといって,筆者が写真に詳しいとか,撮るのが巧いなどとは,ゆめゆめ思わないでほしい.

お弁当の写真主役のおかずを強調してみた

この写真のポイントは,被写体の一部をフレームの外に追い出したことと,広角側で撮ってゆがませたこと,それに手前のさばの竜田揚げにで AF ロックしたことである.この写真が,上の写真と同じカメラで撮ったように見えるだろうか.そしてこのお弁当は,上の写真のよりも値段が高そうに見えないだろうか(笑)

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