近視カメラの製作

つちや家には Kodak の mc3 (3 は上付き)という,何とも不思議なデジカメがある.これは近所のパソコン屋のワゴンセールで 10,290 円で買った.ワゴンに入る前の値段は 3万円弱ぐらいだったと思うが,正確なところは知らない.ちなみに金額はもちろん総額表示である(謎).

Kodak mc3 正面図Kodak mc3

ぱっと見たところは普通のおもちゃデジカメのようであるが,おもちゃというには正規の価格は高すぎる.このカメラのウリは,VGA (640x480) の写真が撮れる以外に動画が撮れて MP3 が再生できることである.詳しくはメーカーのサイトで見てほしい.廃盤品なので製品情報には無いようだが,サポートの方では見られるはずである.

このカメラ,MP3 の再生はかなりのものだし,動画撮影も悪くない.なのに,肝心の静止画がかなり残念なデキである.下の例はカリフォルニアで借りたレンタカーを撮影したものだが,偽色 (purple fringe?) が盛大に出ているのがお分かりいただけると思う.メーカーのサイトにある作例にも偽色は出ているので,個体差ではなく仕様なのだろう.ちなみにホワイトバランスもあるのかないのか,よく言えば雰囲気がそのまま写し込まれるが,悪く言えば色がすぐ変になる.この作例の場合は曇天だったことが,ひと目でお分かりいただけるのではないかと思う.

レンタカーの写真mc3 作例1(右下は原寸)

何を撮ってもこんな調子なので普段使いは早々にあきらめ,走行会での車載カメラ代わりと会社で食べるお弁当の撮影(笑)にしか使わないことにした.しかし,車載はともかくお弁当撮影には少し問題がある.お弁当撮影は 30センチくらいまで寄りたいのに,このカメラはパンフォーカスで 70センチより遠いところにしかピントが合わない.普通はここでクローズアップレンズを使うことになるのだが,当然このカメラにはフィルターねじは切られていないし,レンズ前にクローズアップレンズをかざしても中心はなかなかあわせられず,ゆがんだ絵を量産することになる.何より指がつりそうだし格好悪い.何かほかの手段はないだろうか.

このカメラを良く見ると,目玉のところはねじになっていて,簡単に外せることがわかる.

mc3 レンズ部分目玉を外したところ

外してみると,中から秋葉原で売っているような,標準品?の CMOS センサーユニットが出てきた.レンズはねじ込み式になっているので,ねじ込みの具合を変えると焦点が調節できるはずである.ということは,これを調整して「マクロ側しか写らないカメラ」にできるのではないだろうか.

そこで実験である.ねじ部分は動かないように接着剤で固められているので,カッターと彫刻刀で慎重に削る.レンズにはメーカー純正位置を記録した黄色いペイントがついているが,これは実は触るとすぐ落ちるので,別のペイントで初期位置を記録しておいた方が良いと思う.調整した結果が下の写真である.トリミングはしてあるが,解像度はオリジナルのままである.それぞれの写真の左側はクレヨンの箱を 30センチの距離で撮影,右側は庭先の電柱と桜の木を撮影したもので,距離は 10メーターほどである.

近距離ではボケている純正位置 遠距離でもそれほどボケは目立たない近距離側に調整

思ったとおり近距離側にフォーカスをあわせられるようになった.遠距離側はもともとの画質があまりにもあんまりなのか,それほど変化したような気がしないところが悲しい(笑).

弁当箱の上下の線が少し曲がっているある日のお弁当

これでお弁当を撮影してみる.フォーカスはもっと追い込めるかもしれないが,とりあえず大きな問題はないようだ.しかしよく見ると,本来四角のはずの弁当箱が若干ゆがんで写っているようにも見える.きちんと正対できていないだけだろうか?いつものことだが,機械よりもウデを磨く方が先ということだろうか.

暗いところを撮影するカメラは暗視カメラと呼ばれる.そういう意味で,近いところを写すカメラを「近視カメラ」と命名したい.今回の場合,遠いところの写りを犠牲にしているわけだから,ますます近視カメラであろう(笑).なお,今回の作業は CMOS センサーを破壊してしまう可能性があるし,間違いなくメーカー保証対象外でもある.これを覚悟した上で,捨てる直前に試してみるのが良いのではないかと思う.

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