§.縦帆船(fore-and-aft-rigged ship)



 船首尾線に対して平行する帆桁または静索に取り付けられる、4辺形または3角形の帆を縦帆と呼ぶ。この縦帆を中心とする帆船が縦帆船(じゅうはんせん)である。横帆船に対して遙かに風上へ進路を取ることができ、小人数で操船できるのが特徴である。
 縦帆船にはスクーナー、バーゲンチン、カッター、スループ、ラガーなどがあり、歴史的には小型船が多かった。しかし20世紀には7本ものマストを備えた超大型のスクーナーが登場するなど、大型船の装帆にも取り入れられている。

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トプスル・スクーナー(topsail schooner)

トップマストに横帆を備えた、小型の縦帆船。商用、軍用共に重宝にされた軽快な小型船である。17世紀末にスクーナーが開発されたが、このときは縦帆のみで、各マストは1本の円材で構成された。トプスル・スクーナーはトップマストを備え、フォア・トップマストには横帆、メイン・トップマストには縦帆のガフ・トプスルが取り付けられた。

ラガー(lugger)

2、3本のマストを持つ小型帆船。本来は2本マストとされたが、多くは船尾間際にジガー・マスト風にもう1本を備えている。排水量は40〜140トンで、類似のものに英仏海峡で活躍したシャッセマリーがある。英国では商船や漁船として用い、フランスでは軍艦としても用いた。特にフランス海軍のラガーは英国海軍や英国の税関カッターなどと死闘を演じ、私掠船は英国の東インド会社船を執拗に狙った。

カッター(cutter)

1本マストに縦帆を備えた小型帆船。長大な艦首斜桁を備え、トップ・マストに横帆を備えたものもある。喫水が浅く、小回りが利き、英国や米国では海軍のみならず、沿岸警備隊や税関にも用いられた。このため、アメリカ合衆国沿岸警備隊の警備艇は今もカッターと呼ばれている。

 
スループ(sloop)

1本マストに縦帆を備えた小型帆船。スループ型装帆は現在の小型ヨットに広く採用されている。この場合の「スループ」は綴りも発音も変わらないものの、後述の「砲艦」ではない。

艤装の上でのスループとカッターの違いは船首斜桁の有無である。スループの場合は取り付けられることはあっても臨時のもので、カッターの船首斜桁は固定された装備である。


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